新・電車での淫夢
林檎飴:作

■ 5

美奈は手の動きを早めた。
「あっあっぁぁ………!」
プルルルルルル……
家の電話が鳴った。
「あっ……」
後少し……そんな気持ちが頭をよぎる。
いつまでたっても電話の音はやまない。
美奈は諦めて、電話を取ろうと立ち上がった。
「もしもし……。」
すると、受話器から母の声がした。
「もしもし? 美奈? 今日は帰れないから。
晩ご飯、適当に買って食べて。
お金は後で渡すから。」
「また? そんなことでいちいち電話しなくていいよ!」
せっかく絶頂の手前まできたのに、最後までイケなかった美奈は、少し感情的に言った。
「なに? その態度。素直にはいって言えないの?!」
その母の言葉にもムッとして美奈は受話器に向かって怒鳴った。
「もういい!」
ガチャッ
受話器を置く。
美奈はため息をついた。
(何よ、母さんったら……いつもあたしを一人にして……)
美奈は寂しかった。
一人は、孤独だった。
(今日の夜……一人は嫌だな……)
美奈はぼんやりと思った。
いつもはこんなこと思わないのだが、今日はなぜか寂しい気分になった。
そして美奈は立ち上がり、おもむろにある電話番号を押し始めた。

「もしもし?」
「あの……建さんですか?」
「その声…美奈ちゃん? どうしたの?」
「今から行ってもいいですか?
家に誰もいなくて……。」
建は少し戸惑ったようだった。
「いいけど…お母さんとかはいいって言ってるの?」
「はい…」
美奈はうそをついた。寂しさの余り、投げやりに(どうにでもなれ)と言う気持ちになっていた。
「じゃあいいよ。おいでよ。」
美奈は早速出かけた。
駅からの道は結構まっすぐだったような気がする。
美奈は歩き出した。

しかし、途中から雨が降り出した。
「やだっ……」
美奈は走って建のマンションに向かった。

「やあ、美奈ちゃん。」
建は笑顔で迎えてくれた。
「ひどく濡れたね。シャワー浴びる? そのっ…美奈ちゃんさえ良かったらだけど。」
「はい……。」
美奈はいそいそと風呂場に向かった。
暖かいシャワーを浴びるとほっとする。
美奈は、ひとしきり浴びてから出ようとした。
「あっ……」
美奈が脱いだ服はそこにはなく、建のであろうワイシャツがおいてあった。
おそらく建が洗ってくれたのだろう。
しかしこれを着ると……
(やっぱり……)
美奈のお尻ギリギリまでしかワイシャツの長さはなかった。
少しでもかがむと見えそうだ。
ワイシャツの襟元からは、胸の谷間がかなり見えてしまう。
美奈は少し迷った末に、
(もうどうしようもないし…)
そう思って建の前に出ていった。

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