青春の陽炎
横尾茂明:作

■ 堕落5

 敏夫があの少女にした陰惨な性戯をマサルは思い出した。

「さー、送りますから服を着て下さい」
「今後…、決して敏夫には先生には手出しはさせませんから」
マサルのきっぱり言い切る言葉に由紀は少し安心したのかよろよろと立ち上がった。

 由紀はマサルの正面に立った…。まるでビーナスのような端正なフォルムの裸像にマサルは目を見張った…。特に翳りが無く湿ったように濡れて光る陰裂の柔らかな線にマサルの目は釘付けになった

 由紀は自分が裸で有った事を今更気づいた風に、赤面しながら胸を隠し、身を縮めた。
「先生、服を着るまで廊下に居ますから、声を掛けて下さい」

 マサルは部屋を出て廊下に佇んだ、部屋の中から衣擦れの音が聞こえる…。
マサルはもったいことをしたと後悔した、こんなチャンスは2度とないのに…。
あの憧れの肉体がすぐ手に届くところに有ったのに…。

「マサル君! ごめんなさい」
と言いながら先生が部屋から出てきた。出てきた先生を見て、マサルは、
(あー、いつもの先生だ…。憧れの先生だ!)
と思った。

 先生の姿は、いつもの肩が少し張った真っ白なブラウスと、濃紺のスカートを履いていた。
学校でいつも見掛ける姿をみて…、先程の精液を股間からタレ流し、泣きじゃくっていた女と同一人物だとはとても思えなかった。

「マサル君、先生を送ってくれるの」
口元に少し笑みをたたえて聞く姿を見、マサルは唖然とした。
何事も無かったかのような振る舞いが、いとも簡単にこなせる人…、歳の差、格の違いを見せつけられた思いである。

 先生を自転車の後ろに乗せ道を急いだ、時計は10時を少し回っている。
先生はマサルの胴に手をまわし、顔をマサルの背に押し当て、自転車が揺れるたびマサルに強くしがみついた。

(あー、いつもの先生の匂いだ)
マサルは妙に嬉しくなった、こんな状況になることを3時間前に知り得ただろうか。…憧れの先生が自分にしがみついている…。
このまま夜が明けるまで自転車で走っていたかった。

「あっ、マサル君そこを右に回って」
の声に、マサルは夢から覚めた思いで右に折れた。
そしてしばらく走り、指示された瀟洒なマンションの前で自転車を停めた。

 由紀は軽快に自転車から飛び降り、
「マサル君! チョット寄ってかない」
とマサルの顔を笑顔で覗き込んだ。一瞬躊躇したが…、
「は、ハイ」
と応えた。

 自転車をマンション脇の塀にもたれさせ、先生の後にマサルは従った。
エレベターホールには誰もいないのを見てマサルはホッとした。先生は終始自分を笑顔で見ている…。
 エレベーターに乗り込むと、由紀はマサルの手を握った…。
「マサル君って頼もしい」
由紀はマサルの肩に頭をあずけ、階の電光表示をうっとり見つめていた。

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