ボクらの秘密
木暮香瑠:作

■ 姉ちゃんの恋愛実習5

 二人の会話は、次のようなものだったらしい。

 夕方になって、ついに彼氏が堪え切れずに切り出した。
「理沙! やらしてくれよ。俺、もう我慢できないよ!」
「何いってんの? いやよ。どうしたの、急に……?」
「誠治とまさみだって……、隆一と夏樹だってもう、してるんだぞ!! 俺、我慢できないよ。付き合いだして、俺たち、三ヶ月以上になるぜ」
 彼氏は、二人の共通の友人たちを引き合いに出し説得を始める。姉ちゃんは知らなかったが、本当のことらしい。彼は、正確な日付と場所まで挙げた。友人が経験を済ませていることが、彼氏に焦りを持たせていた。
「うそ……。でも私はわたし……、私は嫌っ!」
「一度だけでイイから……。なっ! なっ……!」
 姉ちゃんが断っても、彼氏は諦めきれなかったらしい。必死の形相で求めてきた。
「だめって言ったらダメ!! 絶対ダメ!」
 それでも姉ちゃんは、身体を許すことには抵抗があった。

「結婚するまで身体は清いままでいたいの」
 いつまでも拒みつづける姉ちゃんに、彼氏は代案を提案する。
「だっ、だったら、フェラならいいだろ? それなら処女は守れるし……」
 彼氏にとっては、最大の譲歩をしたつもりらしい。
「フェラなんて嫌よ! 口に咥えるんでしょ? そんなの出来ない……」
 ボクには、姉ちゃんの気持ちも判るし、彼氏の気持ちも判る。おしっこする所を咥えるのも汚い気がするし、咥えられた時の気持ちいいことも知っている。

 しばらく気まずい時間が流れ、西の空が紅く染まる頃、彼氏がポツリと呟く。
「もういいよ。別れよう。オレ、やらしてくれる娘、探すから……」
 彼氏はそう言って、夕日の中、一人で帰ってしまったらしい。

 姉ちゃんは、一人で悩んでいたことをボクに話したことでだいぶ落ち着いてきたらしい。
「ひどいと思わない? おチン○ン、咥えてくれって言うのよ。冗談じゃないわ!」
 今度は怒り出した。デートの最中の会話を思い出しても、頭に来るらしい。高校生って、悩み多い年頃なんだ。落ち込んだり、怒ったり……。でも、見てると結構面白い。
「でも、姉ちゃん好きなんだ。その人のこと……」
 ボクは、怒りの矛先をかわした。

 ボクの言葉は、姉ちゃんの心の傷を直撃したみたいだ。
「だって、かっこいいのよ、彼……。みんな、彼を狙ってんだから……。今別れたら、みんなの思う壺よ」
 姉ちゃんの目に涙が浮かんでくる。
「別れたくないんだ。姉ちゃん、その彼と……」
「う、うん……」
 姉ちゃんは、また落ち込んだ。しょぼんとして言う。ボクは、姉ちゃんの変化が面白くて仕方がない。そんなことは表情に出さず、冷静を装って話を続けた。
「じゃあ、やっちゃうの? その人と……」
「セックスは嫌よ、絶対」
 姉ちゃんは、声のトーンを上げきっぱりと言う。
「じゃあ、フェラは?」
「う、ううん……」
 姉ちゃんの声のトーンが、また低くなる。
「く……、口でなら仕方ないかな? 別れたくないし……、身体許す訳じゃないし……」
 小さな声で、しかし、自分を納得させるように言った。完全にボクのペースで話が進んでる。歳の差が完全にひっくり返ったみたいだ。

 姉ちゃんは、気を落ち着かそうとしてるのか、床に落ちている小さなごみを指先で集めたりなんかしている。決してボクの眼を見ようとしない。本心を自分の口から発することの恥かしさに、姉ちゃんの気持ちが揺れている証拠だ。ボクは、本題を突く質問をすることにした。
「それで、オレのを見て慣れておこうって訳だ。そうなんだよね」
 姉ちゃんは、頬を染めコクリと肯いた。視線を床に落とし恥かしそうにしている。そして、小さな声で喋り始めた。
「見るだけよ、見るだけ……。目だけでも、慣れておこうかなって思って……」
 思ったとおりだ。姉ちゃんって、意外とうぶなんだ。ボクよりずっと大人に思える姉ちゃんも、恋の話になるとただの少女になってしまう。

 ボクにとってもおいしそうな話だ。姉ちゃんにしたしたイタズラも許してもらえるかもしれない。ここで恩を売っておけば、一気に立場を逆転できるチャンスだ。それに、もっと良いことがあるかも……。フェラの快感を知ってしまっているボクは、心の中に大きな期待が渦巻いていた。

「姉ちゃん、見せるだけだよ。恥かしいけど、姉ちゃんの為なら見せてもいいよ」
 ボクは、恥かしがる素振りを見せながら立ちあがり、パンツと一緒にパジャマのズボンをゆっくりと下げた。

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