ボクらの秘密
木暮香瑠:作

■ 同級生のブラジャー2

 5時間目は体育の授業だ。ボクらは、給食を大急ぎで食べた。お昼休みを少しでも長く遊ぶためだ。次の授業が体育なので、ボクらは体育館の更衣室に急いだ。昼休みは、体操服に着替えて遊んだほうが何かと便利だからだ。汚れることを気にせずに遊べるし、動きやすい。昼休みの後の掃除も、そのまま体操服でする。ボクらは女子も含め、いつもそうしている。

「健ッ、こっちこっち……」
 着替え終わって運動場に急ごうとすると、武彦が体育館の外で手招きしていた。武彦の後ろで実がニヤけている。いつもの5人が、武彦の誘いで集まった。この5人が集まれば、また悪戯の予感がする。

 ボクらは、人目につかない体育館の陰に行った。
「どうしたんだ? 遊ばないのか? 早く行こうよ。女子にいい場所取られちゃうよ」
 亮太は、直ぐにでも遊びたいような素振りだ。
「まあ、落ち着けよ。面白い案があるんだ」
 実が落ち着いた声で言う。武彦と実は、ある程度相談済みのようだ。
「美紀のブラジャー、見たいと思わないか? どんなブラジャーしてるのか……」
「えっ! 見られるの?」
 一樹と亮太が、そろってすっとんきょな声を上げた。
「しっ! 人に聞かれるとまずいよ」
 武彦は、口の前で人差し指を立てて見せた。

「美紀だけどさ……」
「お前も美紀のブラジャー、気になるだろ?」
 喋りかけたボクを遮るように、武彦が満面の笑顔で僕に言った。ボクは、『今の美紀はおかしい! あれは宇宙人じゃないか』と朝から思ってることを言おうとしたが止めた。言っても信じてもらえるわけ無いし、美紀のブラジャー姿にも興味があった。結局、成り行きに任せることにした。

「美紀が見せてくれるって?」
 実が期待を込めて武彦に訊ねた。
「そんな訳、ないだろ。見せてくれって言ったりしたらぶっ叩かれるよ」
「じゃあ、覗き? それなら、急がないと美紀たちも着替え終わっちゃうよ」
 亮太が体育館の入り口のほうに振り返り、慌てて言った。
「着替え中を覗いたりしてばれたら、女子全員に追いかけられちゃうよ。そんな危険は冒せないよ」
 武彦は胸の前で腕を組み、落ち着いた口調で言う。
「じゃあ、どうするの」
 ボクたちは、顔を寄せ合ってヒソヒソと内緒話を始めた。

 ボクたちは、昼休みと掃除の時間を全部費やし作戦を練った。

 長い作戦会議が過ぎ、5時間目の体育の授業が始まった。今日は、体育館で跳び箱の授業だ。4時間目に授業のあった隣のクラスが、跳び箱の準備をし、そのままにしていてくれたお陰で、ボクたちは準備の手間を省けた。そのかわり、片付けはボクらのクラスの役目だけど……そんなことはどうでもいいことで、そのぶん十分な作戦会議の時間が取れたことが重要なんだ。

 作戦会議の中で、体育の時ブラジャーを外すかどうかが問題になった。ボクは、外さないんじゃないかなって思ったけど、武彦は『絶対外す!』って言い張った。
「汗かくし、昨日までブラジャーしてなかったんだから、体育の時は外すに決まってる」
 頭は良いし、ボクらより何でも良く知っている武彦だが、自分の意見を曲げないのが武彦の欠点だ。そう言えは、ボクの姉ちゃんも家にいる時はブラジャーを外していることがたまにある。Tシャツの隆起の頂点がに、ポツリと膨らんだ突起にボクは目のやり場に困る。武彦の意見に、ボク以外のみんなも、そんなものかなって納得してしまった。

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