人妻と少女の淫獄
木暮香瑠:作

■ 心の隙に忍び寄る魔手2

「ううーーん、エッ……? ここ、どこお……?」
 縺れる舌で沙希が魘されるように言う。気付いた時には、バーから場所が移されていた。
「ホテルだよ」
 ベッドに横たわった沙希の隣に座っている篠原が答える。
「えっ?」
 沙希は慌てて半身を起こそうとするが、身体がふらふらとする。
(どうして私……、こんな所に着いて来たんだろ? 頭が揺れる……、酔ってる? わたし……)
 自分が拒んだ記憶はない。バーでお酒を数杯飲んだことは覚えている。その後の記憶がまったく無かった。まだ酔いが残っている半身を、やっとの思いで起こした。
「そんな酔ったまま君を帰したら、両親に怒られちゃうよ。酔いが醒めるまでって思ってね……」
 篠原の言葉が、頭の周りを廻っているように聞こえてくる。身体も暑い。それに、まるで雲の上に座っているかのようにふわふわと身体の存在感が薄い。
「ふぁっ……、はい……。そう……ですね……」
 沙希は、確かに酔っているんだと認識した。

 沙希は、ふわふわする意識で部屋の中を見渡した。沙希の知っているホテルのイメージとはかなり違っている。座らせてるベッドは大きく、派手なフリルの付いたベッドカバー、不似合いに豪華なシャンデリア、赤や紫の間接照明……、壁も大きな鏡が張られている。ガラス越しには、バスルームが覗けて見えている。
(えっ……、ここ、普通のホテルじゃない……。もしかしたら……)
「ああ、こんなところでゴメンね。もっとちゃんとしたところも探したんだけど……、未成年の君を連れて入ると……、僕が捕まっちゃうかもしれないから……。警察に通報されても困るだろ? 君も僕も……」
 沙希の表情を読み取った篠原は、沙希が不安を抱く前に弁明した。
(あっ、そうなんだ……)
 酔いの廻った頭は、篠原の言葉を素直に受け入れてしまう。
(わたしのこと……考えてくれたんだ)
 いくら想っても気付いてくれない昇、その両極のように篠原に大人の優しさを感じてしまう。篠原に隠された危険を感じることをアルコールが拒んでることに気付かずに……。

「綺麗な瞳してるね。こんなキレイな娘がいるのに、あんなことしちゃう弟君の気持ちが判らないよ」
 篠原は、沙希をじっと見詰めて言う。沙希は、トロンとした瞳で篠原を見上げた。
(ふふふ、薬が効いてるな)
 沙希に飲ましたカクテルの最後の一杯には、合成麻薬の粉末を溶かし込んでおいた。
(あれだけ呑んだら、最後の方は味もわからなかっただろう……。期待以上に呑んでくれたからな……)
 じっと見詰める沙希の瞳の中に警戒心がないのを確認し、篠原はゆっくりと顔を近づけていく。
(えっ? ……)
 驚き僅かに口を開いたが、沙希は顔を背けようとはしなかった。そして、瞳を閉じた沙希の唇に、篠原の唇が重なった。

(ルージュの匂いのしない唇も良いもんだな……。女の味が直に判るぜ)
 篠原は沙希の頭を手で押さえ、強く唇を押し当てる。
「うむっ、むううう……、むうっ、うううう……」
 沙希の口から息が漏れる。
(キスしてるんだ、わたし……。キスって……、唇ってこんなに柔らかいんだ、気持ちいいかも……)
 まるで他人事のように受け入れてしまう沙希。なにごとも心地よく感じる自分と、それを眺める醒めた自分……、二人の沙希がお酒の酔いと薬の効き目によって同居している。些細な刺激さえが、沙希の官能を心地よくビリビリと震わせていた。

 篠原は沙希の背中に両腕を廻し、ギュッと抱き締めた。抱き締めた篠原の手が、沙希の背中を弄る。
「ボクが忘れさせてあげるよ。嫌なことも……、弟君のことも……」
 篠原の胸元に顔を埋める形になった沙希の耳元で囁く。男の体臭が沙希の鼻を擽る。沙希は、篠原の胸板の押されるままベッドに倒れこんだ。

「君みたいな可愛い娘をほったらかしにしてる弟君が信じられないよ。年上……、大人に魅力を感じる年頃なのかな?」
 昼間の情景を話題にしながら、背中を弄っていた手がもぞもぞと動く。
(昇のことは言わないで……、わたしなんか……子供な私なんか……魅力ないんだ……)
 昇のことを言われ、自暴自棄な気持ちになる沙希。
「綺麗だよ。君の目も唇も……若々しい肌も素敵だ……」
 しかし篠原は褒めてくれる。甘い言葉を掛けながら、左手は背中を伝い臀肉に達する。右手は脇を弄り、そして遂には胸の膨らみを捕らえた。
「……!!」
 触られたところをビリビリと痺れるような感触が駆け抜ける。性器を触られているわけでもないのに、こそばゆいような、しかし昇を想ってオナニーしている時のような刺激が熱を帯びて染み込んでくる。
(感じてる!? わたし、篠原さんを感じてる? 篠原さんのこと……好きになってる?)
 嫌いな人の手を感じる筈がない……、沙希の心にあるそんな戸惑いが湧く。

 何度もキスを交わしながら、篠原の手は更に大胆にベッドに横たわる沙希の身体を弄る。スカートの中に手を忍ばせ、薄い布地一枚を挟み柔尻を摩る。もう一方の手は、シャツの裾から忍び込み、双乳をブラ越しに握り潰している。
(このまま……、抱かれるのかな? わたし……。セックスしちゃうのかな……?)
 お酒の酔いの中を彷徨う意識で考える。しかし、不思議と恐怖心や罪悪感は湧いてこない。触られたところが熱く熱を持ち、ジンジンと痺れが広がってくる。
「あんっ、ああん……、はうっ! ううん……」
 沙希の口からは、甘い吐息が漏れている。
(完全に薬が効いてるな。大きくはないが、握り心地のいいオッパイだぜ。ケツのハリも申し分ねえ。運動してるだけあって、引き締まってて……、あそこの締まりも期待できそうだな)
 堅く身を強張らせているが、抵抗する様子がない沙希。篠原は、沙希の服を脱がしに掛かった。

(どうなってもいい……、私なんか……。どうせ昇は美香さんと……)
 自分がもっと大人だったら……、美香さんみたいに大人だったら昇も……。大人の階段の一歩を上るように、篠原を受け入れようとしていた。

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