家畜な日々
非現実:作

■ 〜刺青〜4

ぐったりとした身体を右にユウジ様、左にムネ様の手で抱えられるように荷台から下ろされた。
全ての脱力感に私は立つ事も出来ず、繭様の手で着せられたコート1つで地下の階段を下りていく。

「ようやく来たか」
「あ、すいません〜、ちょっと遅れてしまって」
「まぁいい、さっさと済ませようじゃねぇか」

スキンヘッドの男が顎で促した。
顎が指示した高さ1m程度の台に寝転がされる。
そして無言のまま、両手両足を台から伸びる枷で拘束された。

「……あ……ぁ?」
「慣れてるんだろぉ、騒ぐんじゃねぇ」
「ひぅ」

物凄い怖い…… ……。
あっという間に両手をバンザイされ、両足を開いたままにされている。
この男の人も……相当慣れている手付きだった。

「私は大野といいます」
「ワシは佐治じゃ」
「よろしくお願いします」
「ぁあ……お前さん等の関係は解っとる、だがそれは関係ねぇ。
金さえ貰えれば、ワシは言う事なしじゃ。」
「はい」

珍しくご主人様が低姿勢だった。
無理も無い、60を過ぎた老人の威圧感は圧倒的だった。

「でだ、どんな絵柄なんだ?」
「これです」

開かれた図面に、佐治さんは手を顎にして唸った。

「ふむぅ、中々……うむぅ…久々に腕が振るえそうじゃ」
「ありがとうございます」
「じゃがな……2〜3時間とかじゃいかんぞ?」
「承知しております、この雌豚由紀には浣腸を済ませておりますので」
「ほぅ…くくっ、雌豚か……いい度胸だ」
「はい」
「くっくっく…気に入ったぜ、やってやらぁ」
「ありがとうございます、佐治さん」
「下書きでな、凡そ4時間は掛かるぞ?」
「はい」
(……そ、そんなにぃ?)

私は全裸のまま、時間の苦痛に不安を覚える。
それを見透かしたのか、佐治さんは言った。

「色を付けるのはその後だな、大体……3日後だ」
「はい、よろしくお願いします」
「身体は色々と弄られてるようじゃが、刺青は初めてのようじゃな?」
「ええ」

変わりに答えるご主人様だった。

「お宅等がどういった関係というのは…まぁ憶測できるが……覚悟は?」
「出来てます」
「アンタじゃねぇ、お嬢さんに聞いてんだよ」
「……すいません」

佐治さんと視線が交差する、その視線の奥には狂気が見えた。
私が言うべき言葉は…… ……。
「いいえ」だった。

「は……ぃ」
「ふむ…雌豚か……覚悟は出来てるようじゃな」
「より変態な家畜奴隷を望んでいるんですよ、こいつは」
「ま、干渉しない事がワシの勤めじゃ……やってやろう」
「ありがとうございます」
「まずは下地の墨入れじゃ、一番気の遣うところじゃが、麻酔は打つか?」
「麻酔ですか?」
「ワインポイントの刺青なら必要無いが、全体的な物だと動かれたら堪らんでの?」
「お願いします」
「金、掛かるぞ?」
「金が掛かるのが嫌なら、来てませんよ」
「がっはっはっは……益々気に入った」

そんな会話も……私には悪魔の取引にしか聞こえない。
(ぜ、ぜ……全身って……ナニ……何…彫るのぉ……よぉ?)
ただただ、不安に際悩まされるのみ。
あの日、勇気を出せなかった、その代償は…… ……。

「さぁ、始めようか……雌豚とやらの刺青を……」
「ぅ……ぁぁ……ぁ」

小さめの注射器を手に、佐治さんが目の前に立った。
恐ろしい…… ……。
ご主人様とは違う、ムネ様とも違う、ユウジ様とも違う狂気に満ちた表情だった。
断りをなさず、その麻酔らしい注射器が……私の右腕に打たれたのだった。

「いよいよねぇ、ゆきせんぱぁい♪」
「ぁっか……ぁ……はぁはぁ」
「さぁ、とくとご覧在れ…雌豚にキャンバスに芸術を施してやろう」
「お願いします、佐治さん」

ご主人様の声が…… ……遠く聞こえた。

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