皮膚の壁
一月二十日:作

■ 10

「…あ…いや…」
喉が渇く。缶コーヒーを飲む。
真美の手が伸びて来た。
缶コーヒーを一緒に持つ形になった。
真美の指先は、私の手首から上がって来た。
「飲み切ってよ…」
私は素直に飲み干した。
真美の手が絡んだまま。
「ね…望月さん…やっぱり嫌…」
「なんで?」
「分からないの? ね…中野さん、本当に私が望月さんと付き合ったらいいと思うの?」
「…うん…まぁ、その方が…」
(良いわけはない…しかしそれしかないんだ…)
「じゃ、言うよ…」
「え?」
「私に言わすんだ…やっぱり…」
「なんなんだよ…」
「惚れたんだよ…あんたにさ…」
「え?」
「…ん…もぅ…」
真美はゆっくりと身体を預けて来た…
細い身体の中に明らかに乳房の柔らかさを感じた。
温かく、きっと脈打っているであろう乳房…


「ハァ…ハァ…」
真美の吐息の音がする…

(飲ませて…お願い…私のお乳を私に飲ませて…私の乳首を…私に咥えさせて…)

吐息の中に私の妄想が花開いた。

(乳首? あぁ、お乳が要るのかい? 真美…)
(痛い…お乳が痛い…熱いの…)


真美の顔を両手で挟んだ。
「あ…」
「ごめん痛かった?」
私は慌ててコーヒーの缶を足元に捨てた。
「ううん? 痛くないよ…」
改めて顔を両手で包んだ。
真美はしっかりと私を見ている。
唇を近付けるに従い、その瞳はゆっくりと瞼の皮に消えて行った。
真美の口の中に舌を滑らせた。
横から真美の舌先が絡んで来る。あぁ何と言うのだろう? こそばゆい様な、熱い様な…
二つの舌はお互いの舌の根元を激しくまさぐり合う。
その心地良さにふと嫉妬する。
真美は何人の男性とこうして挨拶を交わしたのか…
しかし今はいい。その男性達に教えられただろうこの舌の動きを、嫉妬というスパイスを振り掛けながら味わうのだ。

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