可憐な蕾
横尾茂明:作

■ 夏の盛り7

家の手前の路地を少女は走って曲がった。

(あっ、もうオジサン帰ってるよー…)
玄関の明かりがついていた。

少女は玄関に近寄り、中の音を伺いながら扉をそっと開けた。

静かに玄関に上がり耳を澄ます…微かにキッチンの方から紙が擦れる音が聞こえた。

(どうしよう…もうオジサン帰ってる…)
(このままお風呂に…)
(気づかずれずに行ければ…)

その時奥から「遅かったじゃないか」と声が聞こえ…。
すぐに剛史が新聞を手に持って出てきた。

「ええ…遅くなってごめんなさい…すぐにご飯の用意をしますから」

少女は曖昧に濁して剛史の横を通り過ぎようとした。

「お前、肘から血が出てるじゃないか!」

「…………………」

「その傷…どうしたんだ? 転んだのか」

「…………………」

「お前…何かあったな…」

「い…いいえ…な…何も…」

「おかしい…」
「ちょっと、こっちに来い!」

少女は引きずられるようにリビングに連れて行かれた。

深いソファーに座らされた…スカートがまくれ太腿が露わになる。
両の膝にも擦過傷が見え、少し血が滲んでいる。
少女の目は次第に泳ぎ始める。

「お前…今日は何か変だぞ…」
「その傷といい、さー何が有ったのか言ってみろ」

「………………」

「じゃぁ…沙也加、そこに立ってパンツを脱いでみろ!」

「あぁぁ…」
「ご…ごめんなさい…」

少女はもうごまかせないと思った。
パンティーには生理血に混じった徹の精液がべっとりと付いているのは、性器へのねばつきと冷たさで分かっていた。

途中の公衆トイレで始末すべきだったと後悔した。

少女は覚悟したように立ち上がり、スカートを脱いで…パンティーを下げた。

剛史は少女の前に進み、しゃがみこんで性器を見つめる…そしておもむろにパンティーの裏を返した。

フッと青臭い精液の匂いが漂う…。

その臭いに強烈な怒りがこみ上げた。
が、それを何とか押さえ込み、剛史は少女の顔を見上げた。

「ご…ごめんなさい…お…犯されたの、学校の裏で…」
恐怖に大粒の涙が溢れだす…。

「誰にだ…」

怒りに満ちた低い声が流れる…。

「上級生…3年生の…不良3人に」

「何! 3人もだと」

剛史の顔が引きつった、そして体が震え始める。

少女は今から酷い折檻をうけることを予感した。
脚が無様に震え出し、恐怖に尿意さえ覚えた。

「な…名前を言え!」

「な…名前は…」
少女は口ごもる…。

「このバカ野郎!」

強烈な平手打ちが少女の頬に張られた。

少女は吹っ飛ぶようにソファーに倒れ込む。

口中に錆の味が広がり痛さより恐怖に少女は唸った。

「誰だ! 言え…言わねーか!」

少女は髪を掴まれ引き起こされた。
恐怖で目はもう開けられなかった。

激しく揺さぶられ数発平手が頬に炸裂する…。

「ああぁぁ…言います」
「言いますから…許して…」
少女はチョロチョロと尿を洩らしながらフローリングに膝をついて謝罪のポーズをとった。

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