家畜な日々
非現実:作

■ 〜そして家畜は悦ぶ〜11

私と繭様以外、全ての男性が煙草を吸っているせいで、室内はかなり煙たい。
事前にユウジ様が予約していたビジネスホテルの1室、私を含む5人が揃って一杯一杯だ。

「刺青の見返りとは?」
「それがですね、あの…ちょっと特殊な刺青だし、事がアレじゃないっすか」
「……ふむ、そこの爺さん、知ったのかね?」
「お、大まかな事だけですよ、ホントッ!!」

ユウジ様が慌てて言った。
それを見据えて、真正面に座るご主人様が苦笑する。

「極めて慎重にという言葉、ようやく君も理解したかね」
「えぇ……そりゃ勿論です!」
「よろしい、金で済ますより、その爺さんも取り込んだ方が安全だからね」
「で、ですよね」
「ふふふ、ユウジったら雌豚由紀が気になってしょうがないみたいよ?」
「そ……そんな事は」

チラチラと私を見るユウジ様の視線は、まるで獣そのもの。

「ま、禁欲生活は苦しかったみたいだね?」
「ええ…まぁ、その……必死で探しました」
「よくやってくれたよ、ユウジ君」

ご主人様の手がユウジ様の肩に置かれた。

「それでなんですけど……えぇと」
「ん、何かね?」
「どのような刺青にするつもりなんですか?」
「ふふん、気になるかい?」
「えぇ……まぁ」

(……気になる)
実は私も聞かされていない。
耐えかねて繭様に一度尋ねた事があったが、一切教えてくれなかった。

「雌豚由紀、お前は出来てからのお楽しみだ、向こうを向いていろ。」
「……はぃ」
「声に出してはならんぞ、ユウジ君?」
「は、はいっ!」
「ではムネさん、図面を見せてやってくれ」
「畏まりました」
「ユウジも、きっと気に入ると思うわ」
「ドキドキするよ」

どんな絵柄なのか…… ……。
(せめての情けのある絵柄を……お、お願いぃ……)
ただ祈るしかない。
私は後ろを向いたまま、耳に神経を集中させた。

「おぉ〜〜〜っ!!」

ユウジ様の歓喜が室内に響いた。
無意識に私は振り返りそうになる。
(な…に……何なのぉっぉ!?)
もぅ、気が気ではない。

「す、凄い……これ凄いですよっ!」
「だろう、これが出来れば最高傑作品だよ」
「……ホントに…凄い」
「私は絵心が無くてね、ムネさんが描いたんだが絵でも凄い綺麗だろう?」
「え…ぇえ」
(綺麗なの……嘘……綺麗な刺青なんだ……)

正直、少しご主人様に感謝した。
取り返しのつかない刺青でも、芸術的な物ならば少しは気が楽になる。

「早速、明日にでも行ってみよう、案内してくれるなユウジ君?」
「はいっ、待ち遠しいですねぇ」
「それまでに手入れは済ませておかないとね」

繭様が付け足した。
(……?)
その言葉の意味が解らなかった……。

「それで…ですね……あの、ご褒美は?」
(はぁ…はぁ〜んぅ、そん……な目で…見ないで…っぇ)
「んん〜…あぁ、雌豚由紀を使いたいと?」
「そ、そうです」
「うふふふっ、良かったじゃない雌豚由紀ぃ?。
ユウジったら……もう夢中みたいよぉ?。」
「……もう…我慢できなくて……その」

恐る恐る私は顔を横へ向けた。
そして自然とユウジ様の股間へと目が注がれる。
(はぁ〜あぁ……お、大きぃ…ぃい)
発情は止まらない。
だが、目の前にご主人様が遮る。

「悪いが刺青を入れるまで君は…というか全員雌豚由紀を使う事を許さん」
「……そっ、そんなぁ!」
「ユウジ君、君だけじゃなく私も繭もだ」
「な、何で?」
「儀式だよ変態家畜へのね、真の家畜になるまでの我慢さ」
「またお預けっすか」
「ふふん、でも今回君は本当によくやってくれた」

ご主人様はジャッケットから4枚のチケットを取り出した。
後ろ向きの私はよく見えず、頼りの耳を研ぎ澄ませる事に勤めた。

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊