千佳
木漏れ日:作

■ 19

それから三日たった。
食事はしないのにお腹が張っている感じだ。
私はウンチをしたくないので何も言わなかった。
しかし苦しくなってきた。
午後先生が回診に来た。
若い方の先生だ。

「どこか苦しい?」
「ちょっと…。」
「どこ?」
「お腹が…。」
先生は聴診器を出した。
「ちょっとお腹の音聞くよ!」

看護師が病衣の紐を緩めた。
聴診器を病衣の下から入れ音を聞いている。
「痛いとこある?」
「左のとこが…。」
「ちょっとごめんね!」
言いながら看護師が病衣の紐を外し前を開ける。

私の胸の上にタオルが掛けられる。
先生はガーゼだけの私の体を無表情でチラっと見た。
慎重に診察してゆく。
「ここ痛い?」
左側の足の付け根の上あたりを押した。
「ア…痛い!」

「う〜んガスがお腹に溜まっているんだね…。」
先生は小声で看護師さんに指示したみたい。
「お大事に…。」
そう言い部屋を出た。
「ちょっと待ってて!」
そう言って私の病衣を元に戻した。

暫くして二人の看護師さんが部屋に入ってきた。
一人が言った。
「お腹にガスが溜まってるみたいだから
出しちゃおうか!」
「え…どうやって…。」
「浣腸するの!」

「ええっ! そんな!」
「イヤ?」
「ハイ…。」
「でも先生の指示なのよ…。」
「そうですか…。」
「そうよ…。」

「アヤちゃんそろそろいい?」
先輩の看護師がそう呼びかけた。
若い方が答える。
「ハイ! お願いします!」
その時私の体が抱き上げられた。
若い方が素早くビニールシートをベットに敷いた。

そして便器を置いた。
私はベットに下ろされる。
そしてお尻の下に便器を挿し込まれた。
その間何分も掛らない素早さだ。
先輩の看護師が言った。
「ごめんね…汚れちゃうと困るから…。」

と私の病衣を捲くる。
ガーゼだけの下半身むき出しだ。
そして浣腸薬の入った注射器が私のお尻に挿し込まれた。
「痛くない?」
「ハイ…。」

薬液が注入された。
お腹の中に冷たい液が入ってきた。
「すぐしちゃ駄目よ! ギリギリまで我慢してね!」
「出たらここ押して!」
そう言ってナースコールを私の手に握らせた。
そして二人はカーテンを閉めて出て行った。

私はこんな場所でウンチをしたくなかった。
なので頑張った。
しかし限界が来た。
抵抗した。
便意が何とか収まった。
2度目が来た。


私は今度も我慢しようと思った。
懸命にこらえた、しかし…。
「プゥーブブブっ…プリッ…。」
ついに出てしまった…。
それだけでなく部屋には異臭が漂い始めた。
涙が出てくる。

「ブッブリ…。」
私の意志と無関係にウンチが出てしまう。
おしっこまで出て来た。
暫くしてようやく止まった。
ナースコールを押した。
「はぁい今行きます!」

元気な声が帰ってきた。
廊下に足音がしてさっきの二人が部屋に入ってきた。
私の顔を見ると、
「つらいね…。」
と声を掛けてくれた。
素早くあと始末を終えると先輩の方が、

「千佳ちゃん、体拭くからね、いい?」
と聞いた。
「ハイ…。」
「じゃちょっと待っててね!」
二人は部屋を出た。
間もなく二人が戻って来た。

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