ボクらの秘密
木暮香瑠:作

■ 暑さ対策は水遊び7

「こらっ、パラソルがずれてる。日焼けしたらどうしてくれるのよ」
「はいっ、お姉さま!」
 パラソルじゃねえだろ。こうもり傘じゃねえか。それに日焼けする為にサンオイルを塗ってんじゃねえのかよ。ボクの友人を完全な召使いにしている。本当に姉ちゃん達の考えることは判らない。

「ねえ、泳ごうよ」
「うん、泳ごう! 健君も泳ごっ!?」
 ボクは美紀と彩ちゃんに誘われ川に入った。いつまでも姉ちゃん達のバカンスごっこに付き合ってはいられない。だってここはリゾートでもなければビーチでもない。田舎の川だぞ!
「キャッ、冷たい」
「やっぱり川の水は冷たいね。プールとは違うね」
 彩ちゃんと美紀は冷たい冷たいと言いながらも、キャッキャッと言いながらはしゃいでいる。直射日光に焼けた肌に、この冷たい水が癖になるんだよな。やっぱり水遊びはこの川でなくちゃ……。大人が、危険だと言いながらもここで遊ぶことに文句を言わないわけだよな。この気持ち良さを知っているから……。だってみんな、ここで遊ぶ子供だったんだから。

「健ッ!」
「ん?」
「ほらっ!!」
 バシャバシャッ!!
 呼び声に振り返ったボクの顔に水が振り掛けられる。美紀と彩ちゃんが両手で水を掛けて来る、満面の笑顔と共に……。ううーーん、これがボクら小学生のバカンスだよな。
「やったなあああーーー!!」
 バシャバシャバシャバシャバシャバシャッ!!
 ボクも全力で二人に水を掛け返してやった。
「キャッ! やだあ、止めてええーー」
 彩ちゃんのかわいい悲鳴を聞きながら、ボクは全力で二次攻撃に備え水の中に潜り川上に逃げた。
「待てええーー!!」
 美紀と彩ちゃんも、水を掛け返そうと逃げるボクを泳いで追いかけて来る。ボクは水中から出て、泳いで追いかけて来た二人に水を掛けてやった。
「キャッ、キャッ」
「キャッ、やだああーー」
 晴天の川原に美紀と彩ちゃんの黄色い悲鳴が流れる。そして泳いで逃げる。ボクはそれを泳いで追いかける。
 反対の川原に着いたら、また水の掛け合い、それが繰り返されていた。

「おねえさん、泳がないんですか? せっかく水着なのに……」
 堤防まで泳ぎ着いた美紀が、水の中から姉ちゃんに声を掛けた。
「あのね、水着は泳ぐ為のものじゃないのよ。見せる為のものなの」
 ここに見せる相手なんていねえじゃねえか。
「いい男でも通らないかしら……」
「そうよね。私たちみたいな良い女が居るって言うのに……」
 まだこんなこと言ってる。通るわけねえだろ。こんな田んぼの真ん中の川に……。通っても農作業してる爺ちゃん婆ちゃんだけだよ。それかボクらみたいなガキだけだよ。

「おーーーい、健! 武彦!」
 川の上の道から声がする。自転車で通りかかったクラスメート三人だ。ボクの思ってた通り、声を掛けてきたのは姉ちゃんの言うガキだ。姉ちゃん達の言う良い男が通る訳なんてない。こんな川沿いの農道を……。
「俺たちも泳ごっ!」
「水泳パンツ持ってきてるのか?」
「ううん、でも大丈夫!」
 ボクの質問の顔を横に振ると、ヤツらは堤防まで降りて来てTシャツを脱ぎ半ズボン姿になる。そしてそのまま堤防から川に飛び込んだ。
「ヒャッホー、気持ち良い!!」
 そう言ってと水の中に潜る。
「うぉおっ! 彩ちゃん、かわいい」
「すごいよ。その水着」
「やだあ、本当に似合ってる?」
「似合ってる似合ってるっ! かわいい!!」
 水の中に潜って初めて、彩ちゃんの水着が上下分かれていることに気付いたみたいだ。
 彩ちゃんのおヘソの出た水着は大評判だ。ヤツラ、ガキには姉ちゃん達のビキニより、同級生の彩ちゃんのヘソ出し水着の方がそそられるみたいだ。
「やだなあ、そんなに見ないで!」
 彩ちゃんは恥ずかしながらも、目が輝いている。女の子って、褒められると嬉しいんだな。
「あーあ、本当に子供は呑気で良いわね」
 姉ちゃん達はボクらが楽しそうにしてるのを見て、余計男がいない事にがっかりしてるみたいだ。武彦達も姉ちゃん達に扱き使われるのにも飽きたみたいだ。ボクらが楽しそうに水遊びしてるのが気になるみたいで、羨ましそうにこっちを見てる。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊