人妻と少女の淫獄
木暮香瑠:作

■ 崩れていく関係1

「兄さんは?」
「おはよう、昇さん。翔一さんなら、ゴルフに出かけたわ」
「接待ゴルフか……。エリート社員ともなると大変だね。毎晩残業、土曜日は朝早くから好きでもないゴルフ……」
「翔一さんも、今が勝負どころだとがんばってるみたい……」
「姉さんも寂しいでしょう? 兄さんが相手してくれなくて……。夜も遅いし、帰ってきてもすぐ寝ちゃうし……」
「そんなことないわよ。やることも沢山あるし、昇さんもいるし……」
 朝、義姉と他愛の無い会話をする昇。昇の卑猥な皮肉も、美香には通じなかったみたいだ。しかし、昇の心臓はバクバクと高鳴っていた。心の動揺を悟られないように、いつも通りに接することに必死だった。

「トーストとサラダ、出来てるから食べてね」
 淹れたてのコーヒーをテーブルに置きながら言う美香の声が、耳を擽る。いつも通り優しく声を掛けてくれるあの口がチ○ポを咥えてたんだ。あのスカートに隠されたマ○コにチ○ポを突っ込まれ、あの腰を振っていたんだ、姉さん……。DVDの映像が目の前の義姉の姿と重なり、昇は股間を熱くする。

 昨日、美香が帰ってくるまでの間に、写真と秘蔵のDVDを何度も見比べた。フェラしている写真と『素人女子大生・フェラチオ調教』の一場面が見事一致した。美香の髪型、ポーズ、身体の線、背景……、そして男優まで一緒だった。写真には、DVDではモザイクが掛けられていた目元もくっきりと写っている。写真がコラージュなどではないと確信した。写っているのは、若かりし頃の美香そのものなのだ。そして男優は、先日美香が会っていた篠原と言う男だった。

 DVDと見比べながら、電話で感じた違和感のことを考えていた。
(きっと篠原と逢っていたんだ。逢ってすることといったら……。だから、会話の途中で声が詰まったり、変な声を上げたり……。俺に電話しながら、やっていたんだ、篠原と……)
 どんなに義姉を信じようと思っても、妄想の結論は卑猥な方に収束した。昇は淫猥な心の内を悟られないよう、さっさと朝食を済ませ二階に上がった。

 昇は自分の部屋で、じっと美香の動向を見守っていた。暫くすると美香が庭へと向かう。昇は、音を立てないように一階へ降りていった。

 美香は、庭の隅で写真を燃やしていた。朝の片付けを終わらせたばかりで、まだエプロンを着けたままの格好だ。忌まわしい写真を、家族である昇に気付かれぬ前に一刻も早く始末しておきたかった。篠原が送ってきたダンボールごと写真を燃やしている。パチパチと音を立て丸まりながら写真が燃えていく。燃える写真のように、忌まわしい過去も消し去れたら……、そんな思いで燃える写真を見詰めていた。

「姉さん!」
 昇は、背中を丸め佇んでる義姉の後ろから声を掛けた。

 !?

 突然の掛け声に美香の顔が強張った。
「何、燃やしてるの?」
 昇は昂ぶる気持ちを抑え、何も知らないかのように声を掛けた。
「えっ!? な、何でもないわ。あっ、えっ、えーっと、む、昔の手紙よ。そう、昔の手紙……。棄てるのもなんだし……。人に見られるのも恥ずかしいでしょ」
 突然声を掛けられ、美香は明らかに狼狽していた。冷静を装おうとする美香だったが、声は上擦り言葉はしどろもどろになる。
「何か凄く慌ててるね。言ってる事もシドロモドロだし……」
「そ、そんなこと無いわ」
 美香は、なんでもないとエプロンに掛かった灰を払い微笑みを昇に向けた。

「写真、燃やしてるんじゃない? たとえば、人には見せられない過去の写真とか……」
「!?」
 作り笑いが一瞬に強張った。
「これと一緒に入ってた写真……、燃やしてるんでしょう」
 昇はポケットから一枚の写真を取り出し、美香に差し出して見せた。
「どっ、どうしてそれを……?」
 昇が手にしていたのは、美香が太い怒張を咥えている写真だった。その写真を目にした美香の目は大きく見開かれ、肩がブルブルと震えた。
「ソファーの下にあったんだ、段ボール箱が……。ほら、今、姉さんが燃やしてるヤツ。中を見て驚いたよ、こんな写真がどさっと出て来るんだもん……」。
 美香は、昇が翳している写真から目を離すことが出来ない。半開きの口元が震えている。
「ここで話をしたらまずいでしょ。人に聞かれたくないんじゃない? 中に入ろうよ」
 写真をひらひらと揺らしながらテラスからリビングに上がる昇。
「……」
 美香は、テラスからリビングの中に入っていく昇の後を追う。真実を話せば、昇なら信じてもらえると思って……。

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