ボクらの秘密
木暮香瑠:作

■ 同じ屋根の下の少女3

 家に帰ったらすぐ、美紀は宿題を始めた。美紀の部屋があるわけでもなく、リビングのテーブルでやっている。僕も隣に座り、算数の宿題を広げる。最初の問題から躓く。
「なあ、美紀。ここ、どうやるんだ?」
「えっ? なになに?」
 美紀は、問題を確認するため僕のノートを覗きこむ。ドキッ! 美紀の顔を、こんなに近くで見たことはない。意外と可愛い。
「これは、こうよ。で、こうなるでしょ」
「あっ! そうか」
 美紀は、ノートの余白に数式をすらすらと書き解き方を教えてくれた。呪文のような式も、美紀の説明を聞くとなるほどと思ってしまう。でも、僕は驚かないぞ。美紀が頭が良いのは判ってる事だし、美紀が頭が良いのは遺伝なんだ。美紀のお父さんは会社で研究をしてるインテリだし、僕の父さんはしがない薬局の店主。でも、どうしてこの二人が親友なんだろう? そんな疑問を抱きながら、次の問題に目をやった。……??? 習ったような初めて目にするような問題だ。
「美紀……、この問題はどう解くの?」
 僕は次の質問を指差し訊ねた。
「これはね、こう……」
「なるほど。判った、サンキュー」
 答えを書き終わった僕は、次の問題に移った。当然のように、この問題も美紀に尋ねる。
「美紀、ここは?」
「もう……、全部じゃない。少しは考えたら?」
 美紀は頬を膨らまし、不満の表情を見せる。
「教えるの面倒くさかったら見せろよ。もう終わってんだろ」
 僕は美紀のノートを引っ張った。美紀は、全体重をノートに掛け奪い取られるのを阻止しようとする。
「嫌よ。それじゃあ、宿題にならないじゃない」
「ケチ。見せても減るもんじゃないだろ。見せろよ」
「やあよ。判らなかったら教えてあげるから、自分でやりなさいよ」
「全部判りません! だから見せろよ」
 僕と美紀のノートの引っ張り合いが続いた。

「あら、二人並んで仲が良いこと」
 姉ちゃんが帰ってきた。仲がいいわけじゃない、俺は美紀を利用してんだ! 宿題をやらしてんだ。
「美紀ちゃん、宿題? 健もやってるの? 珍しい。でも、いい傾向だな。美紀ちゃんのお陰だね」
 早速、美紀を持ち上げる。
「判らなかったら教えてあげるからね、美紀ちゃん。何でも聞いてね」
 よく言うよ。教えるほど成績良くねえだろ、姉ちゃんは……。それに、僕が教えてもらおうとすると、いつも『面倒くさーーい』って教えてくれないじゃないか。
「いえ、わたしはもう終わりました」
 美紀は、にっこりと微笑み返事する。
「すごい。健なんか、まだ五問目じゃない。しっかりしなさい」
 五問めと言っても、その内三問は美紀に教えてもらった。このままじゃ、美紀と比べられて、益々俺の立場は狭くなりそうだ。



 夕食も終り、僕はテレビのバラエティー番組を見ていた。これを見ないと、明日の男子間の話題についていけなくなる。僕は、大笑いをしながら画面を見詰めていた。
「健!! お風呂入りなさい」
 母ちゃんの声が、台所から聞こえる。ちょうど番組も終わるところだ。
「はあーーい」
 僕はその場でパンツ一枚になり、脱いだ服を手に持って風呂場に向かった。脱衣場でパンツも脱ぎ、服を洗濯機に放り込み風呂のドアを開く。
 一瞬、僕の目が点になる。風呂の中でも、同じように点になった瞳が僕を見詰めている。その後、一瞬間をおいて悲鳴が響き渡った。
「キャアアア……」
 そうだ、美紀が入っていたんだ。忘れてた。どうしよう、逃げようか。待てよ、ここは僕の家だ。僕が逃げるのはおかしい。一瞬の間、僕の頭は色んなことを考える。その間、僕の目は美紀の肢体を見詰めてた。一瞬がすごく長い間に思えるくらい僕は美紀の肢体を上から下まで見詰めてしまった。これって男の性(さが)なんだ。目の前に女の裸体があると見詰めてしまうのは……。

 僕と美紀は、開かれたままのドアを挟んで呆然と立ち竦んでいた。美紀の悲鳴を聞いた母ちゃんと姉ちゃんが飛んでくる。
「あんた! 美紀ちゃんのお風呂、覗いたりして!!」
 ぼこっ! 姉ちゃんの握りこぶしが僕の頭の上に振り落とされた。
「痛てっ!! ちっ、違う!!!」
 僕の目は美紀に向けられたまま、首だけを横に振る。
「何が違うの! 言い訳なんかしないの!! なんで覗いたの!?」
 今度は母ちゃんの拳が振り落とされた。母ちゃんが風呂は入れって言ったから……。母ちゃんは、僕に風呂に入るように言ったことなどもう忘れている。
「うう、ううう……」
 僕は、頭を抱えてまま蹲った。
「女の子の裸みたいのは判るけど……」
 姉ちゃんの声が頭の上、妙に遠くから聞こえる。



「痛てててて……」
 僕は、部屋に戻り頭を撫でた。コブが二つ出来ている。
「まっ、いいか。美紀の裸、見れたし……」
 待てよ、俺の裸も見られてしまった? でも、そんなことどうでもいい。姉ちゃん以外の女の子の裸、見られたし……。

 脳裏には、美紀の裸が焼きついている。姉ちゃんほどは大きくはない胸、あそこも毛が生えてるのかいないのか判らないほどの淡い翳り、しっかり縦筋が刻まれていた。姉ちゃんの生え揃ったあそことは、また違った景色だ。腰も括れも弱い子供っぽい身体……。当たり前か、美紀は僕と同じ小学生なんだから、色気なんて感じられないはずなのに……。でもどうしてこんなにドキドキしているんだろう。心臓の音が聞こえるくらいだ。姉ちゃんの裸を見たときよりドキドキしている。僕は慌てて意識を下半身に向けた。

 やっぱり勃ってる……。美紀なんかよりずっと大人の姉ちゃんの裸も見ている僕なのに、チ○ポが勃ってる。美紀なんか子供だぞ! 色気も何もない子供だぞ! そう言い聞かせるが、チ○ポは僕の言うことを聞かない。僕は、勃ったままのチ○ポをじっと見詰めた。

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