ボクらの秘密
木暮香瑠:作
■ 暑さ対策は水遊び9
「タァーーーッチ! 捕まえた!!」
実が姉ちゃんを捕まえた。タッチする時にビキニのパンツに手が掛かり、姉ちゃんは半ケツになっている。
「こらああーーー! お尻触ったなっ!!」
「触ってませんっ、タッチです!」
そういって、またタッチをした。お尻に……。大きく開いた両手の掌で、剥き出しになったお尻をムギューっと……。
バシャーーー!!
「ウグウッ!!」
大きな水音と共に、実の悲鳴が川面を走る。姉ちゃんのキックが顔面に炸裂した。
「Hなとこ触ったら、殺すって言ったよね。知ってて触ったんだよね」
石の上に仁王立ちし、腰に両手を当てた姉ちゃんは実を睨みつけ言い放つ。膝から上は水面から出ている、まだパンツを直していない姉ちゃんはぷるんと丸いお尻の肉が出たままの格好で……。半ケツに気付いていないのかな?
「キャーー!!」
こんどは沙希さんの悲鳴が響いた。
「どこ触ってんのよ、このスケベ!!」
水面に浮いた沙希さんが一樹の頭を掴んで怒鳴っている。水面を泳いでいた沙希さんを、潜水して追いかけた一樹が、沙希さんの身体で一番出っ張っているオッパイにタッチしたんだ。
「タッチです。ボクの方が後から陣地離れましたから……」
「そんな問題じゃない、このヘンタイガキ!! 胸、触っただろ!!」
一樹の反論も沙希さんには通じない。口調が荒っぽくなっている。
「お姉さん、もう止めて。それ以上したら死んじゃうっ!」
相変わらず姉ちゃんはケツを出したまま、足で実の顔面を確実に捉えている。最初の蹴りで仰向けに引っくり返った実の顔面を、上から押さえ込み水の中に押し込むように……。実の手と足だけが水面より上に出てバシャバシャと水しぶきを上げている。
「死んでも仕方ないのよ。こんなスケベなガキは!!」
美紀が姉ちゃんの手を引っ張って止めようとしてるが、姉ちゃんの伸ばした足は実の顔を押さえつけ水の中に沈めている。
「もう二度としないと誓うか!!」
姉ちゃんは足をグイッと押し込み、川の中に実を沈める。
沙希さんは沙希さんで一樹の頭を押さえ込み水の中に沈めている。
どうしよう。今、止めに入ったらボクまで巻き添えを食うぞ。二人とも、相当興奮状態だ。子供のボクらでは止められそうにない。
「健君、こっち……」
逃げ腰のボクを彩ちゃんが手招きして岩の陰に誘っている。彩ちゃんは優しいな、困ってるボクに助け舟を出してくれたんだ。ボクは彩ちゃんのいる岩陰に身を隠すことにした。
「ふうーー、あいつ等には困ったもんだ」
溜息をつくボク。そんなボクに彩ちゃんは訊ねた。
「健君も女の人の身体、触りたいの? 触りたいなら……」
えっ!?
周りの音がまったく聞こえなくなる、さっきまであんなに騒がしかったのに……。ただ聞こえるのはボクの心臓の音……。ボクの心臓が、バクバクと暴れている。どうして? これはどういう状況? ボクはどうすればいい? 彩ちゃんはボクに、男って女の人の身体に触りたいものなのかって聞いてるだけ? それとも……。
「健くん……?」
戸惑っているボクの顔を彩ちゃんが覗き込む。そして顔を赤らめ俯いた。
「健くんなら、私の初めて……あげてもいいよ」
彩ちゃんの目がチラッと美紀を見たような気がした。そして目を瞑り、胸をボクの方にほんの少しだけ突き出す。
どうしよう? 男としてボクはどうしたらいい? 心臓は相変わらずバクバクと暴れている。男の欲望に従うべきか、それとも……。
ボクの口から出た言葉は意外なものだった。
「ね、姉ちゃんだって……処女だから……」
何言ってんだ? ボク。なぜか姉ちゃんを引き合いに出してしまった、姉ちゃんのことは聞かれてないんだけど。「姉ちゃんだって処女だから……、ボクはまだ……」
こんなこと言いたいんじゃない。触ってみたくない訳じゃない、やりたくない訳じゃない。あのスケベな姉ちゃんだってまだ経験ないんだから、僕だってないと言いたかっただけなんだけど……。まだボクらの歳じゃ、早い? って言いたかったんだけど。
「彩ちゃん! 手伝って!! 沙希さんを止めて……」
美紀がこっちを振り返り彩ちゃんに助けを求めた。実が逃げるのを追っかけようとする姉ちゃんの手を引っ張り、何とか実を逃がそうと必死だ。
一樹は相変わらず沙希さんに沈められたり、浮いたりを繰り返している。
「彩ちゃん!! 早く!!! 彩ちゃあん!!!」
…… ……。
「……うん、判った!」
彩ちゃんは、ほんの暫く躊躇したが沙希さんを止めに向かった。
ボクは、美紀と彩ちゃんが姉ちゃん達二人の気持ちを静めるのを、巻き添えを食わないように岩陰から眺めていた。
彩ちゃんが言った初めてって何だったんだろう? 身体に触ること? それとも、もっと先に進んだ……ボクが考えるようなHなこと? 今夜は眠れそうにない。暑くて永い夜になりそうです。
暑さ対策は水遊び・おわり
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