家畜な日々
非現実:作

■ 〜追記〜4

「第一段階としての、名前を用意してやる」
「……」
「何にしようか?」

親が付けてくれた由紀、それしか私の名はない。
でもこの男、自分の世界に酔っている。

「そうだね……」

短く言って、何かの作業に取り掛かる大野健三。
私からは、その後姿しか見えないのだが、不安と恐怖は更に募る。

「どうだ、これに命名してやろう」
「ひっぃ!?」
「雌奴隷由紀、良い名だろう?」

約20cm位の木版プレートには、黒の極太マジックで「雌奴隷由紀」と書かれていた。
ショックで言葉が出ない……。
大野は後ろの袋から、赤い色した大きな首輪を取り出して、木版プレートをフックに取り付けた。
これは何に使うのか……私でも理解できる。

「ヒドイ、よぉぉ」
「家畜にも名前を付けるのは常識だよ?」

私の目前で方膝を付いた大野が、いきなり髪を引っ張りあげられた。

「あ、あいぃぃっ〜〜〜っ!!」

拘束された手足を動く限りバタつかせ、首を左右に振って懸命に抵抗してみせる。
……が。

カチリ

「あっ、うぅっ!」

いきなり呼吸が少し苦しくなった。
そして、首を意識して支えないと駄目になった私。
(…… ……嵌められた)

「見てみたまえ、首輪は見えないだろうがプレートは、よく見えるだろう?」
「く、首が重いぃ……」

下を見ると木版プレートには、例の卑猥な文字。
(雌奴隷……て?)
赤い首輪を繋いだ、大きな南京錠も見える。

「いいだろう、俺の拳と同じ大きさの南京錠だ。
測ったら12キロ位あったよ。」
「くぅ……」

息が荒くなる。

「じきに、それが当然だと思ってもらえるよ」
「こんな、の……が、慣れる訳」

大野は立ち上がって、入り口からキャスター付きの、一畳分はある姿見を移動させてきた。
咄嗟に反対側へ目を逸らす。

「さぁ、よく見ろ」
「嫌っ!!」


パァン!!


一瞬……何が起きたのか解らなかった。
耳元で乾いた音。
そして、徐々に右頬が熱くヒリヒリとする。
(殴られた……んだ?)

「よく見ろっ!」
「っ!?」

ショックが支配していた私は、言付け通りに姿見へと顔を戻していた。

満足したのか、大野健三が説明をしだす。

「シルクの白ブラウスは、お前の純潔さをイメージしてみた」
(何、が純潔……よ)
「黒のタイトミニは、貞操を守りたいというお前の拒んでいる姿勢を現したんだ」
(真正面からスリット入ってるじゃん!!)
「両手両足は、枷と鎖で繋いであげてるんだよ?」
(どうりで、少し動くわけだ……)

自分の目で確認する気はなかったが、後手で拘束されていた手を少し動かしてみる。

「大型兼用の赤い首輪と、ネームプレートは当然、奴隷の証」
(何言ってるの、この男は……コレってナニ?)

腕を組みながら、私を姿見越しで見る大野健三。
私も姿見越しで大野を、いや……この悪魔を見る。


「お前はここで生活をして躾を受けるんだ、どうだ最高だろう?」
「そんな……訳」

私は、小さく呟くように喋る。
先程の殴られたショックが忘れられない。

「取り合えず少しここで待っていろ、雌奴隷由紀」
「……」

ポカンとする私、いきなり全くの別名で呼ばれた感じ。
そんな私の態度に、威圧の言葉を掛ける大野だった。

「返事はどうしたっ、雌奴隷由紀っ!!」
「は、はい」
「よろしい」


そう言って大きく頷いた後、大野が小屋の扉へと消えていった。
ゴトゴトと扉の外で音がした後、周囲は無音となる。

(鍵、掛かってるよね……)

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