ボクらの秘密
木暮香瑠:作

■ 同級生のブラジャー4

 体育館では、跳び箱の前で彩子が蹲っていた。富樫や女の子が集まり、彩子を覗き込んでいる。
「大丈夫か? 竹下……。怪我はないか?」
 富樫は、大げさに言った。みんな、心配そうに彩子の膝を見つめている。

 彩子は、かわいいのだが運動神経が全然ない。そのくせ、何事にも精一杯取り組む。今日も、飛べる自信は無いのに、跳び箱に全速で走り飛び込んだのだ。全速で走ったりして、タイミングが取れるわけが無いのに、そのスピードのまま踏み切り板を蹴った。案の定、彩子は、膝を跳び箱に激しく打ち付けてしまった。

「大丈夫です。でも、ちょっと膝、擦り剥いたみたい」
 膝を打ち付けたのは、跳び箱の上部の布を巻いている所だったみたいだ。クッションが入っているので、怪我はたいしたことは無かったみたいだ。
「血が出てるな。保健室へ行って来い」
 富樫は心配し、大げさに体育館の出口を指差す。
「いえ、平気です。バンドエイド持ってきてるから、更衣室で貼ってきます」
 大げさな富樫とは反対に、彩子は冷静に言った。
「そうか? じゃあ、貼って来い。小泉、ついていってやれ」
「はい。彩ちゃん、いこ!」
 美紀は彩子の手を取り、更衣室へ誘った。

 そんなことが体育館で起こっていたとは知らず、ボクらは美紀の着替えを探していた。一樹と亮太は、相変わらず小百合のでっかいスカートを持ってふざけ合っている。実は、彩ちゃんのブラウスを持ったまま、ボクたちの周りをうろうろしている。

 そんな時、突然更衣室の扉が開いた。ボクらは突然のことに驚き、みんなドアの方を向いた。そこには、目を真丸くしてこちらを見つめている美紀と彩ちゃんが立っていた。

「キャーーー」
 彩子の悲鳴が体育館に響き渡る。
「せんせい! せっ、せんせい!」
 美紀が富樫を呼んでいる。
「やべえっ、逃げろ……」
 ボクらは、ロビーに繋がる出口の方に逃げようとした。一樹はスカート持ったまま、実はブラウスを手に持ったままだ。ボクらの計画にはいつも穴がある。失敗した時のこと考えてないんだ。学校の中では逃げきれる訳ないのに、そのことについては何も考えてなかった。ボクがロビーに繋がるドアを開けると、そこには富樫が腰に両手を当て仁王立ちしていた。

「こらーー! お前ら何してる!!」
 やばい、やばすぎる。富樫の頭は沸騰し、湯気が立っている。ボクらは、美紀と彩ちゃんを押し退け体育館に逃げ込んだ。
「みんな、捕まえて……」
 美紀の叫び声で、体育館の中での鬼ごっこが始まった。逃げるボクらは五人、それに対して捕まえる側は女子20人に富樫。男子は、富樫の命令で出口にバリケードを張っている。ボクらに勝ち目は無かった。スカートを手に持った一樹が捕まり、亮太、武彦と捕まっていく。最後に、彩ちゃんのブラウスを実とボクが壁際に追い詰められ捕まった。

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