千佳
木漏れ日:作

■ 39

「渡す物がある…。」
「はい?」
その女性は袂から二つの品を取り出した。
一つはカード。
もう一つは髪に着ける物。
どちらも淡い紫色をしている。

「これをあげよう…。」
女性は二つの品を私の前に置いた。
「千佳…。」
「はい…。」
この二つの品、失くさないように…。」
「はい…。」

「佳子…。」
「はい…。」
「良く千佳を捜してくれた、ありがとう…。」
「いいえ…。」
「あの…。」
「ん?」

「私、どんな関係なんでしょう?」
私が聞くと、
「お前は私の姪だよ…。」
「叔母様?」
「そう…。」
「そうですか……。」

「信じられない?」
「はい…。」
「これをごらん…。」
袂から写真を一枚出した。
その写真には3人女性が写っていた。
「あ、お祖母ちゃん…。」

あとの2人には見覚えがない。
すると女性が言った。
「真ん中の人が千佳の母さんよ…。」
その女性は写真の中で穏やかな笑顔をうかべていた。
「この人が母さん…。」
「そうよ…。」

初めて見る顔だった。
夢みたい。
そう思った。
「叔母様…。」
「ん?」
「母さんってどんな人だったんですか?」

「優しい人…。」
「そうなんだ…。」
「そうよ…。」
「千佳…。」
「はい…。」
「明日、学校休みでしょ?」
「はい…。」

「泊ってって…。」
「いいですか?」
「もちろん…。」
「ではお言葉に甘えて…。」
「それがいいわ…。」
「では私お暇致します…。」

佳子さんが言った。
「ご苦労さま…。」
私は佳子さんを玄関まで見送った。
そして部屋に戻る。
「千佳…喉渇いたでしょ?」
「少し…。」

叔母は机の上の電話を取った。
「あ、私、飲み物と何か持ってきて……。」
5分程すると少女がワゴンを引いて現れた。
「失礼致します…。」
テーブルの上に品を並べる。
少女の格好は短いワンピースのみ。

しかも透けていた。
なので下に何も着けていないのが分かる。
少女はお辞儀をして座った。
叔母が言う。
「この娘志穂って言うの…。」
「宜しくお願い致します…。」

「私こそ宜しく…。」
私もお辞儀した。
「志穂も明後日から同じクラスに入るのよね?」
「はい…。」
「そうなの! 宜しくね!」
私は志穂と言う少女の手を握った。

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