ボクらの秘密
木暮香瑠:作

■ 同じ屋根の下の少女9

 翌日、学校に行くと、美紀と彩ちゃんが楽しそうに話をしている。彩ちゃんと美紀は仲直りしたみたいだ。彩ちゃんは、昨日、僕が裸を守ろうとしたことがよっぽど嬉しかったみたいだ。美紀も、気持ちまで大人になったみたいで昨日の彩ちゃんのこと、怒ってないみたいだ。女の優越感? なのかな、変に余裕を持っている。

 美紀は、彩ちゃんに耳打ちをし、みんなに見られないようにこそこそとカバンからナプキンを出し彩ちゃんに見せていた。彩ちゃんの瞳が大きく開く。女の子にとっては、大切な興味の対象なんだろう。

 ボクらはボクらで、昨日の放課後の話をしていた。僕がみんなに責められていた。
「健のせいだぞ。もう少しで彩ちゃんのオマ○コ見れたのに……」
「そうか? 亮太が鼻血出したのがまずかったんだろ」
 僕も言い返す。確かに、彩ちゃんが脱ぐのを止めたのは僕だけど、みんなも充分楽しんだはずだ。その証拠が亮太の鼻血だ。亮太は充分興奮していた。
「おまえ、彩ちゃんに惚れたんじゃないのか? 彩ちゃんの味方なんかして……」
 武彦は、意地悪く僕に聞く。僕はチラッと美紀と内緒話をしている彩ちゃんを見た。二人の裸が頭をよぎる。その裸に姉ちゃんのオマ○コが重なる。僕の頭に血が上ってくる。きっと顔は赤くなっているだろう。

 まずい、このままではまずい! 赤くなった僕の顔を見て、みんな僕が彩ちゃんに惚れていると思うだろう。話を逸らさなくちゃ。僕はとっさに言った。
「それより美紀のヤツがさ、女になったぜ」
「オンナ!? 健、やっちゃったのか? それはまだ早いだろ」
 みんな食いついてきた。やっぱり女の子の話は、みんなの共通の興味なんだ。
「何言ってんだ!! やるわけないだろ。メンス、あそこから血が出たんだって……」
 僕は、話を逸らすことに成功し嬉々と話した。
「血が? 鼻血の間違いだろ。亮太みたいにさ」
 みんな信じられないみたいだ。僕は、昨日の食事が豪華だったこと、美紀が恥ずかしそうにしてたこと、姉ちゃんから聞かされたことを妄想を交えて大げさに話した。美紀、怒るだろうな、話したりなんかして……。まっ、いいや。とにかく僕から話題を美紀に逸らすことに成功したんだし……。

 美紀を気にしながらチラッと視線を美紀に向ける。いつの間にか、美紀の周りは女子生徒の輪が出来ていた。クラスで初めて初潮を迎えた美紀は、女子の間でヒロインになっている。ナプキンの使い方で、話題が広がっている。昨日、姉ちゃんに教えてもらったらしい。女の子だけが受けた授業では習っていても、やっぱり実際に使ってる同級生の言葉は真実味があるらしい。みんな、男子たちの視線を気にしながらも、真剣に美紀の話を聞いている。美紀も生き生きと話している。俺に知られたときはあんなに恥ずかしがっていたのに……。女子の間では、堂々と話してやがる。

 彩ちゃんも、昨日のことを忘れてしまったのか、いつもの彩ちゃんに戻ってる。新しい話題に引き付けられている。女の友情って壊れやすいと聞いているけど、元に戻るのも早いみたいだ。きっと彩ちゃんは、恋に恋してるんだ。僕に恋している自分自身に憧れているんだ。ちょっと背伸びをしたい年頃なんだ、きっと……。ここはとにかく美紀の話でボクらも盛り上がろう。僕は、相当脚色を交えて美紀が女になった話を続けた。

 ボコッ!!!
「痛てっ!! ううっ、痛っ……」
 いつの間にか背後に立っていた美紀の拳が、僕の後頭部を直撃した。武彦も一樹も亮太も実も、美紀の怖い顔に驚き目を丸くして見ている。
「何喋ってんの? 変なこと言ったら殴るよ」
 殴る前に言えよ。もう、殴ってるじゃないか。我が家での僕の立場を見て、僕を殴ることに抵抗がなくなったみたいだ。
「うううぅ……」
 僕は後頭部を抱えて蹲った。でも、ボクらの噂話は、これからも延々と続くだろう。

同じ屋根の下の少女・おわり


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