ボクらの秘密
木暮香瑠:作

■ 水着とお尻と……3

 急に女子達が騒がしくなった。
「美紀ちゃん、カワイイ」
「ホント、いいな。可愛い水着で……」
「どうしたの? その水着……」
 更衣室から出てきた美紀と服を着たままの彩ちゃんの周りを女子が取り囲んでいる。美紀の白い水着を見て、女子達は騒いでるんだ。
 しかし男子は一瞬、言葉を失った。美紀の白い水着をじっと見詰める。

 一人だけ違う水着を着ていることを申し訳なさそうにしている美紀。彩ちゃんの水着を着た美紀は、クラスメートの男たちの視線を集めてしまった。

 確かに彩ちゃんが着ればかわいいんだろう。別に、美紀が着たら可愛くないって言ってる訳じゃない。白いワンピースで、腰の辺りに大きな花がプリントされている。その周りに小さな花がたくさんプリントされていて、胸元と腰とにフリルが付いている。それなりにカワイイ。でも、別の意味で注目を集めている。
 彩ちゃんが着れば普通なんだろうけど、美紀には小さすぎるよ、その水着……。身体に食い込み過ぎだよ、その水着……。肩の部分が伸び、胸元がグラビアアイドルのように大きく開いてしまってる。大きくなりかけた胸に食い込み、肉の柔らかさを強調してる。そしてその下の膨らみの形をはっきりと表してる。
 お尻はもっとやばい。お尻の肉が半分、食み出てる。一樹がさっきまでしていたのと同じだ。ちょっと言いすぎ、一樹ほどは出ていないけど、1/3くらい食み出てる。違うことといえば、食み出た肉が柔らかそうなこと……。
 股間は、さり気なく手で隠されていて確認は出来なかったけど、ハイレグ状態だということは間違いない。

 市民プールにでも行けば、お姉さん方はもっと過激な水着を着ているだろう。その中に入れば、きっとなんでもないくらい普通の水着なんだろう、ちょっと小さいだけで……。
 一樹が持ってくる漫画や雑誌には、ヌードの写真もある。そっちの方がよっぽど過激だけど……、でもあくまで紙の中の話。現実ではない。会ったこともないアイドルは、ボクらと別の世界の人間だ。でも、スクール水着ばかりの中で見る美紀の水着姿は、ボクらに大きな刺激をもたらした。炎天下の学校のプール、美紀の姿は紙の中でもなくテレビ画面の中でもない。ボクらの目の前にあるんだ。さっきまで、ボクらと一緒に教室で授業を受けていたんだ、美紀は……。
 ボクは、姉ちゃんの裸だって……、もちろん美紀の裸も彩ちゃんの裸も見たことある、姉ちゃんの部屋で……。だからそんなに大騒ぎすることでもない。でも、姉ちゃんの部屋と外では、まったく別の世界なんだ。ボクだって、少しドキドキしてる。

 美紀の水着姿を見た一樹の様子が変だ。股間が盛り上がってきた。そして腰を少し引いている。
「かっ、一樹! で、出てる!!」
 水泳パンツをビキニのパンツのようにして遊んでいたのが不味かった。勃起したあれは、亀が甲羅から頭を出したように、浅い水着の中からコンニチハしている。
「キャーーー」
「一樹君、エッチー!」
「変態!!」
 男のそれを目にした女子達が、いっせいに悲鳴を上げた。
「はい、はい、はい! 静かに。みんな整列!! 始めますよ!」
 パンパンと手を打ちながら、先生の声が背後から聞こえる。みんなの目が先生の方に向いた隙に一樹は、慌てて水泳パンツを直した。顔を真っ赤にして……。
「へへへ……」
 ボクらに照れ笑いをしながら……。

 そして準備体操……。男子はみんな、後の方に並びたがる。いつものことだ。でも今回はちょっと違う。位置取りにみんな必死だ。そう、美紀の姿が見えるところに……。

 ラジカセから音楽が流れ始める。前屈では、男子は誰一人、下を向くものはいない。身体は前に倒しても、顔はしっかりと前を向いている。ある一点に視線を向けて……。そういうボクも、みんなを観察しながらもチラッ、チラッと視線が勝手にみんなの見詰めている先に無意識に動いてしまう。そう、美紀を見ているわけじゃない。視線が勝手に動いてるだけなんだ。僕の意思じゃない、男のサガなんだ、これはきっと……。ボクの視線の先では、柔らかい肉を1/3食み出した美紀のお尻がボクらに向かって突き出されている。

 女子が泳ぐ番だ。男子はみんな、プールサイドで待たされている。紺色のスクール水着の中、ただ一人白い水着の美紀が泳いでいる。水面から出たお尻が、クネッ、クネッとバタ足のたびゆっくり揺れる。そこだけが、スポットライトを浴びたように輝いて見える。

「ところで何で彩ちゃんは休みなんだ? 彩ちゃんの水着姿、見たかったな……」
 武彦がボクに話しかけてくる。知るわけないじゃないか。質問に無視していると、武彦がポンッと手を打った。
「あれか? あれ……」
 あっ、そうなんだ。今ボクも気付いた。あれが始まったんだ。
「美紀が着てる水着は彩ちゃんのらしいぞ」
 情報通の亮太が、横から話しに割り込んできた。
「いいな……。彩ちゃんがあの水着着てるのも見てみたかったな。ビキニ姿も見てみたいな、美紀の……」
 武彦が目を宙に泳がし言う。武彦の頭の中では、白いワンピース水着の彩ちゃんとビキニ姿の美紀が描かれてるんだろう。どっちなんだ! 彩ちゃんの水着姿と美紀のビキニ姿、どっちが見たいんだ! と突っ込みを入れたいけど、武彦の気持ちも良くわかる。どちらかなんて選べない。

 男子が泳ぐ番が来た。女子は、水が名残惜しそうに上がってくる。もちろん美紀も上がってくる。水から上がる時、大きく開いた胸元に付いた水滴がキラキラと輝く。ボクは輝く水滴が眩しくて、思わず目を離してしまった。みんなは、じっと見詰めているのに……。
「健、顔が赤いぞ。Hなこと考えてただろ」
「ち、違うよ!」
 どうして目を離したんだろう、ボク……。ふと美紀の方を見ると、美紀と目が合った。僕の視線に気付いたのか、美紀が慌てて目を外した。ちょっと頬を赤らめて……。

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