青春の陽炎
横尾茂明:作

■ 奸計7

 風呂の脱衣所のドアを開け、
「さー」
と言いながら由紀に跪くよううながした。
「先生俺の服を脱がしてくれ」
「敏夫君…それは許して」
由紀の目から大粒の涙が湧いた。

「殴られたいか」
「許して……痛いのはもうイヤ」
…由紀はその場に崩れ折れ肩を震わせた。

 敏夫は由紀の髪を掴み引き上げた、由紀は髪を掴む敏夫の手を握りポロポロ涙を零しながら懸命に、
「ごめんなさい」
を連呼した。

 由紀は己の弱さ…暴力に対しあまりの脆弱さに、今まで培ったプライドがいとも簡単に崩れ去るのを知った。…女は恐怖から精神を守るため、男に性器を差し出して許して乞う生き物とこの時理解した。

「敏夫君…、何でもするから手を離して下さい!」
と懇願した。
敏夫は髪を掴んだ手を後方に押しやり…手を離した。

 由紀はたまらず仰向けに転げ、風呂の扉に頭を打ち…呻いた。
「テメー! 今度舐めたことぬかしやがると…生きて帰れんからそー思え!」
と凄んだ。
由紀は弾かれるように正座し許しを乞うた。

「脱がせます…。脱がせます」
と泣きながら由紀は敏夫のベルトに手を掛けた。
ベルトを緩め、ズボンに手を掛けゆっくりと下に引っ張った…。
次にトランクスに手を掛けたが……どうしても下げることが出来なかった。

「痛い目みたいか」
敏夫は静かに言い放った。
由紀は懇願する目で敏夫を仰ぎ見…絶望的な思いで恐る恐るトランクスを降ろしていった。

「目を開けんか!」
の声で敏夫の股間を見た……。その時ちょうど敏夫のペニスが由紀の顔面に勢いよく跳ね出した時だった。
「ヒーーッ」
と由紀は叫び再び尻餅をついた。

 由紀は男の陰部を初めて見た。…小学校の頃、一度だけクラスの男の子がオシッコしている姿を見た記憶があるが…、いま目の前のそれはグロテスクに黒光りする禍々しい凶器で有った。
敏夫のペニスは生け贄を前に大きく脈を打ち、腹を叩く程反り上がった。

 敏夫はTシャツを脱ぎ、由紀の耳を掴みながら風呂のドアを開けた。
由紀は悲鳴を洩らしながら風呂場へと引きずられる様に歩いた。

 敏夫はシャワーを手にし、
「先生!尻を俺に向けて四つん這いになれ!」
と命じた。
「…そ、そんな恥ずかしい事…、許して下さい……」
由紀は敏夫を仰ぎ見た。
敏夫の目は冷たく由紀を見返した。…従うしか生きて帰れないと直感させる眼差しで有った。
由紀は観念したように後ろを向きイヤイヤするような仕草で四つん這いになって震えた。

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