ボクとアイツと俺
木暮香瑠:作

■ 最後の一週間の始まり1

 佐々木がハワイへの家族旅行から帰ってきて、みんながマンションに集合していた。
「なんだよ、土産はマカダミアナッツのチョコかよ」
「Tシャツもあるだろ」
 早速箱を開け、チョコを頬張りながら文句を言う棚田たちに佐々木がTシャツを配る。もちろん志穂にもTシャツが配られた。

 一週間ぶりに集まった仲間たちはテンションが上がり話が弾んだ。
「お前たちはどうしてたんだよ」
「志穂ちゃんとは遊べないし、退屈してたよ。今日からの一週間を楽しみに我慢してたけどさ」
 佐々木の問いに棚田はおどけて言った。
「暇なんで、こんなサイト作っちゃった」
 楠木はパソコンを操作して、志穂の動画が載せられたサイトを開いて見せた。
「俺たち、これで抜いて我慢してた……」
「ばれちゃうぜ、こんなサイト公開したら……」
 佐々木は顔を曇らせ棚田たちの顔を見渡した。志穂も自分のサイトが作られたことに驚き、顔を曇らせた。
「大丈夫だよ。ウイッグ被ったやつしか公開してないから。眼元にモザイクもかけてるし……」
「モザイク無しはパスワード掛けてるから」
「ほら、コメント見ても誰も志穂ちゃんとは判ってないだろ? 繰古西公園の痴女って、志穂ちゃんとは別人で有名にはなってるけど……」
「そうそう、誰も志穂ちゃんとは思ってないって……」
 棚田たちの必死の言い訳に、佐々木はしぶしぶ納得した。

 棚田はこれ以上動画サイトの話をすることはまずいと思い、話題を他のことに移った。
「ハワイの女はどうだった?」
「どうもこうもねえよ。真面目で親孝行な息子を演じる旅行だって言っただろ?」
 棚田の質問に佐々木は笑いながら答える。
「志穂ちゃんは? 身体が疼いてしょうがなかったんじゃない?」
 棚田は話を志穂に振った。
「彼氏とやった?」
 大下も志穂に話しかける。
「そんな事あなたたちに関係ないじゃない!」
 志穂はプイッと顔を背け唇をかんだ。
「へへーー、これはやったな。逝かせてもらえたか?」
 見透かされていると、志穂はカーッと顔が赤くなる。そして、共に逝かせてもらえなかったことを思い出し胸が締め付けられる。
(これだけは知られてはいけない、圭一とのセックスで行けなかったことは……。そして宗佑に逝かせてもらったことも……)

「そろそろヤろうぜ。俺の息子、もうフライングしそう。早く早くって急かしてくるのよ、へへへ」
 一週間ぶりの集まりとあって、話の種は尽きないが棚田にはそれよりも志穂の身体の方が魅力的であった。志穂との約束の期間はあと一週間しか残っていないのだ。その期間を無駄なく楽しみたかった。それは他の仲間たち、佐々木に至っても同じだった。

「どうせなら、どこか面白いとこでやろうぜ。刺激的な所……」
 棚田は顔をニヤつかせ好色な視線を志穂に向ける。
「じゃあ、今日は学校でやろうぜ。今日、サッカー部が西工と東高校の練習試合してるらしいから……」
「志穂ちゃんの彼氏、東高のサッカー部なんだろ? 燃えちゃうぜ、おれ等……。彼氏の前でって思うだけで、へへへ……」
「好きだろ? 激しいの、志穂ちゃんも……」
 棚田たちは、禁断のシチュエーションを面白がっって話が進んだ。
「ダメッ……」
 志穂は東高サッカー部という言葉に激しく動揺する。
(圭一が来てる。圭一に知られちゃう……)
「イヤッ……、学校でなんて……」
 抵抗しても無駄なことは判っていても抵抗せざるおえなかった。西工と東高校の練習試合となれば、志穂の友人たちも来てるかもしれない。友人とまでいかなくても、志穂を知ってる人は多くいるだろう。
「あと一週間なんだぜ。ここで止めるのってもったいなくね? 今までの我慢が無駄になっちゃうぜ」
「それに俺達だって、同級生が見てる前では犯らないよ。校舎の陰とかトイレとか……、一応見えないところとか場所は選ぶぜ?」
「彼氏、今年の大会に掛けてんだろ? 志穂ちゃんがあと一週間我慢すれば、大会に専念できるのにな」
(あと一週間、我慢すれば……。あと一週間、誰にも知られなければ……)
 棚田たちの脅迫ともとれる説得に従うしか道のない志穂だった。

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