千佳
木漏れ日:作

■ 12

闇の中にぽつんと自販機があった。
前を明るく照らしていた。
私と奈美は自販機の前で立ち止まる。
自販機の放つ光が私達の体を白く浮かび上がらせる。
私達は回りを見回した。

「誰も居ないみたい…。」
「そうね…。」
「ねぇ奈美…。」
「ん?」
「いつもここに来るの?」
「そうね…時々…。」


私達はポシェットから小銭を出してジュースを買った。
その場で飲む。
缶を捨てそこを離れた。
「どこ行く?」
「帰ろうか?」

「そうね…。」
私達は家に帰った。
もう一度シャワーを浴びる。
部屋に戻り髪を乾かす。
何だかドキドキが収まらない。
「まだドキドキしてる…。」

「どれどれ?」
奈美が私のオッパイに触る。
声は出さないけどいつもより敏感になっているのがわかる。
私は奈美の目を見た。
トロンとした目をしていた。

私はイクとこを見せたくなかった。
「奈美…もう寝よう…。」
「う、うんそうだね…。」
奈美はベットで、私は布団で寝ることにした。
私が目を閉じていると奈美が話し掛けて来た。
「ねぇ、もう寝ちゃった?」

「ううん…まだ…。」
「ねぇ?」
「ん?」
「キスした事ある?」
「男の子と?」
「うん…。」

「奈美は?」
「私?」
「うん…。」
「あるよ…。」
「え! あるの?」
「うん…。」


「誰? 相手の人?」
「翔知ってる?」
「卒業して転校して行った、確か武藤君?」
「良く覚えてるわね…。」
「うん…ちょっと気になってたから…。」
話しに出て来た翔君は今年の3月小学校卒業と同時に転校した男の子だ。
スポーツマンで格好良かった。
私の中でちょっと気になる存在だった。
つきあった事はない。
「で? その武藤君がどうしたの?」
奈美はベットを降りて私の隣に来た。

二人で腹ばいになる。
奈美が、
「翔なの…私のキスの相手…。」
「えーっホント!」
「うん…。」
「翔の事好きだったの?」

「うん、まあね…。」
「それで? どうしてそうなったの?」
奈美の話しによれば、
卒業式の後奈美は翔にこう言われた。
「後で体育館の裏に来てくれないか? 話しがある」
「今ここじゃ駄目?」

「二人だけで逢いたいんだ。」
「わかったわ…。」
総ての用が済んで靴を履き変え奈美は体育館の裏に向かった。
翔はもう先に来ていた。
「悪いな、呼び出したりして…。」

「いいよ…話しって? なに?」
翔は暫く無言だった。
そして押し出すように言った。
「俺…奈美の事好きなんだ…。」
「え?」
奈美は自分の耳を疑った。

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