保健室の闇
〜女子生徒の告白〜
ドロップアウター:作

■ 5

 一通りの診察を終えると、女医さんはカルテのようなものに何かを記入しながら言いました。
「それじゃあ、次はオシッコを採るからね」
 いよいよ来たか、私はそう思って身を硬くしました。
「ちょっと辛い検査だから、前もって説明しておくわね」
「はい・・・」
 私はそう返事して、女医さんの言葉を待ちました。
 女医さんはカルテを机に置いて、代わりにカゴの中から、先に細長い管のついた注射器を取り出しました。
 私はより一層緊張して、腕や背中に鳥肌が立つのを感じました。
「この管の先をね・・・」
 女医さんは事務的な口調で言いました。
「オシッコの出る穴に入れるの。その時、注射みたいにチクッと痛むと思うけど、一瞬だから我慢しようね」
「えっ・・・」
 私は思わず声を上げてしまいました。尿道に管を入れられる感覚がどのようなものか、想像しようとしてみました。けれど、その暇は与えられなかったのです。
「水沢さん、立ちなさい」
 私の動揺にかまわず、女医さんはさっきまでとは打って変わってきつい口調で指示しました。椅子から立ち上がった瞬間、私は軽いめまいがするのを覚えました。
 そして、屈辱的な指示が出されたのです。
「パンツを脱いで、診察台の上に仰向けに寝なさい」
「はい」
 思わず私は、まるで二人の大人にこびるように返事をしていました。この時の私は、これから自分が味わうことになる苦痛への恐怖に怯えていました。その恐怖の前には、全裸を晒す羞恥など、まるでチリくずのように軽いものでした。
 私は女医さんの目の前で、パンツのゴムに指をかけました。なるべく隠そうとか、そういう気持ちは不思議と起こらないのです。まるで周囲に人などいないかのように、あるいは、私の体をどうぞ全部見てくださいとでもいうかのように、私はあっさりと、パンツを脱ぎ去りました。
「預かっておこうね」
 川原先生はそう言って、私の右手からパンツを取り上げ、自分が着ている白衣のポケットにしまい込みました。けれど、そのことが全く気にならないくらい、私の頭の中は苦痛への不安でいっぱいでした。
「ベッドで横になろうね」
 女医さんはそう言いながら私の背中を軽く押しました。私は女医さんの言葉に従って、ベッドの上で仰向けになり、頭を枕にのせました。
 その後は、女医さんと川原先生の声がまるで遠くから聞こえているようで、体がそれにかろうじて反応しているような感覚でした。
「両膝を立てて、足を開いてくださいね。手はおなかの上に揃えておいてね」
 私は女医さんに言われた通りの姿勢を取りました。
「ちょっと消毒しようね」
 川原先生が、右手に脱脂綿を持っています。そして、それを私の股間にゆっくりと近づけるのが見えました。そして次の瞬間、アソコの部分がヒンヤリとしたのを感じて、私ははっとしました。それまではぼんやりしていてあまり考えなかったのですが、この時私ははじめて、性器の中の部分が見られてしまっていることに気付いて、顔がとても熱くなるのを感じました。
「はずかしい・・・」
 本当は大声で叫びたかったけれど、そう小声で呟くことしか私にはできませんでした。
 やがて、白いゴム手袋をした女医さんが、管のついた注射器を持ってくるのが見えました。そして、注射器だけを川原先生に渡し、管の部分だけに持ち替えました。
「すぐ終わるから、頑張ろうね」
 女医さんはそう言うと、左手で私の性器をグッと広げました。その手つきは思ったより乱暴で、私は痛みを感じて歯を食いしばりました。
「少しチクッとするわよ」
 女医さんはそう言うと、右手に管の先を挟んだピンセットを持って、股間にそっと近付けました。
 私が思わず目をつぶったその瞬間、性器の部分に鋭い痛みが走りました。
「うぐっ・・・」
 私はうめき声を上げていました。
 女医さんは、管を私の尿道にグイグイと押し込んでいるようでした。股間が、ひりひりと痛み出しました。
 私の額は、汗でびっしょりと濡れていました。私は、怖くて、痛くて、どうしようもなく、泣いてしまいました。嗚咽をこらえることがどうしてもできませんでした。
 そのうち、股間がむずむずした感じになりました。オシッコが我慢できなくなってきたのです。
 その時、女医さんがささやくように言いました。
「寝たままで、オシッコをしちゃっていいよ」
 女医さんの言葉にほっとして、私は下半身の力を抜きました。

 しばらくして、女医さんは私の尿道から管を抜き取って、採取した尿を試験管のような容器に移し替えました。それが何となく屈辱的にも思えたのですが、疲れ果てていたこともあって、あまり深くは考えないことにしました。
 涙がなかなか止まりませんでした。自分でも、何でっていう感じだったのですが、後から考えると、やっぱり動揺していたんだと思います。それでも、辛い検査からようやく解放されたことに、私は安堵していました。
 ところが、それが大きな勘違いであったことを、私はすぐに思い知ることになったのです。

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