皮膚の壁
一月二十日:作

■ 16

「あぁ…ジョリジョリスル…」
「何が?」
「ストッキングガ毛ニ引ッ掛カカルミタイ…」
「あ、鳥肌立ってるよ、真美。」
「トリハダ?」
「うん、脚の国のねぇ住人がね、みんな手を上げて振ってるんだよ。」
「ジュウニン?」
「そう、真美は独りじゃないよ。ほら、こんなにたくさんの人が喜んでるんだ。」
「ウン、タクサンタクサン…」

真美は無意識に薄桃色の乳首を人差し指でクリクリ触っていた。

そう言えば、ひとつ思い出した光景がある。
真美が会社へ来て間もなく、早過ぎる雪が降った日があった。
雪は10センチほど積もっただろうか?
ふと表へ出ると、真美がしゃがんで小さな雪だるまを作っていた。
出来上がるとその前で幾つもの小さな雪の玉を作って、
ある程度の数になったら無邪気に投げていた。
最初はしゃがんだまま投げていたが、次第にエスカレートして立ち上がって投げ始めた。
その速さはどんどん加速して行き、あっという間に雪の玉は無くなった。
するとまたしゃがんで玉を作り始めた。
私は声も掛けずそれをじっと見ていた。
真美の顔に初めて見る満面の笑みが浮かんでいたから。

真美は芯から子供なのだきっと。
だから今日は私も画学生だった頃の無心に帰って、真美をいたわり、喜ばせようと思った。

この瞬間から私は真美の恋人であり保護者という意識を持ったと思う。
保護者は外敵から保護する者を守らねばならない。
しかし恋人は恋のために時として嫉妬を必要とする。
嫉妬するためには敢えて外敵を受け入れ、そしてそれを保護者として駆逐するという、いわば倒錯の中に私は埋没して行った。
そしてまた少し前に話した、自身の好みの形や色を持っている真美が、肝心の部分の匂いだけ私の好みでなかったというジレンマに悩まされて行くことになる。
それらはすべてこれから始まるのだ…

真美はどうやら空想の言葉を掛けるとその言葉がアルコールと同じ効果をもたらす精神構造をしている様だ。それはきっと、彼女の幼児体験によるものだと思う。
私は無意識に、まず真美の心をほぐして、保護者としての私を真美に認識させようとした。

真美の身長は155センチくらいだろう。
体重は真美がうっかり口を滑らせて50キロと言ってしまったことがある。
こうして脱がせてみると、真美が幼児体型であることが分かった。
さぁこれからストッキングを下げようとパンティごとゴムに手を掛けて引いた途端、ポコッとした下腹が露わになったのだ。それは決して贅肉とかではなく、未成熟な少女の形と張りをしていた。思わずそこに唇を当ててしまったくらい、それは可愛らしくいとおしかった。
後で真美が全裸で立った時、その下腹の出具合は、真美の小振りな乳房の上でツンと立った乳首とほぼ同じくらい出っ張っている様に見えた。
私はますます真美に空想の話を振りかけてやりたくなった。

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