ボクらの秘密
木暮香瑠:作

■ 同級生のブラジャー6

「ちきしょう、富樫にはまいったなあ……」
「ほんと、あんな格好させて立たせるなんてひどいよな」
 放課後、ボク達はいつもの公園で道草を食っていた。公園の林の中に大きな平べったい岩があり、小さい頃からその上に載ってよく遊んでいた。茂みの中にあり、公園にいる人からは見えない。大人がここまで来るには、木が茂っていてちょっと厄介だ。大人なみの体格の亮太は、いつも苦労している。

 岩にはちょっとした隙間があり、雨が降っても濡れないような空間になっていて、ボク達の秘密の物が隠してある。一樹が、おやじのトラックからパクッてきたエロいマンガやHな週刊誌だ。大人にはたいしたことない本かもしれないが、ボクらにはドキドキものの宝物だ。一樹のお父さんはトラック運転手で、そのトラックの運転席にはそんな本がたくさん載っている。一樹がおやじの目を盗んで集めた本が、ここには隠してある。

「この女、すげえおっぱいしてんな。美紀もこんなのかな?」
 実が、週刊誌のグラビアをボクらに見せる。
「そんなにでっかくはないだろ。昨日まではブラジャーもしてなかったし、みれば判るだろ!」
 武彦は、冷静を装って言う。しかし、作戦が失敗したこと、美紀のブラジャーが見れなかったことが悔しいのだろう。いつもより、言葉が刺々しい。

「でも美紀、どんなブラジャーしてんだろ?」
「うん、どんなブラジャーだろう?」
 ボク達の会話は、また美紀のブラジャーについての話になっていた。
「Aカップだよ、美紀は……。Aカップ……」
 武彦が、自分に諦めさせるように言う。

「Aカップでも見てみたいよな」
 少しの沈黙の後、亮太がポツリと呟いた。みんな、無言で頷いた。

 しばらく、ボクらは無言のまま雑誌やマンガに目を落としていた。
「そうだ! 今日着けてたブラジャーは、明日は洗濯するよな」
 実が、名案が浮かんだとばかりに手を打って言った。
「そりゃあ、洗濯ぐらいするだろ……。下着は毎日洗濯するんじゃないか?」
 ボクは、それがどうしたって感じで答えた。
「そこだよ。洗濯したらどうする?」
「えっ? どうするって……、乾かすんじゃないか?」
「そうか!! 干してるやつを見ればいいじゃないか」
 武彦も、これは名案だとばかりに実に笑いかけた。

 ボクらは、新作戦の会議に入った。
「美紀のヤツとお母さんのヤツと区別、付くかな?」
 一樹は、心配げに言う。
「区別ぐらい付くよ。美紀のはAカップ、美紀のお母さんがAカップってことはないだろ?」
 武彦も、少し不安そうだがそう言った。
「そうだね。区別、付くよ。区別……」
 ボクらは、自分に納得させた。

 ボクらは、新作戦の会議に没頭した。明日は、金曜日だ。美紀はピアノの塾に通う日だ。確か、美紀のお母さんもテニススクールに行ってる筈だ。オレの両親と美紀のお父さんが仲がよく、そう言ってるのを聞いたことがある。放課後、すぐに行けば一時間以上は美紀の家には誰もいないことになる。今度は、逃げる時のことも話し合った。別々の方向に逃げる事、落ち合う場所も決めた。今度こそ、作戦は成功すると確信した。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊