人妻と少女の淫獄
木暮香瑠:作

■ 従わされる女達9

「さあ沙希、行こうか」
 呆然と佇む沙希に、篠原は声を掛けた。
(えっ、わたし、名前で呼ばれてる……)
 落ち着いた沙希は、自分が呼び捨てにされることに気付いた。何か新鮮な響きを感じる。
「どうしたの? さあ、行くよ」
 数歩進んだ篠原が振り返り、優しく笑みを向け沙希を手招きする。
「えっ、はっ、はい……」
 後を追おうとする沙希は、そよ風にスースーする股間が気になった。
(あっ、パンツ、私のパンツ……。パンツを穿かなきゃ……)
 パンツを穿いてないことに気付いた沙希は、地面に棄てられた自分のパンティを探す。目線の先には、さきほど篠原が沙希の股間を綺麗に拭った布切れが丸まっている。
「このパンティを穿くのかい? 僕のザーメンと君の愛液でドロドロだよ? 中出しはまずいと思ったから、悪いと思ったけど君のパンティの中に出しちゃった」
 篠原は、沙希が見詰める布切れを指差しさらっと言った。
(中には出されなかったんだ……)
 これって、篠原さんの優しさなの?

 優しく沙希に気遣いを見せる篠原……
 沙希に暴力を振るう恐い篠原……
 沙希を呼び捨てする篠原……
 沙希の戸惑いは増すばかりだ。

「ばれちゃったみたいだね」
 篠原の後追うように小道に出た沙希に、篠原は耳元で秘密話をするように言う。
「えっ!?」
「ほらっ、あそこのカップル、僕等をじっと見てるよ」
「……」
 篠原の示す方向には、二人の方を見ながら何かヒソヒソ話をしているカップルがいる。
 沙希は真っ赤になった顔を俯かせ、無言で篠原の背中に隠れた。
「逝く時の沙希、大きな声を出してたから気付かれたみたいだね、ふふふ……」
 篠原の言葉が、沙希の羞恥心を煽る。記憶が飛んだ自分が恥ずかしくなる。
(わたし、どんな声を上げたの? エッチなこと言ってた? そんなに大きな声で感じてたの?)
 篠原の背中でシャツを摘み、顔を隠すように歩いた。


 痛いほど視線を感じる。横顔に背中に、突き刺さるような視線を感じる。公園の広場には、数組のカップルがいたはずだ。その全ての人たちが沙希を蔑み、罵っているように感じられる。

「恥ずかしくないのかしら? 人に見られて……」
「見られたくて公園でしてんだろ」
「それじゃあ、見られて興奮する変態?」

「なんてふしだらな女なの? 若そうに見えるけど……」
「最近の女子高生は、人前でも平気でセックスするんだね。キスもセックスも同じだと思ってんだろ」
「あんな淫乱な女がいるから、若い者はって、年寄りに厭味言われるのよ。ホント恥知らずね」

「あの女、パンティ棄てて帰ったぞ。じゃあ、今はノーパンだな」
「ノーパンで街中あるくわけ? 露出狂なの?」
「あんなミニスカートじゃ、オマ○コ丸出しになっちゃうな」
「やだあーーー、恥ずかしい。わたし絶対無理。あの娘、恥ずかしくないのかな?」
「淫乱女にしたら、逆に興奮して嬉しいんじゃない?」

 沙希の耳に聞こえて来る訳ではないが、そう言われてる気がする。突き刺さる視線が届かない声を聞かせる。不安が羞恥を、恥辱が不安を増幅していった。

「どこへ……行くんですか?」
 沙希は自分の不安を口にした。
「僕の知ってる店があるから。ノーパンで帰るの?」
「あっ……」
(私の恥ずかしさを気遣ってくれている?)
 恥辱を味あわす篠原、その後の気遣い……。沙希の気持ちは篠原の言動に振り回され、益々篠原と言う人間が解らなくなる。
「車で行かないんですか?」
 車なら、少しは人波から遠ざかれると思い篠原に尋ねる。
「ここから近いし、駐車場を探すのも面倒だから……」
 篠原は沙希の返事を聞くことも無く歩き出す。沙希は篠原の後を付いて行くしかなかった。

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