ボクらの秘密
木暮香瑠:作

■ 同級生のブラジャー7

 翌日の放課後、終業のチャイムと共に教室を飛び出した。今日の天気は、すごいピーカンだ。絶好の洗濯日和だ。ボクらは期待に胸を膨らませ、美紀の家まで駆けた。いつもなら、道草を食いながら1時間くらい掛る道を10分で着いた。いつもが、いかに無駄な時間を費やしてるかってことになる。

 50m先に美紀の家が見える。
「ちょっと待て! 人がいる」
 ボクたちは、尾行する探偵のように壁に張り付き身を隠す。買い物に出かけるおばさんが、100mほど先を歩いている。
「今だ! 急げ!」
おばさんが路地を曲がるのを確認して、美紀の家の玄関を目掛け走り出した。

 門を通り抜け、ボクらは庭に向かった。膝を折り屈むと、家の周りを取り囲む生垣がボクらを通りから目隠ししてくれている。美紀の家に、人の気配はない。どの窓もカーテンが閉まっている。誰もいないみたいだ。
「あそこに乾してるぞ。さあ、行こう」
 ボクらは、屈んだまま庭の中を進んでいく。目的地には、案の定、洗濯物が乾してあった。一見、女性用の下着は乾してないように見える。目に付くのは、お父さんのシャツや下着ばかりだ。
「乾してないじゃないか。また失敗か?」
 武彦が悔しそうに言う。
「ちょっと待て」
 ボクは、洗濯物を見渡した。お父さんの下着や服が乾しあるその向こうに、タオルなどが掛けられている。ボクはみんなを制し、バスタオルが取り囲むように乾している一角に擦り寄っていった。そして、バスタオルを一枚捲ってみた。
「ほらね。ちゃんと乾してるよ」
 ボクは、自慢げにみんなの方に振り返り笑顔で言った。

 バスタオルで取り囲む様に目隠しされたところに、女性者の下着が乾されていた。一見して子供用とわかる数枚のパンツとブラジャーが一つ乾されている。その時には、大人用の女性下着が乾してないことには気付かなかった。そういえば、おばさんの服は一枚も乾されてなかった。でも、そんなことを気にする余裕すらなかった。ボクらの目的は、美紀のブラジャーを見つけることしか頭に無かったからだ。

「あった! 美紀のパンツだ! ブラジャーもだ!」
 実が立ち上がり、ブラジャーに手を伸ばす。
「おいっ、外から見えちゃうよ。かがめよ!」
 実が、四人に突っ込まれる。

 かがんだままブラジャーとパンツに手を伸ばした。ボクが、ブラジャーを手にとり、実がパンツを広げた。
「美紀のブラジャーだよ。美紀の……」
 亮太は、しみじみとブラジャーを見つめている。飾りと言えば、中央にブルーの小さなリボンが付いただけのシンプルなブラジャーにも、ボクらは興奮していた。
「このパンツ、先週、スカート捲りした時履いてたヤツじゃないか?」
 実が広げた見覚えのあるパンツについて、武彦と一樹が話し合っている。

 ガラッ!!

 その時、美紀の家のリビングの大きな窓が開いた。
「誰かいるの?」
 突然の声に、みんな驚いた。今日は誰も居ないはずだった。
「逃げろ!」
 武彦の声で、みんな決められた方向に逃げようとする。実が突然振り返り、
「健! これっ、はい」
と言って、手に持っていたパンツをボクに渡した。

 みんな、パニックしている。目の前に差し出されたパンツを、ボクも素直に受け取ってしまった。左手には美紀のブラジャー、右手には美紀のパンツを握り締めたまま立ち竦んでしまったボクを尻目に、みんなは各々決められた方向に逃げている。

 みんな、待てよ! ひどいよ! と叫びたいが声を出したらばれてしまう。しかし、ブラジャーとパンツを持ったまま逃げたら、ボクは下着泥棒になってしまう。かといって、これを放り投げるには忍びない。錯乱する頭のまま思案していると、美紀のお母さんが、窓から身を乗り出してきた。
「健君? 健君なの?」
 あちゃーー。見つかってしまった。それも、ばれている。

「キャッ!!」
 おばさんが、悲鳴と共に体制を崩しベランダに落ちた。
「大丈夫?」
 ボクだとばれてしまっている以上、逃げてもしょうがない。それに、ベランダに落ちたおばさんも、怪我をしていないか心配だ。ボクは、パンツとブラジャーを手に持ったまま駆け寄った。
「あ痛たたた……、痛あぁ……」
 落ちたときに膝を打ったのか、おばさんは膝を擦りながら蹲っている。ワンピースの裾が捲れ、おばさんの白い太股が露わになっている。もう少しでパンツが見えそうだ。
「おばさん、大丈夫ですか?」
 覗きこんだボクの顔を、上目遣いで見上げたおばさんの目が赤い。頬も薄っすらと紅く色付いている。ボクは、ドキッとした。ボクのかあちゃんよりずっと若く見える。それに、ずっと美人だ。これが大人の色気なんだ。真っ直ぐな視線に照れて、目を下に移すとおばさんのすらっとして柔らかそうな太股が瞳に飛び込んでくる。おばさんの顔を見ても、視線を下に移しても、僕の下半身は妄想を始めてしまう。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊