家畜な日々
非現実:作

■ 〜そして家畜は悦ぶ〜12

「ご褒美はコレだ、タイの宿泊券とその飛行機だ。
どうだね、2組様ご招待ってね?。」
「ぇ?」
「これで繭と一緒に行って来るといい」
「えぇぇ〜〜っ、マジでぇパパァ♪」
「ああ、いいぞぉ、楽園で楽しんでくるといい。
ユウジ君、これでとりあえず我慢してくれるか?。」
「……い、いいんですか?」
「言っただろう、ご褒美だって」

ご主人様の……優しい声だった。


「大野さん……何か考えがあるのですか?」
「何がだね?」
「いぇ……その、繭ちゃんも引き離したような感じがしたので」

帰りの帰途、ご主人様とムネ様それに私しかいない。
繭様はユウジ様とのお泊りらしい。

「中々鋭いねぇ、ムネさん」
「長年商売人でして、そういうのは敏感になってしまいまして、ね」
「ムネさんには話してもいいかな」
「ご安心下さい、我らは一心同体ですから」
「実はね……」

言葉を切って、ご主人様は私を見据えた。
その視線は実に冷酷そのものだった。
そして静かに……言葉を続けた。

「繭達がいない間、極限までの肉体改造をするつもりだ」
「えっぇ!?」
「雌豚由紀、お前に拒否権はないぞ?」
「……そ…ん……な」

(め、目の前が真っ暗になるって……本当にあるんだ……)
身を以って知った。

「なるほど……繭ちゃんがいると、邪魔という訳ですね」
「うん……アレは復讐を忘れかけている」
「見る所、繭ちゃんはペットとしている感じがしますね」
「そうだ、それでは私の気が治まらないんだよ」
「……お付き合いしましょう」

暗黒の笑みが交差する。
確かに繭様が居たからこそ私は、これまでの猶予があったのかもしれない。
繭様は……主といえど……私を可愛がってくれた。
だけど、その枷となる繭様がいない。
私は……ただただ……歯をガチガチと震わせるのみ……だった。

「ですが、ユウジさんが居ないと肉体改造もままならないのでは?」
「心配無い、彼の父親を抑えているから」
「……これはこれは……お見事な手腕」
「ユウジ君には悪いが、あまりにもお粗末過ぎる」
「まぁ…… ……です…ね」
「彼の父親はね、快く受けてくれたよ」
「まぁ、あの人はこの町の有権者ですからねぇ〜。
あらゆる欲望は尽きませんでしょう。」
「くくっ、これからは色々と付き合いがあるだろうよ」
(……どうなるの……私)

生きるよりも辛い事ならば……いっそ死んだ方がいいものか。
何故……。
何故、あの時……勇気を出さなかったのか。
  ・
  ・
  ・
  ・
「何を見てるのぉ?」
「ん〜〜……タイの観光地をね」
「もぅ〜〜、1週間後なのにぃ?」
「事前に丹念に調べるのは構わないだろう?」
「だけどぉ〜〜〜♪」

繭は全裸のままベッドのシーツから顔を出して少し不満げに言う。
だがユウジは……ノートPCのキーボードを叩き続ける。
互いに全裸のまま。
ついさっき愛し合った2人の身は、熱く火照っていた。

「楽しそうなの……見つかった♪」
「あぁ、いいのがあるよ」
「ホント?」
「ああ……これは面白そうだ」
「ナニナニ〜、教えてぇ」
「だぁ〜め、現地に行ってからのお楽しみだよ?」
「意地悪ぅ」
「ふふふ、そっちの方が喜んでくれるってね」
「期待し・て・る♪」
「ああ、任せてよ」

ユウジは微笑み返したのだった。

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