人妻と少女の淫獄
木暮香瑠:作

■ 従わされる女達10

 公園を出ると、人は一気に多くなった。公園の隣は、街一番の繁華街になっている。公園から続く道路の両側には、ファッション関係の店やお洒落な飲食店が立ち並び、繁華街の喧噪が沙希を包む。沙希の痴態を知っている人間はいない筈だが、若者らしい露出の多い服装と、沙希のスラリとしたスタイル、若々しく可愛い顔は、沙希が望む望まざるとは関係なく男達の視線を集めた。すらりと伸びた脚、特に程よい肉付きの太腿に視線が集中する。

 街中を歩き、軽装をしてきたことを後悔する。股間を覆う薄い布着れがたった一枚、服装が少なくなっただけでこんなにも心細いものかと思い知る。町中の人達が、沙希がノーパンダと言うことを知っているのではないか、公園での恥辱を見ていたのではないか、そんな気さえしてくる。視線を感じるたび、ノーパンの沙希を、公園での卑猥な行為を罵り蔑んでいるように感じる。

「ほら、あの娘。公園でセックスしてた娘よ」
「うわっ、精液の匂いがする。イヤらしい」
(いやっ! 私そんな女じゃないのに……。見ないで……)

「淫乱女が歩いてるぞ。あいつ、どこでもセックスするらしいぞ」
「セックスで気絶するほど感じる淫乱女だろ? そんなにセックスが好きなのかね」
(違う! わたし、淫乱なんかじゃない!!)

 耳に忍び込んでくる話し声は、全て沙希を非難している噂話のように感じた。まるで透明な服を着て街を歩いているような恥辱に襲われる。街の喧騒が、視線が纏った衣装を潜り抜け直接に肌を熱くする。

「どうしたの? そんなに下ばかり見て歩いていたら、変に思われちゃうよ」
 沙希のお尻に宛がわれ篠原の手が、背筋を伸ばすように押す。そしてその手は、ゆっくりと尻肉を揉み始めた。
「止めてください」
 小さな声で沙希は拒む。
「しーー、声を上げると気付かれちゃうよ。なんなら、スカートを捲ってみんなに知らせてあげようか? 沙希がノーパンだって……」
「だっ、だめえ……」
 篠原の言葉は冗談っぽかったが、沙希が一番気にしているところを話題にされ動揺が増す。顔を真っ赤に染めた沙希は、頭を俯かせ篠原に従った。

 二人は、メインストリートから一本裏の道に入る。居酒屋やバーなどの店が多くなり、一気に大人の世界に雰囲気が変わった。沙希に注がれる視線も、中年男性の身体に纏わり付くようなねっとりとしたもの変わった。

「沙希、顔が赤いね。感じてるのかな? 沙希はマゾだからね、恥ずかしければ恥ずかしいほど感じるんだよ」
(!? マゾ? わたしが……?)
「さっきも凄い締め付けだったよ、沙希のマ○コ……。公園でオマ○コした時、見られてるかもしれないと思うと感じたんだろ?」
 俯き何も答えない沙希に、篠原は話を続ける。
「公園での沙希、僕のチ○ポを美味しそうに咥え込んでたもんな。沙希のマ○コ、腰振るのも辛いくらいに締め付けてたよ、僕のチ○ポを……」
「そんなこと……」
 沙希は『ない』と続けたかったが、否定する言葉を飲み込んだ。公園で衆人環視の中、気絶するぐらいに感じてしまった自分がいたことに、沙希は否定する言葉を吐くことが出来なかった。
「本当にそうかな? 今でも濡らしてるんじゃない? オマ○コ……。確かめてみる? 今ここで……」
「だっ、だめえ……」
 沙希は、篠原の手が動くのを見て、慌ててスカートの裾を押さえた。
「ふふふ、冗談だよ。でも、そんなに慌ててるところを見ると、濡らしてるのは事実だったりして……」
 篠原は意地悪い笑みを浮かべた。



 沙希が連れてこられたのは、キャバレーやバーの立ち並ぶ通りの外れにある店だ。ホステスや水商売の女性達が、商売道具であるドレスやランジェリーを調達するための店である。胸元の大きく開いたドレスやスケスケのブラジャー、スキャンティが陳列されている。この店にいる客は、水商売の女性達とそのパトロンである中年男だけである。

 この店に不釣合いな少女の出現に、沙希は店にいた客たちの視線を集めてしまう。特に中年男達の視線は、健康的な美少女に興味の視線を浴びせている。その中を篠原は、陳列されたランジェリーの中を歩いていった。

「うーーん、どれが沙希に似合うかな?」
 篠原は、中年客の粘着力のある視線を集めながら、沙希を従えてランジェリー・コーナーを見て廻る。視線が、顔から身体、胸に股下にと注がれる。

 陳列されているのはどれも派手なものばかりで、女子高生の沙希には到底似合うようなものではない。篠原が手にとって見るのは、似合う以前に、乳首や陰毛も透けて見えるものや、生地の面積があまりに少なく隠すことさえ儘ならないものがほとんどだ。
「いやあ、あんなの着れない……」
 たとえ下着であって、上に服を着れば見えないと解っていても羞恥心を煽るものばかりである。注がれる脂ぎった中年男達の視線が、それを身に着けた自分を想像してるかもしれない、そんなことを思うと顔が火を噴きそうなぐらい熱くなる。

「沙希ちゃん、これ着てみて。きっと似合うよ」
 羞恥に頬を紅く染め顔を下に向けている沙希の目の前に、メッシュ生地の布切れを篠原が差し出した。一見しただけでは下着とは思えないその布切れは、端からストラップが伸びておりスキャンティと判る。
「えっ!? それを……ですか?」
「ああ、これ! それからこれもね」
 スキャンティとお揃いのメッシュのブラも一緒の差し出される。二人に視線を注いでいる中年男達の顔が笑みを浮かべる。
「あんな若い娘があのスケベなランジェリーを身に着けるのか? 拝ませて欲しいもんだな、乳首も陰毛も見え見えだぜ。フフフ……」
 スケベな笑みは、そう思っていることを雄弁に語っている。
「……」
(誰か助けて……、おかあさん、おとうさん……)
 この場には沙希の味方はいないことは判っていても、誰かに助けを求めたくなる。
(誰か……、昇……、わたし、どうしたら良いの? こんなランジェリー、わたし着れない……)
 裏切られた筈の昇にまで助けを願う。沙希は、どう答えて良いのか判らなくて俯いた頭を上げることも出来なかった。

「着て見せろって言ってんだよ」
 無言の沙希に、痺れを切らした篠原の口調が一転する。
「分かってんのか? 俺が見たいって言ってんだ! 女は男の言うことを聞いてれば良いんだ」
 沙希の顎を掴み上向かせ、見下ろす篠原は低く凄みのある声で怒鳴りつける。その言葉は、大きくは無いが威圧的で、静かな店内に響いた。
 沙希の脳裏には、一瞬にして公園での恐い体験が思い出される。冗談めかした声ではなく、公園で頬を殴られた時の声と同じく沙希に恐怖を与えるものだった。その声を聞いただけで頬に痛みが戻ってきたような気がする。
「は、はい……」
 沙希は小さな声で答えると、篠原が差し出すランジェリーに震える手を伸ばした。

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