ボクらの秘密
木暮香瑠:作
■ Hなマンガ5
まだまだ縄は余っている。一樹は、一人でこの縄を持ってきたのか? さぞ大変だったろうな。そんなことを思いながらボクらは、マンガ本を見ながら縄と格闘している。
「こうか? これでいいのかな?」
「違うよ、こうじゃない?」
マンガを見ながら、ああだこうだと縄を掛けていく。彩ちゃんに膝を折り曲げてもらって縛る。これで彩ちゃんは立ち上がることも出来なくなった。
「やだあ、こんな格好……恥ずかしい……」
彩ちゃんは頬を染め恥ずかしがるが、身動きできないのでボクらの言いなりになるしかない。
「もう少し我慢してね」
ボクらは、縄掛けを進めていった。
最後に、股間に縄を廻していく。亮太が背中に廻した股縄を引っ張り、結ぼうとしている。長さが足りないので、ぎょっと引っ張った。
「痛いっ!!」
縄が彩ちゃんの股間に食い込んだ。
「痛かった? でも、引っ張らないと結べないんだ、我慢してね」
体育パンツの股間に縄が食い込み、その両側がぷっくりと膨れている。相当きつく食い込んでるみたいだ。食い込んだお陰で、何とか縄は背中で結べた。
マンガに描かれているのとはだいぶ違うけれど、なんとか縛り終えた。華奢な彩ちゃんでは、マンガのように縄が肌には食い込まない。一箇所を除いては……。
「どう? なんか感じる?」
ボクらは、真っ赤な顔の彩ちゃんを覗き込み訊ねた。
「感じないよ。痛いだけ……」
股間の縄の食い込みが痛いみたいだ。身体を捩るだけでも、股間に食い込んだ縄が擦れて辛そうだ。
「痛いの。は、早く解いて……」
涙目の彩ちゃんが訴える。
「本当に? 気持ちよくない?」
もう一度、訊ねてみる。
「気持ちよくなんか……ない! 絶対ない!! 解いてぇ……」
彩ちゃんの答えは一緒だった。彩ちゃんはきっぱりと断言した。
みんなの顔が落胆の表情になる。
「ちぇっ! やっぱりな……。マンガって嘘なんだな。じゃあ解こうか」
「ウン……」
大体、答えは判っていた。マンガ通りいけば、ボクらは空も飛べるし、エイリアンだって倒せる。しかし、ボクらが実際に出来ることは、たかが知れている。
「解こうか?」
ボクは彩ちゃんの後ろに回り、結び目に手を掛けた。一刻も早く、彩ちゃんをこの辛い状況から解放しなくては……。
ボクは結び目を引っ張る。
「あれっ?」
しかし固く結ばれた結び目はびくともしない。もう一度力を込めて引っ張る。
「あれっ? 解けないよ。どうしよう?」
「亮太がバカ力でダンゴ結びなんかするからだぞ」
武彦も引っ張って見るが、ダンゴ結びの結び目はびくともしない。
「すまん。ちょっと力、入れすぎたかな?」
亮太は、頭を掻きながら恐縮している。彩ちゃんは、僕らの会話を聞き不安になっている。
「亮太! お前、解けよ」
「うん」
「あれっ? あれっ?? ほ、解けねえ?」
亮太が試みるが、やっぱり結び目はびくともしなかった。
「お前が結んだんだろ? 解けないわけないだろ?」
「でも、解けねえもんは解けねえんだよ!!」
亮太も顔を真っ赤にして力を入れている。でも、結び目はびくともしない。彩ちゃんの不安は益々大きくなり、眼が潤んでくる。
「うっ、ううっ……。か、帰りたい、ううっ、早く帰りたい……」
遂に彩ちゃんが泣き出した。気の弱い亮太も、罪悪感から泣きそうになっている。解けないことが、縄を結んだ本人である亮太を罪の意識に駆り立てる。
「ううっ、うう……。どうしよう?」
亮太が啜り泣き始めた。
「やべえ、亮太まで泣いちゃうぞ。誰か呼んで来ようか?」
「こんなことしてたなんてばれたら、酷い目に遭うぞ。ダメだよ」
「でも、解けなかったら彩ちゃん帰れないよ?」
「どうしよう?」
彩ちゃんと亮太の泣き声に、みんなパニックになっている。
武彦が、ボクに向かって言った。
「健! 姉ちゃん呼んで来いよ! お前の姉ちゃんなら秘密にしてくれるだろ?」
やっぱりこうなるか。これしか方法はないかな?
「おれの姉ちゃんに……? 姉ちゃんに頼んだら後が怖いよお……」
確かに姉ちゃんなら秘密にしてくれる。でも、ボクには不安がある。姉ちゃんが秘密にするのは、僕の弱みを握るためだ。これ以上、姉ちゃんに弱みを握られたら、ボクはどうなるんだろう。たでさえ辛い状況もボクなのに……。
「健クン……」
涙目の彩ちゃんがボクを見詰める。彩ちゃんの瞳が訴えている。助けを求めている。
「うっ、うん……判った。いってくる……」
ボクは結局、彩ちゃんの切ない瞳にお願いされ、姉ちゃんを呼びに行くことになった。
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