ボクらの秘密
木暮香瑠:作

■ 過ぎた好奇心3

 ちょっとしたいたずらの後、五人の目は再びパソコンの画面に向かっていた。興味の対象は、やはり男より女性に対してだ。
「これは何だ?」
「クリ○リス? チ○ポみたいな物かな?」
「バカ言え、おしっこはこっちの穴からだろ。でもなんだろう?」
 画面に映るイラストでは、どうも実感が湧かない。妄想を掻きたてるだけだ。ボクたちの興味は募るばかりだ。
「絵じゃぁなー、本物を見ないと判らないなぁ……」
 ポツリとボクは言った。みんな、コクリと肯いていた。

「美紀に頼んでみるか。見せてくれって……」
 ボクは、みんなに提案してみた。
「バカ言え。そんなこと言ったらぶん殴られるぞ。俺なんか、スカート捲っただけで殴られたからな」
 確かにそうだ。クラスで一番かわいい美紀だが、気の強さもクラスで一番だ。ここにいる五人は、美紀のスカートを捲っては頭を殴られている。
「じゃあ、彩ちゃんに頼んでみる?」
「あいつ、すぐ先生に喋っちゃうからな」
 美紀と親友の彩ちゃんは、美紀と違って優しくおとなしい。クラスでも人気だが先生と直結している。彩ちゃんに話したことは、先生に筒抜けだと思わなければならない。悪気はないのだろうけど、なんでも先生に喋ってしまう。また、美紀の耳に入ることも確実だ。それでは困る。
「ううんんん……」
 みんな思案を巡らした。しかし、いい案なんて出てくるはずもない。

 ボクは、一樹に向って言ってみた。
「お前のおふくろさんは……?。話の判るおかあちゃんじゃないか」
 一樹のお父さんはトラックの運転手で、家はおかあさんが切り回している。少々のいたずらは気にしない豪快な人だ。ボクたちのいたずらも、いつも笑い飛ばして大目に見てくれる。
「バカ言え。人前だけだよ、愛想がいいのは……。これこそ本当にボコボコにされるよ」
「だめか……。いい案、ないかな……」
 みんな黙り込んでしまった。

「健、お前、姉ちゃんいたよな」
 武彦が、ボクに向って言った。確かに、ボクには姉がいる。少し歳の離れた姉は、今、高校三年生だ。
「いるけど。それで? 姉ちゃんに頼んでも無理だよ。おれの姉ちゃん、恐えもん」
「頼んでも無理さ。でも、健の姉ちゃん、美人だもんナ。見るなら美人のほうがぜったいいいよ」
「頼んでも無理って……、無理やりしたら犯罪だぞ。そんなことしたら……」
「無理やりじゃあなければいいんだろ? 無理やりじゃあなければ……」
 武彦には何か考えがあるみたいだ。

「ちょっと耳貸せよ」
 武彦の部屋の中、誰に聞かれるわけではないが、悪巧みをする時はいつもこうだ。五人は顔を寄せ合って、武彦のヒソヒソ話を聞いた。

「絶対ばれるよ。うまくいくわけないよ、そんなこと……」
 とりあえずボクは反対はした。これは、姉への義理みたいなものだ。
「うまくやれば、ばれないよ。おまえ、見たくないのか?」
「そうだよ。見るなら大人だよな。美紀や彩子なんか、子供だよ。ガキの見ても、参考にならないよな。」
「ピチピチの女子校生のが一番だよ。小学生のなんか、毛だって生えてないぜ?」
 みんな好き勝手なことを言う。自分たちだって、生え揃ってないくせに……。武彦も実も、美紀や彩ちゃんが好きだと言ってのに……。亮太や一樹だって、口にはしないが美紀か彩ちゃんが好きに決まっている。ボクたちから見れば、理沙姉ちゃんは確かに大人だ。弟のボクが言うのも気が引けるが、確かに美人だと思う。ボクの自慢の姉だ。
「うっ、ううん……。見たいのは見たいけど……、姉ちゃんのは……」
 ボクには、みんなの悪巧みにきっぱりと反対する勇気はなかった。言い出しっぺの責任もある。みんなにのけ者にされることも恐かった。

 のけ者にされるのが恐いと言ったのは、いい訳だ。本当のことを言うと、女性に対する興味と好奇心のほうが、正義感や罪悪感より勝ってしまっていた。

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