人妻の事情
非現実:作

■ その時は妻であらず7

リビングのロングソファーにその身を預けていた。
何度目か解らない深い疲労の溜息を付いている。
文字通り動けない……全体力を使い切った、そんな感じ。
こんなに身体を酷使したのはいつ以来だろうか……。
(体育祭? ……ううん、私、クラスの創作ダンスしか出てないっけ……)
元々運動が大の苦手なタイプである。
(お風呂……入りたい…… ……)
嫌な汗と疲労度が身体中を纏わり付いているよう。
だが、それすらも躊躇わす貞操帯……。
一歩動く度に鉄の下着は否応無く存在感を示すのだ。
「身体にフィットしてるから慣れるよ」との田崎さんの言葉を呪うしかない。

総8s程度のステンレスの錘の下着を穿いている…… ……。
私専用の特注品という完全に身体にフィットした拘束感が否応無しに快楽へと導く…… ……。
完全なる異常な生活。
私はようやく家路へと帰る事が出来たが、それまでが本当に大変だった。
貞操帯というものの普通ではない生活が、コレほどまでに異常だとは思ってもいなかった。
   ・
   ・
   ・
「んふっふふふう〜〜よぉぉく撮れてるよぉ奥さん」
「…… は、ぁ」
「貞操帯の生着替え、うん……うんうん〜いいね
ぇコレ〜」
「…… …… ……」

デジタルカメラの動画をチェックしている田崎さんを横目に、衣服を身に纏い帰ろうとしたその時である。
崩れるように私は事務所に倒れてしまった。

「ちょっとちょっとっ、大丈夫理沙ちゃん!?」
「ぁ、はっぁ…はぃ……はい、大丈夫、です…からっ」
「って、大丈夫じゃ、ないじゃない……」

背中越しから両脇に手を添えてる田崎さんが言う。
事実、私の両足はガクガクと振るえ、地に足が着いていなかった。

「ん〜〜〜……これじゃあ私生活ですらままらないよ、理沙ちゃん」
「んぅっぅ…はぁっぁ〜〜はっぅぅ〜〜んぅぅくっぅ」
「感じ過ぎでしょ〜ねぇ〜〜理沙ちゃんっ!」
「ごっ、ご免なさぁっぁ…ぃっぃいいんうぅぅンっふっぅ!」
「…… ……」

ゆっくりと田崎さんは私の両足を地に着けて……言った。

「取り合えず、歩く練習!」
「?」
「このままだと理沙ちゃん、秘密がバレるよ、マジで?。
ボクとの関係続けたかったらサ、貞操帯付けてて普通に生活してもらわないと。」
「……た、田崎さん?」
「無理だと判断したら僕は、この南京錠の鍵で理沙ちゃんの貞操帯を解く。
それは理沙ちゃんには貞操帯は無理だったという事だし、無理強いは出来ないからね。」
「……そ、そんな…… ……」
「理沙ちゃん……・慣れるんだ、今短い時間だけど貞操帯に慣れるんだ。
この時間で、色々と歩いて動いて何とか貞操帯に慣れてごらん。」

…… ……私は首を……縦に振った。
そして時間の許す限り事務所内で私は歩き回り、自身の下半身を拘束するステンレスの下着を受け入れたのだっだ。
想像以上の下半身の圧迫感に絶えながら……。

最近の夫の口癖…… ……
「スカートってサ、寒くないの」である。
冬も本番に近付く12月初頭、私の私服スタイルはどんな時でもスカートだ。
ふんわりとしたフレアタイプのスカートを好んで着けていた。
夫から一番最初に聞いた時、私は焦りに焦って支離滅裂な言葉を口にしていたらしい。
(それはそうよ……バレたと思ったんだから……)
後に解ったのだが、夫は単に寒くないかというのを心配しているだけだった。
ホッとする私と、罪悪感を感じる私。
(でも……もう駄目なの……あなた)
いつもの様に朝食を一緒にして玄関で行ってきますのキスをして……掃除洗濯をする。
屈んだり腕を伸ばしたりする度に、ステンレスの貞操帯は存在を主張してくるのだ。
この窮屈感が堪らなくなる時がある…… ……。
そんな時はコッソリと、洗濯機や掃除機の振動で無駄な慰みをする。
敏感な所には、細い網目の自慰防止版とフロントシールドが南京錠で硬く留められている。
即ちどんなに振動があっても、核心には届かないのだ。
下半身を押し付けるとカンカンカンっと金属同士が触れ合うその音……異常である。
無駄な行為であるのは解っている。
残念な事に自慰防止版があるせいで、核心にその振動は伝わらないからだ。
だけど私はそれだけでも満足だった。
自らの意思の元で自慰が出来ない……それは性感をより強くさせるみたいらしい。
そして、今日も…… ……。

ガッチリと下半身を他人に管理された貞操帯を、スカートの上から触る。
今ではこの8sの拘束具も、普段の生活に支障無く毎日を過ごしていた。
慣れてしまった自分が本当に恐ろしくも思う。
連絡を心待ちにしているのだが、中々携帯は鳴らない日々だった。
大小の排泄も最近は上手くなった(ってしまった)。
もう貞操帯を汚さずに出来る。
こまめに洗浄もしている。
ビデの射出で何度もイキそうになった。
だけどそれではやっぱり物足りない。
洗浄した後に襲い来る淫らな気分、でも……どうしようも出来ない私の下半身。
それは本当に狂いそうになる。
自分の昼食を作るのも忘れ、私達の主生活の場であるリビングのホットカーペット上で私は悶えていた。
何処に出しても恥ずかしくない貞淑=かつセンスの良い妻を演出する、タートルネックプルオーバは捲り上がり両乳房を曝け出している。
背中は直にホットカーペットの熱が伝わっていた。
そして、上の色に合わせたフレアスカートは腰周りでグチャグチャにたくし上がっている。
そんな私の淫らな午後。
…… ……手は、両手は…… ……
夫の為に毎日欠かさずお手入れをしている爪がカリカリと無常の音を奏でている。
恨めしい自慰防止版が指の進入を固く阻止しているのだった。
(…っぁっぁああ、辛い…辛いわぁっぁ……もっぅ嫌ぁっぁ!!)
爪を、指を激しく動かし、無意味な行為で私は耐え続けている。
(ぁぁああ……は、早くっぅ田崎さんっぅぅぅ!)
尋常では無い生活は、今尚私を苦しめているのだった。

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