家畜な日々
非現実:作

■ 〜変態調教〜4

数十分後、ミラー越しに映る私は豹変していた。
真っ青に何度も塗りたぐったアイシャドー、目の下に薄く線上に塗られた赤の塗料。
目尻を妖艶に映えさせる、ラメ入りの別のアイシャドーも……。
そして、唇には……。
ワインレッド色のテラテラと光る口紅、更によく解らないオイルを唇に塗られた。
熟れて艶かしく、妖しすぎる唇。
マスカラを丁寧に塗られて、睫毛をクッキリと上げる。
頬には、薄くピンクの化粧。

「如何でしょう?」
「ん、いいね〜〜〜、上出来だ」

ウンウンと、頷くご主人様一向。
鏡越しに映る私は、明らかに売春婦。
(この先……私は…… ……)

「さぁ、外に出て楽しもうじゃないか」
「待ってパパ、コレも付けてあげなきゃ」
「ん?」

繭様がバックから足枷と手枷を取り出した。
見せ付けるように私の前にチラつかせる。

「おぉ、そうだったな」
「うふぅ、これで雌豚由紀セ・ン・パ・イの出来上がり♪」
「…… ……あ、ゃ…ぁぁ!!」

カチリと、両手両足に施される足枷と手枷。

「うっふっふっふ、さぁ、外に出ようか」
「……ぅ」


時間は既に11時を越えていた。
だが繁華街の喧騒は、更にヒートアップしている。
1件消化して、まだ飲み足りない酔っ払い達が本領発揮する時間帯だ。

そんな街中で、私は1人佇んでいた。
まだ店の前に出たばかりで、早くも私は通りすがりの男達の視線を、集中砲火で浴びていた。
酔いに拍車の掛かった男達の視線は、全身を舐めまわすようで爬虫類の舌を想像させる。
特に乳首しか隠れない胸の箇所は、視線が突き刺さっているのではないかという位だ。
中には、立ち止まる者まで現れた。
ちょっとチーマーっぽい男の子が、私の周りをグルリと一周してきた。
(ゃだぁぁ〜〜……)
恐怖と羞恥で泣きそうになる。
襲われたら、ご主人様が助けてくれるのだろうか?。
本気で危険を感じていた。
遂には声まで掛けてくる始末だ。

「やるじゃん、ねぇちゃん〜〜、ソレマジでヤバイよ?」
「…… ……」

無視を決め込むが、恐怖で足がガクガクと震える。
途端、携帯のバイブが唸りをあげた。
(ひっぅ!!)
携帯は、大胆カットされたV字の根元に、半分埋め込まれている。
携帯が震える合図は、歩けというサインだった。
少し離れた所に、ご主人様達はいる。
歩かなければ終わらない……それにこの男の子からも離れたい。
極細のピンヒールを前に進めた。

コツッコツ、リィン……コツコッ、リィィッン……カツン、リリンッ……。
(ゃだぁ……)
どんなに歩幅を狭めても、下半身を出来る限り揺らさないように歩いても、20cmのピンヒールが地を打ち付ける乾いた音と、それに呼応するように鳴る鈴。
立ち止まり、恐怖に歪んだ表情で周囲を見渡す。
すれ違いざまの、若いサラリーマン風の3人組と目が合った。
どの顔も、鼻の下が伸びきった表情だ。
(ま、まさか……聞こえたとかっ!?)
私の心臓は、今にも破裂しそうな勢い。

「おい、スゲェなアノ女!」
「うへぇ、マジでイイじゃん」

違う方向から、若い男の話し声が聞こえた。
だけど……私は怖くて振り向けない。

「あれってサ、好きでやってんのかね?」
「好きじゃなきゃぁ〜、あそこまではやれねぇだろ?」
「露出狂って始めて見たわ、俺」
「滅多に見れねぇから、存分に拝んどくか」
(ぅう…いゃあ、言わないでぇ……)
「目に焼き付けておいて、後でオカズにしよう」
「わはは、お前も相当な変態じゃん」
(私……へ…へん変態……なのぉ?)
「見ろよアレ、首輪じゃん」
「うげ、ヤバくね〜〜、あの女?」
「だよなぁ、好きで首輪とかするか?」
「パンク系の女じゃなさそうだしなぁ」
「うわ、ちっと怖くなってきた」
「……いくか」
「あぁ」

男の声がしなくなり、立ち去る音。
そして、再び携帯のバイブ。
私は見えないリードで繋がっているかの如く、その場から逃げるように立ち去った。
相変わらず歩く度に奏でる鈴だが、繁華街の喧騒のおかげで、どうやら気付かれてはいないようだ。
少し安堵する私だったが、射抜かれるような視線だけは我慢できない。
携帯のバイブが連続で振動している。
ご主人様からだ。

「は…ぃ?」
「楽しんでるか?」
「……はぃ」

そう答えるしかない。

「ちょっと刺激が足りないだろう?」
「い、いぇ……決して!」
「若いのは危ないからな……そうだな、そっち側の酔っ払い親父共の肩へぶつかって行け」
「そ…んな!?」
「ん? ……全裸に剥いてやってもいいんだぞ?」
「ぅ…ぅう」
「さぁ、面白いのを見せてくれ?」

携帯が一方的に切られた。
私は、指示された方へと目を移す。
酔っ払ったハゲ親父3人組は、何やら私の方を見ながら騒いでいる。
遠目からでも、この格好は目立つらしい。
(どうしよぅ……)
一瞬躊躇するが、逆らえばどうなるかは身体がよく知っていた。
そして、私は何気ない振りをして歩を進めるのだった。

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