ボクらの秘密
木暮香瑠:作

■ 夏祭り6

「なっ? いいだろ? 我慢できないよ」
「でも……」
「したいんだ、理沙と……」
「ううーーん……」
 執拗に迫る男と、それを逸らかす姉ちゃん。静かな神社に、二人の声が染み込んでいる。それはボクらにも沁み込んで来る。
「なっ、なっ、なっ……。ほら、コンドームもちゃんと用意してるんだ」
 男がポケットからが急いで取り出した手には、四角いビニールの包みが握られている。

 わあっ! あの男、かなり計画的だ。姉ちゃんとのデートが決まった時から、今夜のことを考えてたんだ。妄想に妄想をして、シュミレーションを重ね準備をして……。

「ううーーん、でも……やっぱり怖い」
「そんなこと言うなよ。痛くしないから、優しくするから……。痛かったらすぐ止めるから、なっ、なっ、なっ!」
 男の声はドンドン大きくなっていく。必死だな、あの男……。
「ううーーん、どうしようかな?」
 セットした髪を気にするように触っている。姉ちゃんの焦らし作戦か?

「やらせてよ、一生のお願いだから……」
 一生のお願い? いつもの姉ちゃんなら、『何回目の一生のお願いだ!?』って凄むのに……、今日は迷ってるような困ったような仕草をして男を焦らしている。

 男の顔は、今にも泣き出しそうな表情だ。手に持ったコンドームの包みがブルブルと震えている。男の態度に見かねた姉ちゃんは、俯いていた顔をゆっくり上げ、甘えるような視線を下から男に向けた。
「じゃあ、口でしてあげる。それじゃダメ?」
「口で? 良い! それでも良い!!」
 泣きそうだった表情が、パッと明るくなった。目を爛々と輝かせ見開いている。姉ちゃんの策略にまんまと嵌っている。姉ちゃんは最初からセックスする気は無かったんだ。多分、お試し期間なんだ。どんな男か見極めて、それからって気なんだ、きっと……。

 姉ちゃんは、ベンチに座ってる男の前に踞み、下から男の顔を見詰める。そしてゆっくり視線を下の方に移していき、男の股間で視線を止める。
「もう……こんなになってる」
 大きくズボンを持ち上げている股間を見て、目を丸くしている。ゴクリッと唾を飲み、そしてズボンのチャックを下ろしていく。

 ジジジーーー。

 チャックの音が鎮守の森に木霊し、サラウンドでここまで聞こえてくる。それほどボクらみんな、音を消して姉ちゃんの行動を見守っている。耳をダンボにして聴いている。

 姉ちゃんがパンツをずらすと、ボヨヨーーンと大きなマツタケのような一物が立ち上がった。大きい!! あんなマツタケなら一万円以上はするような大きさだ。
「デカッ!!」
 一瞬の静寂の後、姉ちゃんの大きな声が神社に響き渡った。そして姉ちゃんの目は大きく見開き、驚きの視線で見詰めている。男の股間から生えたマツタケは、先端に蜂蜜でも掛けた様にテカテカと輝いている。アイツ、姉ちゃんと歩いてる間からずっとHな妄想をしてたんだろうな……。いやっ、姉ちゃんとのデートが決まった日から妄想し続けてたに違いない。コンドームまで用意してるんだから……。

 目の前のそそり立つおチン○ンを見詰めていた姉ちゃんの紅く光る唇を割り、舌が覗く。ぺロッと唇を舐め、舌を伸ばしていく。

 姉ちゃんが舌を伸ばし、今にもそれに触れそうになった瞬間だった。

 バシャン!!

 美紀が手に持っていたビニール袋を落としてしまった、金魚の入ってる……。静かな神社では、それは驚くほど大きな音に聞こえた。お祭りの場所では気にもならない音だろうけど。

「!?」
 姉ちゃんと男が、音に驚きこっちを見てる。ボクたちは、固まった。声は殺したが、目は見開いたまま二人を見詰めている。
「なっ? なっ? なっ? 何? 何かがこっちを見てる!?」
 何が起こったのか判らないのか、男は口をパクパクとしている。
「ひゃーー!! 出たああああーーーー!!」
 男は、丸出しにしたおチン○ンを振りながら逃げていった。仕舞うことも出来ないほど慌てたの? そんなにびっくりした? お化けか化け物、それとも野犬とでも思った? 暗闇に隠れたボクらの12個の目は、漆黒の闇の中、妖しく光っていたんだろう。大声を上げながら手をバタバタと振りながら、大きなおチン○ンをブルンブルンと振らせながら逃げていく。
「待ってええ! ……!」
 逃げていく男に手を差し伸べ助けを求めるような仕草の姉ちゃん。しかし男は、振り返りもせず、股間のおチン○ンを振りながら逃げていく。

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