人妻と少女の淫獄
木暮香瑠:作

■ 人妻と少女の部屋1

 いつから歯車が狂いだしたんだろう。

 毎朝、昇を迎えに行って二人で通学して……。
 そして昇から告白。昇らしく、ちょっとテレながら、そしてぶっきら棒に。
『多分お前のことが好きだ』なんて。
 そして私も、きっと昇のことが好きだよ、なんて、真っ赤になった顔を隠す為、俯いて答えたりして……。
 手を繋いでデート、そして初めてのキス、初めてのHも昇と……。
 四年ほど付き合って、その中でも喧嘩なんかして、でも仲直りして……、いっそう愛を深めて昇からプロポーズ。私は嬉し涙を流しながら、それを受ける。
 二人の子供が生まれ、私はママに、昇はパパになり、忙しいながらも幸せな生活。

 そんな将来を妄想してたのに、どこで歯車が狂ったんだろう? 篠原さんに合って、昇と美香さんのセックスシーンを篠原さんと偶然見てしまって……。

(全部、篠原さんの仕組んだこと?)

 全てが篠原の所為だとは思えないが、偶然と必然が重なって篠原が自分を騙していることは確信している。

『私を騙していたんですか? AVに出演させる為に……』
『そんなことどうでもいいじゃん。気持ち良くなれて、お金まで貰えて……。今日の沙希、すごい乱れようだったじゃないか……。演技じゃなく、本物のいい映像が撮れたよ』
 篠原にぶつけた質問には明確には答えてもらえず、自分の淫らさを知らされた。

(私……、愛されてた訳じゃないんだ。なのに、あんなに感じちゃって……わたし、バカみたい……)

「沙希、なに物思いに耽ってるの?」
 クラスメートに掛けられた言葉に、沙希は我に返った。
「ううん、なんでもない」
「もうみんな帰ったよ」
 授業が終わり静かな教室で、クラスメートが沙希の顔を怪訝な表情で見詰めている。
「わたし、もう帰るね」
 そういうと沙希を一人残して帰っていった。
「私も行かなくちゃ……」
 沙希はポツリと呟き教室を後にした。



 隣町まで電車で来た沙希は、駅のトイレでセーラー服に着替える。正規の制服ではなく、この前の撮影で着せられたのと同じ生地の薄いスケスケのセーラー服とミニスカートだ。着替え終えた沙希は、待ち合わせ場所に歩を進めた。

 終業間近で忙しく行きかう営業マン、帰宅に向かう学生達や夕方の家事に家路を急ぐ主婦達、それぞれの事情で駅を利用する人達の視線が沙希に向けられる。この近くの学校の制服とは明らかに違うセーラー服、ましてや下着が薄っすらと透けて見える衣装は通常の女学生には思えない。視線を浴びて沙希の身体がお腹の奥から熱くなる。沙希は紅く染めた顔を俯かせ、待ち合わせ場所に急いだ。

 指定された場所に行くと、バックを肩から提げたスタッフが待っていた。バックの側面には孔が明けられていて、その奥にはカメラのレンズが沙希を捕らえていた。
「篠原さんは……?」
 来ているスタッフを見渡し、篠原がいない事に気付いた沙希が訊ねる。
「彼なら今回は来てないよ。他の場所で撮影が有ってね、そっちへ行ってるよ」
「そうですか……」
 篠原がいなくても、沙希には断ることは出来ない。騙されてあんな醜態、感じ捲くったところを映像に撮られている。そんな自分が悪いのだと諦めに似た覚悟が出来ていた。
「後で合流することになってるから。その時に、篠原に抱いてもらえるはずだよ。この場ではセックスシーンはないから……」
 沙希の表情を読んだのか、男は付け加えていった。まるで沙希が、篠原とのセックスを期待してここに来てるかのように。

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