ボクらの秘密
木暮香瑠:作

■ 水着とお尻と……4

「健、どうだった? 白い水着……」
 学校からの帰り道、美紀がボクに尋ねてきた。
「ど、どうって?」
 何をドキドキしてんだ、ボク……。言葉を噛んじゃったよ。
「似合ってたかって聞いてんのよ、バカ!」
「バカとは何だ!」
 バカって言われ、何か言い返そうとした時、いつもの声が後から聞こえる。
「けーーん! 寄り道しようぜ」
 50mくらい後から武彦の声がする。
「美紀、先に帰ってろよ」
「健、宿題はどうするの。寄り道はダメって言われてるでしょ!」
「お前の写す。宿題、がんばってね」
「もうっ!!」
 美紀の声を背中で聞きながら、ボクは武彦たちのところへ走った。

 ボクらは、いつもの公園のヒミツ基地に集まった。途中まで一緒に帰っていた美紀を巻いて……。今日は一緒に居るのがなぜか気恥ずかしかった。水着が似合ってたかと聞かれ、ますます恥ずかしくなった。どうしてだろう……。ちょうどいい所で声を掛けられた、いつもの仲間に。みんなが現れなかったら、ボクはなんと答えたんだろう、美紀の水着姿について……。

 そしてボクらの話題は当然、プールの授業の話になる。話題の中心は美紀である。
「美紀、色っぽかったよな」
「うん、可愛かった」
「反則だよな、一人白い水着なんて……。股間なんかハイレグ! あんなに食い込んじゃって……」
 実際はそんなでも無い。スクール水着の中で、一人違う水着だから目立ってただけなんだ。そう思うことで自分を納得させる。美紀だって、ちゃんと授業を受けてたじゃないか、ちょっと恥ずかしがってたけど……。
「毛の処理とか……してるのかな? ほら、ビキニラインの毛の処理……」
「まだ生えてねえだろ。それに急に彩ちゃんの水着借りたみたいだから」
「そうだよな。お尻も半分出てた。柔らかいんだろな、女子の尻って……」
 半分じゃない、1/3だって突込みを入れようと思ったが止めた。入れると、みんなから茶々を入れられそうなので……、何かいらぬ詮索をされそうなので止めた。
「胸、大きくなったよな。クラスで一番大きいんじゃないか?」
「雅子の方が大きいだろ」
 ボクは、クラスで一番胸囲の大きそうな女子の名前を挙げた。今日のボクはおかしい。別に美紀の対抗相手を探す必要なんて無いのに……。
「あれはただ太ってるだけだろ。お腹もクラスで一番だもんな」
「顔は朝昇竜だし」
 今日は何を言っても無駄だ。確かに今日の主役は美紀だった。

 大人になるとスクール水着に興奮するっていうけど、スクール水着なんてボクらにとっては、ただの体操服で、見慣れているわけで……、ボクらにとっては、スクール水着以外の水着の方がずっと刺激的なわけで……。それも学校のプールっていう他の女子はみんなスクール水着の中、ただ一人違う水着っていうのが……。
 もしも、美紀の着ている水着がビキニだったりしたら、クラスの半分以上の男子は、恥ずかしくて水泳の授業ができなかっただろう。水泳パンツの前が膨らんで……。

 美紀の話になると、今日はなぜだか気持ちがイライラする。別に悪口を言われてるわけじゃなく、どちらかというとみんな、色っぽいとか胸が大きいとか美紀を褒めてるのに……。普段なら美紀をボクは貶してるわけで、このモヤモヤした感じは何なんだろう。

「あの白い水着の下に……、おマ○コがあるんだよな? そこって、セックスするところなんだよな」
「そうだよね。あそこにチ○ポ、入れるのがセックスなんだよな」
「あそこに……。水着の下にあるあそこに……」」
 みんな勝手な妄想を膨らませている。別に水着の下にあるのがおマ○コってわけじゃない。体操服でも、普段のスカートの下にでもあることには代わりない。おマ○コは、いつだってあそこにあるんだ。でも……、今日の美紀の水着姿は色っぽかった。それはボクも認める。

「おれ、思い出したらむらむらしてきちゃった」
 実は、いまにもせんずりを始めそうな雰囲気……。
「セックスって気持ちいいのかな?」
 一樹がポツリと呟いた。みんなの目が一樹に向けられる。みんな同じ疑問を持ったことあるんだ。ボクだけじゃないんだ、セックスに対してその疑問を持っているのは……。
「気持ちいんじゃねえの? 漫画では気持ち良いってことになってる」
 武彦は、漫画で得た知識を教科書と同じくらい信じてるみたいだ。
「そうだよな。気持ちよくなかったら、子供作るためにわざわざやらねえよな」
「そういう問題じゃねえだろ。子供が欲しいって大人もたくさん居るんじゃないの? 子供が欲しいから、嫌々セックスをする夫婦も……」
 みんながこうだといえば、少し反論したくなる。ぜんぜんそんなことは思っていないのに……。
「そうか? 俺なんか、親父が酔って帰ってこなかったら作るつもりはなかったって言われてるぞ」
 一樹が言う。一樹の父ちゃん、酒癖悪いもんな。一樹の母ちゃんの言うことも判る。
「親に聞いても教えてくれねえよな。ひっぱたかれるだけだよな、絶対」
 絶対そうだ。この意見には反論の余地は無い。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊