青春の陽炎
横尾茂明:作

■ プロローグ2

 マサルはオズオズと席に進み……、
「あのー来ましたが」
手揉み姿勢で先生に近づいた。
先生の後ろに立ったとき……、マサルは反射的に、
【アーこの匂いだ。この匂いの記憶を必死に呼び起こし、先生の名を口にしながら何度オナニーの快感に耽った事だろう】
とズボンの前が膨らむのを感じた。

 振り向いた先生は、先ほどの厳しい顔からいつもの優しい顔に戻っていて、
「マサル君!ちゃんと聞いてないとダメじゃないの」
「勉強の方、最近成績が落ちているみたいだけど、何か悩み事でも有るの?」
と優しく聞いた。

 マサルは
「先生のせいだよ」
と思いつつも、最近疲れちゃってと訳の分からない言葉で頭を掻いた。

 「それなら今度、先生の家に遊びに来ない?」
と唐突な先生の笑顔。
マサルは我が耳を疑い
「エッ! 行ってもいいんですか」 と満面の笑みを浮かばせながら、先生の次の言葉を待った。

「今度の日曜、クラスの料理好きな女の子たちが、先生んちで何か美味しい物を作ってくれるんだって。マサル君もいらっしゃいナ……」

 だいぶマサルの期待とは外れるものがあったが……、少しでも先生の近くにいることが出来れば、マサルにとっては天にも昇る誘いで有った。

 「是非行きます」
と言って、朝からの憂鬱気分が一度に晴れる思いで職員室を後にした。

 由紀先生はマサルと別れ際……、一瞬顔が曇り……、思い詰めた顔になった。
そしてしばらく躊躇し……、
「何でも無いの」
と歯切れの悪い感じで再び書類に目を落とした。
マサルは気にはなったが、それよりも今度の日曜日に先生の家に呼ばれた事が心を有頂天にして、スキップを踏みたい喜びを押さえて教室に向かった。

 その夜……、マサルと由紀の運命を変える事態が持ち上がろうとは……。この時は二人とも予想だにしなかった………。

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