ボクらの秘密
木暮香瑠:作

■ 水着とお尻と……5

「健の姉ちゃん、気持ち良いとか言ってなかった? 健の姉ちゃん、話し判るから、健にそんな話、しない?」
 武彦がボクの顔を覗き込み言った。
「しないよ。俺んちの姉ちゃん、処女らしいから。本当に好きな人が現れるまでしないってのが口癖だから……」
「残念。健の姉ちゃんなら、もしかしたら頼んだらやらせてくれるかなって思ったけど、俺らじゃ無理だな……」
 武彦は、ガクンと首を折った。本当に残念そうに。
「何考えてんだ、お前」
 他のやつを見ると武彦と同じように首をがくっと折ってる。
「お前らもそう思ってたの? なんてやつ等だ。あああ……」
「残念!!」
 本当になんてやつ等だ、考えることは一緒なのか? こいつ等……。多分ボクも同じなんだ、こいつらと。だからいつも一緒にいるんだ。遊びも悪戯する時も……。

「美紀に頼んでも無理だよな。絶対、先生に言われる。こっぴどく叱られるよな」
 実が言う。いつもは彩ちゃんのことばかり言ってるが、今日は美紀が実の中でも中心にいるみたいだ。
「なんか試す方法ないのかな?」
 亮太の一言に一樹が乗った。
「ケツでもセックスできるって漫画で読んだことあるぞ。ケツなら、セックスじゃないからやらせてくれないかな」
 一樹の言葉に、みんなの目が輝いた。でも、現実的に考えると無理だと判る。
「誰が入れさせてくれるんだよ、お尻なんかに……」
 自分のお尻に、誰かのチン○ンなんか入れたくもない。それが友人でも……。姉ちゃんも美紀も、彩ちゃんでも、頼んで断られるだけだろう。
「そうだよな……」
「俺たちで試す?」

 !?

 僕の考えを覆すヤツが現れた。
「お尻に入れるくらいならいいんじゃないか? 入れさせてくれたら、俺も入れさせるよ」
「これってホモっていうんじゃない?」
「何事も勉強だよ。ホモじゃないよ。実験。実験だよ、性教育の……」
「やだよ、痛そうだし……」
「うんこって、結構太いぞ。入るんじゃないか?」
「ホモがいるってことは、入れれるってことだよな……」
「そうかな……」
「試してみないと判らないな……」
 みんな思い思いに言いたいこと言ってる、無責任に……。チン○ンの先にウンコが付くことなんか、それがどんなに汚いことなのかなんか頭の中に無かった。
「先生もいつも言ってるじゃないか。やる前から諦めない、できるかどうかやってみることが大切ですって」
 武彦は興味津々のようだ。勉強もできるし好奇心が旺盛なのもいい。ボクら五人の中で一番頭がいいのは認める。でも、こんなことにはボクらを巻き込んで欲しくは無い。でも、否定する勇気も無い。この年頃は、ボクも含めみんな好奇心旺盛なんだ。特にセックスに関しては……。そうしてボクらは、試したい欲望に負けた。

「いいか、入れるのも入れられるのも一人。ちゃんと、どんな感じかみんなに伝えるんだぞ。説明するんだぞ」
 そう言って武彦が、ノートを一枚破いてみんなの目の前に置いた。ボクらは、あみだくじで入れるヤツと入れられるヤツを決めることにしたのだ。そして、どんな感じか説明してみんなに知らせる。その役目を決めるためのあみだくじを、今作っているんだ。
 武彦が不正のないように、みんな同じ条件になるように、みんなに見えるように目の前で五本の線を縦に引き、二本の線の下に♂マークと♀マークを書く。♂マークが入れるヤツ、♀マークが入れられるヤツ。そして横線を描いていく。下半分を隠し、五人が一人ずつ、横線を二本追加していった。みんなの納得の上、一人づつ縦線の上に自分の名前を書いていった。

 まず、武彦の名前の書いてあるところを鉛筆で辿っていく。はずれだ。いやっ、何も書いてないところこそ当たりなのかもしれない。チ○ポをお尻の穴に入れるのも、入れられるのも罰ゲームに等しい。
 ボクの番になった。武彦の鉛筆が線を辿っていく。あっ、近づいていくよ、♂マークに……。
「健の当たりだ! おめでとう。入れる役だぞ!」
「ちゃんと実況中継しろよ。俺たちに判るように。気持ちいいのか、どんな感触なのか」
 女役、♀マークに当たったのは亮太だった。ボクが入れる役、亮太が入れられる役に決まった。

 亮太はおろおろしている。まさか自分が入れられる役になるとは思ってもいなかったんだろう。ただ好奇心に任せるまま、みんなの話に乗っただけなんだ。ボクだって、入れる側になるとは思ってもいなかった。
「さあ、脱いだ脱いだ」
 実が、ズボンを脱がしにかかる。
「やっぱり……止めない? 本当のセックスじゃないと判らな……」
「ダメ!!!」
 あみだくじで大役を逃れた三人が、ボクが言い終わるのも待たずに声を揃えて言った。やっぱりダメか……。三人の真剣な眼差しが痛い。ボクは、ガクンッと頭を折りズボンに手を掛けた。

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