ボクらの秘密
木暮香瑠:作

■ 自由研究2

 翌日。

 ボクらは集合場所の神社に集まった。

 ボクが男では最後だ。ボクは、美紀と彩ちゃんと一緒に神社に来た。
「健、遅いぞ。夫婦喧嘩でもしてたのか?」
「美紀ちゃん、少しは健にやさしくしてやれよ」
 みんなが美紀、彩ちゃんと一緒に来たボクをからかう。
「夫婦じゃねえし……」
 一緒にいることが多いボクと美紀は近藤夫妻と呼ばれてる。『近藤』というのはボクの名字なんだけど。最近ではもう否定することも面倒くさい。美紀も相手にしない。仕方ないじゃないか。父さんと美紀の父さんが幼馴染で、美紀んちは父子家庭で、昼間はボクんちで預かるって親同士が約束してんだから……。
「お待たせーー。みんな揃ってる?」
 ボクの後をついてきた美紀と彩ちゃんがみんなに声を掛ける。昨日の打ち合わせで、美紀と彩ちゃんがお昼の弁当を作ってくるということになっていた。彩ちゃんが作りたいって言ってくれたんだ。美紀はしぶしぶだったけど、彩ちゃんの家で二人は朝からボクたち全員分、七人分の弁当を作ってくれた。

 美紀と彩ちゃんは、コットンのシャツに股の別れてるスカートともシュートパンツとも言えそーなヤツ。キュロットスカートっていうの? ショーパンというには裾が広いから……。まるでボーイスカウト、いや、女の子だからガールスカウトか。そんな恰好でカッコ可愛い。もう、完全に冒険気分? ハイキング気分?

「お昼の弁当、楽しみだな」
「何作ってくれたの?」
「サンドウィッチにした。食べやすいかなって思って……。それから唐揚げとウインナー……。お母さんも手伝ってくれたから」
 彩ちゃんの家でお昼の弁当を作ってきた二人は、ボクと待ち合わせてここに来た。
「ウオオオ、彩ちゃんのお弁当が食べられる! 楽しみ!!」
 みんなが彩ちゃんに期待しすぎ。
「私も一緒に作ったんだけど……」
 美紀は少し不満そうだ。でも機嫌は悪くなさそうだ。目が笑っている。やっぱりハイキング気分でテンションが上がってるんだろう。



「さあ、行くぞ!」
「うおお!!」
 みんなテンションが高い。

 神社に自転車を置いていざ出発。自然と歌が始まる。『いこう、いこう、息子は元気、朝から元気だ、どんどんいこう……』と歌が始まる。歌詞が違うぞ! 美紀と彩ちゃんもいるんだぞ。その歌はまずいだろ。っていうか、正確な意味も理解せず歌ってる。Hな歌なんだろうなということだけで……。美紀と彩ちゃん、ふたりはきょとんとしてるけど……。

 坂道を少し上ると大きな土手に出る。土手というか堤防、ちょっとしたダムだ。堤防の上に上ると、その向こう側はため池になっている。学校の運動場三個分以上はある大きな池だ。堤防の両側は山に突き当たってる。

「ここから山道になるぞ」
 土手の左端から山を登る道が続いている。人が一人と通れる細い道が山に続いている。今でも、山菜や野草を採りに行く人がいるらしい。ボクらも冒険だと言って何度も来ている。

 山道の途中、一か所岩場になる。
「これを登ったら、あとはすぐ下りになるから」
 武彦がまず登る。ボクは下から指示を出す役だ。手を掛ける場所、脚を掛ける場所を。ボクらは何度も来たことあるから、武彦はすっと登っていく。ボクの指示でみんな順に上っていく。彩ちゃんも、ちょっと手こずったが、下からはボクが手の置く場所、足を掛ける場所を指示し、上からは武彦が指示し何とか上った。残るは美紀とボクだ。

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