人妻と少女の淫獄
木暮香瑠:作

■ 従わされる女達12

 鏡の中の自分を見詰めている沙希に篠原は言う。
「本当によく似合ってる、淫乱な沙希に……。もうこれは要らないよね」
 鏡の中の沙希の姿を眺めている篠原が、沙希が数分前まで身に着けていたブラジャーを掲げて言う。
「えっ!?」
 鏡に映るブラジャーを見て沙希が振り返ると同時に篠原も振り向き、いきなり後のカーテンを開けた。
「ッ!!」
 沙希たちの居る試着室の前には、水商売の女と一緒に中年の男が立っていた。
「キャーッ!!」
 沙希は悲鳴と共にその場にしゃがみこみ、少しでも視線から逃れようとする。しかし篠原は動揺もせず、そこに中年男が居るのを知っていたかのように話しかけた。
「これ、やるよ」
 篠原は、沙希が先ほどまで身につけていてまだ温か味の残るブラジャーを男の胸のポケットに押し込んだ。中年男は戸惑いながらも、沙希の丸まった背中からほとんど丸出しの双尻を眺めて、厭らしげにニターッと笑っている。目の前の少女が、つい先ほどまで着けていた女学生のブラジャーを貰ったことの嬉しさが隠し切れずに……。
「いやあっ……」
 沙希のか細い声は、男には届かない。沙希のブラジャーを受け取った男は、連れの女性と顔を見合わせながらその場を後のした。女性の賤しみの表情と男の好奇の笑顔と共に……。

「さあ、これは買おうね」
「えっ!? でも……」
 沙希はしゃがみ込んだ状態から篠原を見上げた。自分には似合わないと思うし、それに恥ずかしくて、とても着れないと言いかけた。それを制するように篠原は言う。
「いやなの? でも買わなくちゃしょうがないよ。だって、沙希の愛液で染みを作っちゃってるだろ? このランジェリー……」
「!? アッ……」
 篠原の言うことを否定できなかった。触って確かめるまでもなく、股間は潤んでいた。
 沙希は、今、身に着けているランジェリーと共に、篠原の選ぶランジェリーを数点プレゼントされる羽目になった。

***

 篠原が選んだランジェリー数点が入った紙バッグを不安そうに沙希は下げていた。次のデートの約束をさせられ、ついさっき別れたばかりだ。次のデートには、バッグの中のどれかを身に着けてくる様に言われている。
 篠原が選んだものは、どれも過激なほどに卑猥なものばかりだ。スケスケのもの、極端に面積の少ないもの、沙希にとっては、どれを身に着けても恥ずかしいものばかりだった。
 もし言い付けに従わなっかたら、恐い篠原が現れるのだろうか。従ったら、優しく愛してくれるのだろうか。疑問が少女を不安にさせる。
 今、身に着けているランジェリーも、先ほどは篠原に似合ってると褒められたけど、一人になると羞恥心を増すアイテムでしかなかった。見られる筈のないランジェリーなのに、周りのみんなに知られている、視線が向けられているような気がする。沙希は、恥辱に染まった顔を見られまいと俯き、オドオドと帰路についていた。

 昇は、ゲーセンで暇を潰していた。一日、兄の翔一が家にいた。今日も義姉の美香の身体を味わいたいと思っていた昇の思惑は、当ては外れてしまった。さすがに兄がいる家で、美香を脅し関係を持つのは憚られた。
「畜生、なんで一日中、家に居るんだ」
 セックスの快楽を知ってしまった昇には、その機会を奪った兄に対し憎悪さえ抱いてしまう。すっかり秘孔の魅力に取り憑かれていた。
 義姉を抱けないイライラと憤りを抱いた昇には、どんなゲームをしても面白くなかった。どうせ面白くないなら家に居た方がマシかと家に帰ろうとする昇の目に見覚えのある姿が映る。
「あれ? 沙希じゃないか……」
 通りの向こう側、かなり距離は離れていたが見間違えるわけもない見知った幼馴染の顔だ。
「おーい! 沙希!!」
 昇は同じ方向に帰るのならと思い、大きな声で呼んだ。
「!?」
 声のほうに向いた沙希の顔が、驚きに静止する。
(いやっ!! 昇となんか、顔合わせたくない!)
 沙希は、昇が居る方向とは反対の方に小走りに走った。
(お義姉さんとHしてた昇に……、こんな恥ずかしいランジェリー着けて、どんな顔で合えば良いの?)
 昇と美香の二人の関係を目撃したのは、まだ昨日のことなのだ。沙希の脳裏にその時の光景が鮮明に蘇る。汗を飛ばし腰を振る昇、テーブルに手を着き後から突き上げられ大きな双乳を揺らす美香。生々しい映像が脳裏に映っている状況で、知らぬ振りをして逢う事など沙希には無理なことだった。ましてや自分が今身に着けている恥ずかしいランジェリーのまま……。

 逃げるように走る沙希を不思議そうに見る周りの視線も気にせず、曲がり角まで走る沙希。通りの角を曲がり昇から見えない所まで来た所で沙希は、ゆっくり歩き始めた。走った所為で呼吸は乱れていた。
(わたし、何をしてるんだろ……。こんな恥ずかしい下着を着て街を歩いて、昇から逃げて……)
 通り過ぎる人並みが歪んで見える。ふうっと大きく息を吐いた時、視界を歪ませていた涙が頬を走った。
(なんでだろ? 何で涙が出るの?)
 一度、流れ始めた涙はもう止められない。沙希にはもう感情を抑える術はなかった。泣きながら歩く少女を、周りの通行人たちは不思議そうに眺めている。暮れなずむ街に、少女のヒクッ、ヒクッと言う嗚咽が流れた。

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