人妻の事情
非現実:作

■ その時は妻であらず4

いつもの日常で軽くこなしてきた事でさえ、この服の前では困難だった。
デパートに着いて真っ先に向かった私を田崎さんは腕を掴んで首を横に振り、引っ張られるようにエレベーターから遠ざかれる。
着いた先は案の定…… ……。
(それは解ってるけど……だって…ほ、ほんとに?)
エスカレーターの目の前で田崎さんにアイコンタクトをする。
ニィっと、どす黒い笑みを返す田崎さん。
(でも、でも……こんな格好、隠し様がないしわ)
借金返済契約の頃にホテルで2人きりの羞恥プレイで、私はその甘美な快楽を覚えた。
そしてソノ快楽が忘れられなくなり、お互い気の合う趣向同士で楽しむ事を選んだ。
だが、今のそれはホテルでの2人きりと余りにも違った。
野外露出というものがここまで凄い物だとは思ってもみなかった……。
どうにも決心が付かない。

「奥さん奥さんっ」
「きゃっ!?」

突然田崎さんが耳元で囁いたものだから、私は反射的に小さく声を出して身を引いてしまった。
周囲の視線が更に私達へと集中されていた……。
(はっ、恥ずかしいぃぃぃ〜〜〜っ!)
私の気も知らないでか、好奇な視線に全く気にも留めていない感じで、田崎さんは再び耳元で囁いたのだった。

「エスカレーターの真横で何もせず突っ立ってるのって目立ってるんだよね、奥さん。
それってサ、もしかしてワザととか?。」
「そ、そっ、そんな……事は!?」
「只でさえ男にとっちゃオ○ンチンが全開になっちゃう服装なんだしさぁ?。
僕みたいな親父なのが隣にいたりとかしてサァ〜多分相当変に見られてるよぉ?。」
「はっぁはぁはぁ…… ……め、目立ってる…の?」
「んひっひっひっひ、やだなぁ〜もぉ変な息しちゃってぇ〜〜。
下りエスカレーターの青いスーツの男、これで3回目だよぉ乗り降りしてるの。」
「ぇ!?」
「きっと営業とかで散々ストレス溜まってるんだろうねぇ〜。
きっとさ、今の奥さんで目の保養とか……夜のオカズにしようとしてるんだよぉ?」
「そっ、そんなっ!?」
「少なからず理沙ちゃんの格好とか、僕との年齢差とかで周りの人間は変に思ってるよ?。
だったら〜〜〜〜……移動した方が賢明じゃないのぉ?。」
「…… …… …… ……」

確かにきわどい格好をしたまま何時までも立っていても周囲の視線は無くならないし、私達の関係を理解されかねない。
それならばいっそ、露出プレイという快楽を得ながら危険を回避するが為、サッサと終わらせる方が得策だと理解した。
意を決して……エスカレーターへと足を踏み入れる。

「ぁの……ぁのぅ……た、田崎さん?」
「ん?」
「こ、これって?」

エスカレーターに乗り込んだはいいが、私は戸惑う様に問いかけるのだが……田崎さんはソレを察知したらしく小声で軽く返してきた。

「折角のお楽しみでしょ、僕には奪う権利はないなぁ〜」
「でっぇ、でもっぉ、あの……あのっ!」
「十分楽しんでよ奥さん、前から後ろからサ」
「ゃだっぁ〜〜っ」

当然のエスコートだと思っていた事が、いきなり意もしない結果となり慌てる。
(そ、そんなのって……こっこれじゃぁ〜〜やだぁ!)
エスカレーターの場合、スカートを穿いている彼女に対してその後ろに男性が乗る、それは気遣いと真心ではなかったの?。
そういう常識すらないのが野外露出プレイ?。
前に乗ってしまった田崎さんは、私の後ろを守ってくれるつもりが無いらしい。
これでは黒の刺繍レース付き4段フリルは意味を成さないだろう、股下10センチ以下の白のフレアスカートの中身は下の階の人には丸見えとなる。
高いピンヒールが無駄に後押しする。
パンツは穿いているが、日常しようしている物を見られるというのはチョット。
駄目っ……。
(ぁゃ!?)
両手でスカートの裾を抑えるのだが…… ……

「胸、気よつけてねぇ〜」
「ぇっ、ぁ!?」

隣には下りエスカレータが設置されており、上から見下ろされると胸元ギリギリのカットソーの中が危ういのだった。
(っぇっぇえ、ヤダッ、どうしたらっ!?)
とりあえず左手でスカートを右手で胸元を押さえるしかなかった。

とりあえず片手でスカートを抑えるものの、多分隠し切れていないのは手で覆う箇所で解っていた。
もぅ……大事な所意外はいい…… ……そうさえ諦めていた。
そして胸元の緩々のU字カットソー……片手で覆うのは簡単なのだが……押え付ければ突けるほどノーブラである象徴が解ってしまう。
つまり2つの突起したモノがリアルに出てしまうのだ。
(どっぉ、したら…いい……のっぉ!!?)
前? 後ろ? ……隠すのはどっちなの?。
エスカレーターを上ってゆく異様な(私?)女に……男女問わず視線は向けられた。
その刺激的な視線を浴びる度「隠れたい」という感情と「もっと」という快楽の狭間で酔い痴れていた。
この大手デパート、2・5階建ての作りで安全を考慮したゆっくりとあがるエレベーターだった。
この時間帯……私は視姦という遊びを全身で感じながら覚えてしまったのだった。

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