人妻と少女の淫獄
木暮香瑠:作

■ 従わされる女達2

 スーパーの駐車場を抜け、指定された待ち合わせ場所に急ぐ美香。日差しを遮るもののない駐車場では、容赦なく強い日差しが美香に降り注ぐ。汗ばむのは日差しの所為だけではなかった。篠原が呼び出した理由が何なのか? 考えれば考えるだけ美香を不安にさせ、道のりを急がせた為だ。服が肌り張り付くのも厭わず歩を進める。汗ばんだ美香の顔はほんのりと色付き、女性のオーラを放っている。

 篠原の指定した待ち合わせ場所は、美香がいつも使っているスーパーの入り口だった。スーパーは、買い物を午前中に済ませてしまおうと思う主婦で賑わっている。美香は、知り合いに見られることを心配し、下を向いたまま篠原の横に立っている。決して目を合わせようとはしない。
「色っぽいね、汗が顔に浮いてるよ。まるでセックスの後のようだね。フェロモンむんむんって感じでそそるなあ」
「そんなこと言う為に呼び出したの?」
「ふふふ、美香に頼みがあるんだ」
「頼み? アダルトビデオに出ろって言うの!? イヤです」
 美香は篠原から顔を背け、篠原の話しに返事をする。
「そんな危ないことしろっては言わないよ。近所のご主人が見るかもしれないだろ」
「じゃあ、なにを?」
「まあ、ここで立ち話も目立つから、場所を変えよう」
「……」
 美香は、篠原が何を考えているのか図り倦んでいた。美香にとって決して良いことでないことは確かだ。しかし、篠原に逆らうことは出来ない。美香を脅迫する道具は用意しているだろう。AV出演時の写真……、先日のホテルでのことも盗み撮りしてるかもしれない。もしも美香が逆らえば……、危険な想像が美香を支配する。
「別に怪しい所へ行こうってんじゃないよ。目立たないところで話そうよ。ここは目立ちすぎるからさ……」
 美香には篠原に付いて行くしか選択肢は残されていなかった。

 篠原から少しはなれて美香は、後をついていく。二人が向かったのは、スーパーの端っこにあるトイレだ。篠原は、トイレに着くと男子用の入り口をくぐる。
「えっ!?」
「だって、女子トイレに入る訳にはいかないだろ? 男の俺が……」
 美香の困惑の声に振り返った篠原は、さも当然のように答えた。
「でも……」
「個室に入れば大丈夫だよ」
 美香は、周りを気にし誰も見ていたいのを確認し素早く篠原の後を追った。

 男性は少ない時間帯といっても、いつ誰が入ってくるかも知れない。二人は個室に入り、素早くドアを閉めた。
 カシャッ。
 篠原は鍵を閉め、美香を奥に追いやる。ドアを背にした篠原が、美香を誘い出した本題を話し始めた。
「学生時代の君のファンがいてね。君に逢いたいっていうんだ。逢ってくれないかな……」
「逢うだけで良いの?」
「大人になった君に逢って、それだけってことはないよね、たぶん……。とにかく人妻になった君に逢ってみたいって言ってるんだ。口は堅い人だから、ご近所さんにばれる心配はないよ。それにお金も払うって言ってるし……」
「売春? 売春しろって言ってるの? いやっ! そんなの、絶対にイヤッ!!」
 美香の話し声の語尾が、つい大きくなってしまう。
「そんなに大きな声出したら、トイレの外まで聞こえちゃうよ。それに、良いのかな?」
 冷静に言葉を返す篠原に、美香は怖さを感じる。
「ッ!! ……」
 言葉に詰まっていた美香が口を開いた。
「主人に全部話すわ。あの人なら……判ってくれる……」
 篠原の目を睨み美香は言う。決意の表れを示すように……。
「こんな写真もあるんだけど……」
 篠原は美香の決意も受け流すように、携帯の画面に一枚の写真を映し出した。
「!? ……ッ!!」
 美香の視線が、携帯の小さな画面に吸い込まれていく。そして、顔がみるみる青ざめていく。携帯の画面には、テーブルに手を着きお尻を突き出した美香に、怒張を埋め込んで恍惚の表情を浮かべた昇、二人がはっきりと映っている。
「どっ、どうして? ……」
 美香はよろよろと、力が抜けたように壁に凭れ掛かった。
「よく撮れてるでしょ。最近の携帯は、カメラの性能も半端じゃないね。顔もはっきりと映ってる。ほら!」
 写真を拡大し、美香の顔が大きく映し出された携帯の画面を、確認を即すように美香に向けて突き出す。
「朝からこんなことしてちゃいけないなあ……。外から覗かれるって思わなかったの? それとも淫乱なお姉さんは我慢が出来ないのかな? 少年の朝立ちの元気なチ○ポが大好きで……」
「ち、違う……。そ、そんなんじゃない……」
 美香の声が、動揺に震え弱々しく個室に籠もった。

「逢ってくれるよね。……その方が君の、君と家族の為だよ、ふふふ……」
 篠原は、唇の端を吊り上げ微笑んだ。
「ああ……」
 走馬灯のように主人の顔、家族の顔が頭の中を巡る。篠原との関係だけでも許してもらえるか判らない。ましてや義弟の昇とのことは、兄弟の関係、家族の関係まで崩してしまうのは明白だ。
(どうしようもないのね。ああ……、あなた……許して……)
 絶対に知られるわけにはいかない。自分が全てを背負うしかなかった。
「逢ってくれるよね! ここに逢う日時と場所を書いてあるから……」
 念を押すように篠原は強い口調で再度言い、二つ折りにした一枚のメモを美香に差し出す。美香は、震える身体で小さく頷き、そのメモを受け取った。

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