人妻の事情
非現実:作

■ その時は妻であらず5

「さぁ5階に到着だねぇ理沙ちゃん」
「あのっ、私、地下に用があるのですけど……5階には食材は売ってないわ。」

私の住む地域でも、ちょっと良い物を買う時にはこのデパートを利用する。
だから各階に何の店舗が並んでいるかなど、百も承知の事。
(こんな場所に用なんかないわ、よ)
女性専用の各ブランド店が立ち並ぶ5階のフロアは、かつて狂った様に通販で買い漁ったブランドロゴが誇らしげに立て掛けられてあった。
今となっては田崎さんという人と出会うキッカケと、本当の私に目覚めさせられた曰く付きのロゴ。
(ひょっとしたら田崎さん、わざとここに?)
この人は本当に、人の嫌がる事恥ずかしい事思い出したくない事をピンポイントでついて来る……。
案の定だった。

「いゃ〜高級ブランドってのはホント高いねぇ〜奥さん、ねぇ?。
妙な細工とかいかにも使い辛そうな作りなのになんでこんなに高いんだろぅねぇ〜〜?。」
「こ、こんな所で奥さんは、やめて……」
「えぇ〜〜だってホラ、そのポーチ、アレってアレでしょぉ〜?。
一介の主婦がそんなのって、余程のセレブか夜に働いてる人しか買えないでしょ?。」
「ぁ、ちょっとっ、や…大きな声出さないでぇっ!?」

超有名ブランドのロゴを指差す、田崎さんのその腕を強引に引き降ろしたのだった。
もう泣きそうだった。
ブランド物が立ち並ぶこのフロアは気品に満ち溢れていたが、周囲が気になるとかそんな余裕すらなかった。
他のフロアとは違う昼間のデパートの定番、子供の泣き声や特価で殺到する主婦達の雑音は一切無いこの場。
各ブランド店の社員さん達の教育も行き届いているのだろうか、私達をも見て興味あれど下世話な勧誘はしてこない。
…… ……ただ、視線が痛い。
明らかに私達は変な関係の客だと見られていた。

「戻りましょう」
「ぇえ〜〜いいの奥さん、僕ね結構財布に軍資金入れて来たんだけどなぁ?」
「け、けっ結構です……私はっ食材買いに来たのですからっ!
「そぉ〜かぁ〜〜……残念だなぁ、折角何か買ってあげようカナって思ってたのに」
「いりませんから」
「そぉ〜〜」
「い、行きましょう!?」

このロゴ達は忌々しい…… ……。
私にしては忘れたい過去の出来事だった。
安定した暮らしに優しい夫……全て甘えていた。
まるで病気のようにブランド物を買い込んだ私はどうかしていた。
傷口は浅い方がいい、自らが学んだ事だ。
これ以上田崎さんに弱みを見せたらいけない……私の直感だった。
人の弱みに付け込むのが本当に得意だから……最大レベルの警戒を脳裏に打ち付ける。
この人の甘い言葉は毒、だと。

「いぃや行かないねぇ〜〜僕ね、奥さんにこれだけは必ずプレゼントしようと思ってたんだ。
ソレを受け取ってくれない限り僕は動かないよぉ?。」
「ぁっぁ!?」

言い放った田崎さんはスタスタと歩を進めた。
どうしていいか解らなかった……私はその後ろへとついて歩くしかない。
(っく、ンもっ!)
悔しいけど従うしかない状況だった。
立ち並ぶ1つのブランド店で足が止まる。

「ぇ」
「ココ、スキでしょ奥さん?」
「〜〜っう、やっぁ!」
「来る前から選んでおいたんだよぉ、奥さんにお似合いな奴を、さぁ〜〜〜」
「え……ぁッ!!?」
「んふふふ……きっと似合うよぉ〜何せオーダーメイドだからねぇ〜」
(ぇ……嘘ぉ!)

こんな高級ブランドでオーダーメイドとなれば相当な金額になるだろう。
(それを……わたし…わ、わたしに!?)
一瞬でもトキメイタ私はどうかしていた。
そんな私の表情を見ながら田崎さんは言う。

「冗談だよ奥さん、まだその病気治らないの?。
それに今着てもらってる服、僕のプレゼントだという事忘れてない?。」
「ぁ!?」
「そぉ〜〜ふ〜ん……僕が選んだ服、そんなに気に入らないんだぁ?」
「あ、あのっ、ぃえ……これはソノ!」
「なぁ〜んか、腹立っちゃったよ僕」

意地の悪い笑みを見せながら田崎さんは私の手を強引に取り、更に言うのであった。

「もっと興奮する事を教えてあげるよ」

一瞬の油断に、私は後悔するのであった。

今までに無い強引さに、私はされるがままソコへ連れて来られたのだった。
一番のお気に入りだったブランド店舗を強引に手を引かれ、店員さん達は異常な状況を唖然として見ていた。

「さぁ、入ってよ」
「で、でも……私、何も試着を…… ……」
「そんなモンはいいんだ奥さん、今ここでする事は……パンティを脱ぐ事だよ」
「そっ、そん、な!?」

思わず絶句……血の気が引く思いだった。
だけど田崎さんは厳しい顔で言うのである。

「随分と馬鹿にされた気分だ、僕が選んだ服が気に入ってもらえないんだもの。
それにサ……何トキメイちゃってんのよ奥さんさぁ。」
「決してそんな事は!」
「いやいやいや……絶対僕を舐めてるでしょ、ねぇ奥さん〜〜?。
だから応えてあげるよぉ、僕と会ってる時は互いの性癖で楽しみましょうだったねぇ?。
だからサ…… ……脱ぎなよ、そのショーツを、さ。」
「ぅ…… …… ……」

試着室での攻防、これは一瞬だけでもトキメいてしてしまった私に分が悪かった。
際ど過ぎる服をプレゼントして貰っていたのに、ブランド物にときめいてしまった私は浅はかだった。

「ど、どうしたら許してくれる…の?」
「脱ぐしかなぃねぇ」
「そんな…… ……だって私っ、そのっ……これで脱いだら私……」
「うんうん解る解る、見えちゃうよねぇ」
「い、いぁわないでっ!」

短過ぎるスカートを両手で押さえて懇願するが、田崎さんの次の発言はあまりにも魔力を持っていた。
脳が蕩けてしまう程の……。
Mという羞恥プレイの禁断の甘美に魅了された私には甘い囁きだった。
それはただ一言…… ……。

「で、やるのやらんの?」

超有名ブランド店の試着室でのカーテン越しに囁く田崎さんの言葉。
(この服で下着を穿かないなんて…… ……ぁぁっン!)
想像するだけでドキドキしている自分がいた。
もうその興奮に自身を抑えきれない。
超ミニスカートの裾に伸ばす両手は震えていた……今から始まる快楽で。
あの大好きだった有名ブランド店の試着室…… ……只でさえ短いスカートをたくし上げ、愛用している白のショーツを下げ降ろしたのだった。

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