千佳
木漏れ日:作

■ 18

両手で何か持っていた。
看護師は私の枕を外し代わりにそれを頭の下に敷いた
冷たくて気持ちがいい。
「高さはどう?」
「いいです…。」
「眠れそう?」

「わかりません…。」
「そう…。」
看護師は点滴を見て私の体温をはかった。
そして去って行った。
……私は何時の間にか眠った。
人の気配で目が覚めた。

「おはよう…。」
「あ…おはようございます!」
「眠れた?」
「ハイ…。」
「良かった!」
看護師は私の血圧を測りながらそう言った。

脇の下でアラームが鳴った。
看護師が見て言った。
「心配ないからね…。」
「あの…。」
「ん?」
「あたしの怪我…。」

「ああその事ならあとで先生が説明してくれるわ」
「そうですか…。」
看護師は忙しそうに出て行った。
部屋の中は明るい。
しかしベットの回りをカーテンが取巻いていて何も見えない。

廊下を忙しく行き来する足音だけが聞こえる。
私はタオルケットから左手を出した。
厚く包帯に包まれている。
点滴の管が繋がっている。
右手は固定されていて動かす事が出来ない。
(今何時なんだろう?)

時計がないので時間がわからない。
おしっこしたい…。
(昨夜ここでしちゃったんだよね、またしちゃおう)
私は下腹に力を入れた。
シュっとおしっこが出たのがわかった。
ドキドキする。

その時足音が近づいてきた。
足音が止まる。
扉を開けて人が入ってきた。
二人共男の人だ。
白衣を着ている。
一人は若くもう一人は40歳位に見える。

年上の方が言った。
「おはよう! 眠れた?」
「ハイ…。」
二人の後から看護師さんが姿を現した。
「外科の〇〇先生と近藤先生…。」
私はちょっとホっとした。

二人共優しそうだったから……。
年上の先生が説明してくれた。
手術はしない。
右手と右足にヒビが入っている。
三週間位入院が必要。
大体そんな事だったと思う。

正直良く分からない。
「何か聞きたい時はこちらの先生にお聞きして…」
年上の先生が言う。
手足の包帯が外され診察が行われた。
「あの…。」
「ん? なに?」

「トイレは?」
「まだ当分無理…。」
「ゴハンは?」
「それも…。」
診察が終わると看護師に指示して二人は出て行った。
「看護師さん…。」

「ん?」
「もしウンチしたい時はどうするの?」
「ここでする事になるわね…。」
(やっぱり…。)
そう思った。
「でもあたし食べないから…。」
「そうでもないの…。」

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊