ボクらの秘密
木暮香瑠:作

■ 同じ屋根の下の少女6

 ボクらが彩ちゃんの裸を見ているとき、家ではちょっとした事件が起きていた。

 珍しく早く帰ってきた姉ちゃんは、リビングを覗いた。リビングのテーブルの上には、宿題を終わった美紀のノートがきれいに揃えられ置かれている。
「あれぇ? 健も宿題、終わったのかな?」
 姉ちゃんは、ソファーにカバンを投げ捨てトイレに向かった。

 トイレのノブをガチャガチャを廻す。でも、トイレは鍵が掛かっていた。誰か入っている。
「健! 開けなさい。もう漏れちゃうよ、早く出なさい!! 出ないとどつくよ」
 姉ちゃんがトイレの前で怒鳴っている。ボクじゃないって……、トイレに入ってんのは。それに、トイレの中の僕をどうやってどつくんだ。言ってることが矛盾してる。それに、『どつく』なんて、女の使う言葉じゃない。外でどんなに気取っていても、家での姉ちゃんは恥も外聞もない。高校では人気があるらしいけど、僕の友達にも美人の姉ちゃんで羨ましいと言われるけど、家の中での姉ちゃんを知らないからだ。
「こら! 早くしなさい! 男の長便は嫌われるぞ! は、早く……、漏れちゃう」
 相当切羽詰ってるらしい。姉ちゃんは、トイレのドアをドンドンと叩いた。

 トイレのドアは開き、出てきたのは美紀だった。
「あちゃーーー、美紀ちゃんだったの。ごめんね」
 神妙な表情の美紀を見て、姉ちゃんも悪いことしたと思ったらしい。でも、美紀の表情の原因は姉ちゃんではなかった。美紀は俯き、小さな声で姉ちゃんに言った。
「お姉さん……、わたし……病気かな?」
「どうしたの? 気分でも悪いの?」
 姉ちゃんは、心配そうに尋ねた。
「ううん、気分は悪くない。……でも、……」
「でも、どうしたの?」
 美紀の顔は、いっそう曇る。そして、ポツリと言った。
「血が出れるの……」
「どこから?」
 美紀は、視線を下に向け膝に絡まったパンツを指差す。
「パンツに血が……付いてるの……」
「はあ?」
 姉ちゃんは、美紀の指先に視線を落とした。
「ああ、そうなのね……。大丈夫よ、病気じゃないわ。安心しなさい」
「でも血が出てるんだよ。悪い病気じゃないの?」
 美紀の不安はいっそう募る。目に涙をいっぱい溜めている。
「美紀ちゃん、学校で習わなかった? 大人になったのよ」
「えっ? 大人?」
「そう、お・と・な……。習ったでしょう?」
 美紀は、はっと思い出した。女子だけが観たビデオのことを……。
「……習った」
 美紀はバツが悪そうに、そして恥ずかしそうに言った。
「びっくりしちゃったのね。でも、大丈夫よ」
 姉ちゃんは、美紀を抱きしめ頭を優しく摩った。
「美紀ちゃん、わたしの部屋においで。ナプキン、持ってないでしょ?」
 美紀は、こくりと頷き姉ちゃんの後を追った。

「まずキレイにしなくちゃね。パンツ脱いで。股、開いて……」
 美紀は、初潮に驚き動揺している。姉ちゃんの言うことに素直に従った。姉ちゃんは、ウエットティッシュで美紀の柔らかな膨らみを拭う。
「割れ目の中もキレイにしなくちゃね。美紀ちゃん、開いて」
「えっ!? 自分で開くんですか?」
「そう、開いて」
「はっ、はい……」
 何も判らない美紀は、姉ちゃんの言うことに従うしかなかった。

 冷たいウエットティッシュが、初めて外気に触れた柔肌に触れる。
「ヒャッ!」
 美紀は、スットンキョな声を上げる。
「どう? どんな感じ?」
「こそばゆいです」
 姉ちゃんの問いに、美紀は顔を真っ赤にし答えた。
「それだけ? ほかに感じない?」
 にやりと微笑んだ姉ちゃんが、意地悪に問いただす。
「こそばゆいだけです」
 美紀は、さらに顔を真っ赤にして俯いた。
「じゃあ、これでどうだ」
 姉ちゃんは、割れ目の中にある小さな膨らみを擦り上げた。
「キャウン、ンッ……」
 美紀の悶絶する声が、部屋に響いた。

 肩で大きく息をする美紀に、姉ちゃんは優しく話しかけた。
「ねえ、美紀ちゃん。オナニーしたことある?」
「えっ、オナニー?」
 美紀は、キョトンと首を傾げる。
「したことないんだ。知ってるわよね、オナニー……」
「は、はい……」
 美紀も言葉くらいは知っていた。何をするかは判らない、大人がすることだってくらいの知識だ。
「そろそろ覚えてもいい頃かな? メンスの前って、オナニーしたくなる娘も多いみたいよ。モヤモヤした気分になって……」
 メンスの汚れをキレイにしてくれる姉ちゃんも、オナニーの話をする姉ちゃんも美紀にとっては、とても頼もしく大人の香りがする。母親も姉妹もいない美紀にとっては、僕の姉ちゃんだけが身近な頼れる大人の女性なんだ。

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