人妻の事情
非現実:作

■ その時は妻であらず6

「これでいいよねぇ〜」
「っえ?」

突然田崎さんがカーテンを少し開けて、ブランドのワンピースを差し出したのだ。
「何事?」と理解出来ない私に、更に田崎さんは囁いた。

「怪しまれるでしょ、だから取り合えずコレね」
「あ、ああ」
「ソレにさ、戻す際には脱いだパンティを包んでね?」
「も、もぅ……脱ぎま、した……」

まだ生暖かいショーツを手にして見せた。

「そ、そう早いねぇさすがは理沙ちゃんだぁね。
……じゃあ、一回閉めて直ぐにでも行こうか?。」
「は、はぃ」

私はワンピースを手に取り、試着したと思わせる時間後にショーツを包ませて田崎さんに渡していた。
素早く田崎さんはショーツだけをポケットに含ませてワンピースを戻したのだった。

「じゃあ、いこっか」
「は…ぃ」

脱いだ瞬間私は胸とおしり……どちらを守ればいいのか…… ……。
否応無くスースーする下半身は予想以上だった。

「じゃ、お目当ての地下行こうか、勿論コレで」

店舗から出てエレベーターの前で田崎さんは言うのだった。

「ン、ぅっぅううう……あの……これで?」
「自然でしょ?」
「さすがにコレでは……ちょっと、見えてしまいますぅ……」
「それが良いんでしょぉ〜奥さん〜〜」
「で、でっも上りのエスカレーターの人に……」
「ウン見えちゃうね、精一杯両手でカバーしてねぇ〜」
(見られる……他人に恥ずかしい所、見られちゃう…恥ずかしい……)

想像するだけで……激しく艶かしい吐息が漏れる口。
(んんンっ、はぁはぁはぁ……こ、これ、チラリズムの最高潮、よね?)
最早私の中では「止めたい」という選択肢は無くなっており、両手をどうやって隠すべきか、それだけで頭が一杯だった。

「ささっ、決心付いたら行こうか?」
「は、ぃ…ぃ!」

今の私にとって、下りのエスカレーターは勇気がいる。
この際上は我慢するしかなく、両手で前と後ろを押さえつつ…… ……。
足をエスカレーターへと向けた。

「ぁっと!?」

ピンヒールで支えていた身体がグラ付いて、後ろの裾を抑えていた左手が手摺りを持つ。
(危ない、危なかったわ……)
普段穿き慣れていないせいもあるが、歩くだけでも危なっかしい程高過ぎるピンヒール。
その直後だった。

「ぁっ、キャ!!?」

高低差の風で超ミニスカートが煽られたのだった。
慌てて両手でスカートの裾を押さえた。

「目立ってるよぉ〜奥さん〜、変な声とか止めた方がいいんじゃないのぉ〜〜」
「……え、ぇっ!?」

後ろにいる田崎さんが耳元で言う。
顔面おろか、全身がカァッと熱くなり、恥ずかしさのあまり前を向けない。
……確かに、今の悲鳴は異常に聞こえただろう……。
前を向けずとも解る、私に集中する他人の視線。
昼下がりの午後、際どい格好の女(私)のイキナリの悲鳴……。
しかも父と娘ほどに離れた年齢差の男女が耳打ちしている状況下、不審に思わない方が余程鈍感なのかもしれない。

「さぁ危ないよ理沙ちゃん、前を向かないとサ」
「で、でも…… ……」
「いや、いやね、怪我でもされたらそれこそ一大事じゃ済まなくなるでしょ?」
「目、瞑ってる訳じゃないですから……大丈夫、です……」
「ふ〜んそぉ〜そうかぁ〜〜……でもネ?」

田崎さんが再び悪魔の囁きを口にしたのだった。

「見られてるという事実が解るとね、すっごくすっごくねぇ……快感らしいよぉ〜?。
理沙ちゃん、もぉぉっと快感味わいたいんじゃないのぉ?。」
「っ」

ただでさえ異常に早い心拍数が、更にドクンドクンと波立たせる一言だった。
(……どぉしよぅ…… ……これでも恥ずかしいっていうのに)
心の中で葛藤し続ける間に、4階の踊り場に到着してしまった。
すれ違う人達は、ギリギリまで私を視界の中に納めつつ去ってゆく。
エレベーターの傍から私を放して、再度田崎さんが言った。

「どうするのぉ、ねぇねぇ〜地下まであと4階までしかないよぉ?。
そしたらお楽しみな時間、終わっちゃうねぇ〜?。」
(……そう、この快感は時間制だったわ……)

決意は新たに…… ……。
私は小さく田崎さんに頷いて、4階から3階へのエスカレーターへと踏み入れたのだ。
…… ……そして、恐る恐る私は前を向く。
いきなり、上りエスカレーターですれ違う人の好奇な視線が突き刺さった。
男性は鼻の下を伸ばして何とか私の短いスカートの中身を覗けないかものかと必死であり、女の人は軽蔑の視線。
(ぁぁ…見られてる、私……見られてるぅぅぅ)
その浴びるような視線で、頭が真っ白になりそうなくらいに感じてしまう。
両手で押さえてはいるが、ピラピラと頼りないミニスカートの裾は尚も扇情的に周囲を煽っている。
(ぁふぅ……こ、これが…視姦、な…の?)
夫を見送り、家事を済ませてからの秘密のお楽しみ、Hサイトで知った言葉とその意味。
……今、私はソレを現実に実行している。
そして否応無く、何も穿いていない下半身が反応しているのが解った。
(ぅあ……疼いてる、の?)
肝心の部分を押さえている両手に力が篭る。
それでもヒラヒラとミニスカートは風になびき、腰のサイドラインにパンツの布の存在が無い事を強調させる。
すれ違う人達が「ぇえ!?」という表情で過ぎ去る。
その表情と、今の私が味わっている状況に……私。
(んんっぁンンぁ……はっぁはぁはぁっはぁはぁ……み、見られてるっぅ!!)
ただ興奮していた。
すれ違う度に私を見て「くれている」ソノ視線、ゴメンなさいアナタ……これ、ね、刺激的なの!!?。
階を降りる度にふら付くピンヒールでエレベータを乗り継ぐ。
前後を抑えていてもその度、両腰に無ければならないショーツの布が無い私がいる。
もう胸元ギリギリのカットソーとか…… ……どうでもよくなっている私は異常だと思った。
相変わらず、2つの突起した跡は衣服越しからでもはっきりと視認できるのだが……。
(わ、わたぃぃ……この状況で、こっ興奮してるっ?)
身体はワナワナと震えているのだが……それは恐怖というのとは違っていた。
羞恥プレイ、私、好きぃ……。
ハァハァと……零れる吐息はまるで誘っているかのようだったらしい。

各階のエレベーターで……私は痴態を晒し続けた。
それは自身望む事で…… …… ……。
羞恥プレイという第一歩を踏む出した私の気持ち。

普通では味わえない究極の性。
そして最後の1階から地下へと続くエスカレーター……。

「いよいよ最後だね理沙ちゃん〜いやいやいや、ホントによく頑張ったねぇ。
でね、これは僕からの頑張った理沙ちゃんへのご褒美、でね?。」
「?」

田崎さんが耳元で囁いた……。

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