可憐な蕾
横尾茂明:作
■ 夏の盛り2
剛史は事務所の玄関に鍵を閉める。
そして歩いて5分ほどの駐車場に歩き出した。
(あの娘、学年で2番か…)
(試験の点数…ほとんどが100点に近かったよな)
(どうりで利発な表情してるわけだ)
(確かに料理作らしても旨いし、家事全般もそつなくこなすし…ふつうの中学生じゃないことは、分かっていたが…)
(あの中学…去年、都内で有名高校進学率がトップだったはず…)
(ってことは…やっぱりすげーじゃないの)
(こりゃー今までのようなオ○ンコ人形扱いは…)
(まっ、関係ねーか…頭が良かろうが悪かろーが…まだ14のガキじゃねーか)
(それにしても一ヶ月ぶりのSEX休暇…ククッ、俺もよく続いたもんだぜ)
剛史はポケットからキーを取り出し空に放り投げた。
少女は一人で夕食を終え、食器を洗っていた。
裸エプロンでやってるいつも家事、こうして服を着てするのは奇妙に違和感を感じる。
エプロンで手を拭きながら時計を見た。
(まだ七時か…んんと…何しようか)
(いつもなら今頃はオジサンとお風呂に入っている時間)
(試験も終わっちゃったし…することないよー)
(本でも読もうか…)
(確か…オジサンの書棚に一杯本が有ったはず…)
少女は2階の書斎に向かう、そして書棚の扉を開けた。
(うわー…一杯あるよー)
(何読もうか…)
少女は知ってる作家の本を捜した。
(ソルジェニーツィン…ロシアの作家だったはず…)
少女は手に取り数頁めくってみた。
(ちょっと面白そう…読んでみよかな)
書棚の扉を閉め書斎を後にし自分の部屋に行く。
(イワン・デニーソヴィチの一日、なんか変な題…)
少女はベットに寝そべって読み始める…そして10頁も読み進んだ頃は…外界の音さえ聞こえないほど夢中になって読んでいた。
公園を出たところでベンチに腰をかけた…。
まだ眠い…昨夜は夢中になって一気に読み上げてしまったことを後悔していた。
飢餓の想い…食への渇望、昨夜の本の筋と…父との逃避行、カップラーメンさえ買うお金が無く、空腹で寒空のベンチで震えた想いが重なった。
あくびを噛み殺したとき、同級の由紀が森からの階段を駆け足で出てくるのが見えた。
「由紀ちゃんおはよー」
「おはよ! …沙也ちゃんなんか今朝は眠そうだね」
「試験も終わったのに…また勉強遅くまでしてたの?」
「ううん…昨夜は朝方まで本を読んでたの」
「でも、沙也ちゃんてスゴイね…聞いたわよ、学年で2番なんだってね」
「秀才? …いや天才かも」
「これからは…こんなふうに友達づきあい出来ないよね…」
「なにいってるのよー由紀ちゃんはずーっと友達だよ」
「フフッ、ありがとね沙也ちゃん」
「あっ、そうそう…美佳ちゃんが言ってたけど…」
「沙也ちゃんと3年の石田徹さん…駅前のスタバでデートしてるの見たって言ってたけど…ホント」
「……うん…」
「でも…デートじゃないよ」
「誘われただけ…」
「沙也ちゃん…気を付けなきゃ」
「あの人…すごいワルなんだから」
「お父さんが都議会議員じゃなかったら…とっくに退学してたんだってさ」
「噂だけど…同級の女子に…乱暴したんだって」
「すっごく可愛い子だったらしいの」
「その子…すぐに転校しちゃったから、真相は分からないけど」
「石田徹が絶対犯したんだよ…」
「ふぅぅん…そんな怖い人には見えなかったけどな…」
「ネッ、だから今度誘われても絶対ついていっちゃダメよ!」
「沙也ちゃん可愛くてウブなんだから…由紀…心配」
「っていうか…もう狙われてるのかもしれないよ」
少女は…私ってウブに見えるんだ…と心で笑って聞いていた。
(犯されるって? …どんなふうに犯してくれるの)
(同年齢の子にSEXされるって…気持ちいいのかしら…)
少女は、犯されると言う言葉に…少し興味を持った。
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