ボクらの秘密
木暮香瑠:作
■ 自由研究4
「へえーー、こんなになってたんだ」
「美紀は初めてかよ、このに来るのは……」
山から下りたところは、山と山に囲まれた三角形の広場のようになっている。学校の運動場より少し広い。その真ん中を川が流れていて、ため池へと注いでいる。なぜだかここは、ところどころ木が生えているが草は背丈が低く長めの芝生の様で、その中を何本か道のようになっている。野草や山菜を採りに来る人が結構いるんだろう。川沿いにはたくさんお花がしている。大きな岩も何個かゴロゴロとしていて、中にはボクら7人が乗れるほどのものもいくつかある。
「初めて……。彩ちゃんもそうだよね」
「うん」
「ここに昔の人たちが住んでいたのかな」
二人は不思議そうにあたりを見渡している。
「山に行けば木の実もとれるし、川もあって水には困らないし、住みやすかったんじゃね」
武彦は、知ってる浅い知識を自慢げに話す。でも、ボクにはとても住みやすい場所とは思えない。だって、今のボクらはもっと河の下流、今僕らが住んでるのは平野だ。そっちの方が畑も田んぼもあって、食料に恵まれてる気がするんだけどな……。それにここにはコンビニもないし、スーパーも本屋も駄菓子屋もないし……。
「さあ、始めようか」
「ああ……」
ボクらは早速、発掘を始めることにした。
「俺は絶対恐竜の骨、掘り当てるぞ!」
「俺はゴジラの骨!」
実と一樹は、相変わらず化石が出てくるのを期待してるみたいだ。
でも、どこを掘ればいいんだ? ここはボクらには広すぎる。家の裏の空地とは訳が違う。
「でもどこ掘ればいいのかな?」
結構広いこの場所で、むやみに掘っても疲れるだけだ。といっても、見当もつかない。そう、ボクらは下調べもせずに来た。そのことを悔やんでも遅い。昨日はテンションが上がっていて、来ることだけで盛り上がってしまった。
「考えましょう、自分が住むならどこがいいか。健ならどこに家を建てる?」
美紀の提案は的を射てる気がする。ボクは顎に手を当てあたりを見渡した。
「ボクだったら、少し高くなってるあの辺かな。川の水が多くなっても安心だし……」
「恐竜だったら、池の側かな。魚もとれるし、池に水を飲みに来る小さな恐竜も捕まえられそうだし……」
一樹と実はため池の方に走っていった。池の近くで化石を狙うらしい。この近くで化石が出たって話は聞いたことないけど……。
ボクと美紀は少し高くなった場所で掘ることにした。
各々持って来たスコップや熊手で地面を掘る。彩ちゃんは記録係をかって出てデジカメでみんなが掘ってるところを写真に撮って回る。
「土器、出るといいね」
美紀はそう言うと、草をかき分け地面を掘り始めた。ボクも地面にスコップを入れた。横にずれながら掘ってく。でも、いくら掘っても、出てくるのは石ころばかり……、何も出ない。八月も終わりに近いというのに日差しはきつい。暑い……。
「腹減ったーー。もう弁当食べていいかな?」
亮太は弁当だけが楽しみみたいだ。彩ちゃんに訊ねている。
「まだダメッ。早いよ、発掘始めたばかりじゃん」
「お腹と背中がくっ付きそうだヨ!」
「何言ってんの。まだ十時よ」
「ええーー、ウソォー。もう何時間も掘ってる気がする」
亮太は残念そうな顔で彩ちゃんにお願いしてる。
でもボクにはそんなことより気になっていることがある。土器よりも、美紀と彩ちゃんが作ってくれたサンドウィッチよりも……。
ボクの少し横で、美紀がしゃがんで地面を掘っている。
「美紀ちゃーん、何か出た?」
武彦のところで写真を撮っていた彩ちゃんが美紀に声を掛ける。
「ううん、何も出ない。石ころばっかり。そっちは?」
「こっちも何も……」
彩ちゃんがカメラを手に答える。あっちも何も出てないみたいだ。
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