家畜な日々
非現実:作

■ 〜刺青〜5

頭がぼぉっとしている。
既に枷は外されていたが、麻酔のせいで身体は全く動かず、そして感覚も無い。
だけど、意識はハッキリしていた。
首から上は麻酔が掛かっていないのである。
どうせなら眠らせて欲しかった。
(こんな過程、知りたくなんか……ない…のに)
視線を天井に向けたまま、終わりを祈り待ち続ける。
私の主様達は、どこまで辱めるのか。
自然と涙が零れる。
度々仰向けの身体をひっくり返されたりと、されるがままだった。
ただただ、私はまな板の鯉。
(なに……されてるんだ…ろ、私は)
そのせいで、主様達の卑猥な言葉が否応に耳に入ってくるのである。
(こんなの……生殺しじゃなぃ)
何をされているのか、何を描かれているのか……当人には全く解らないのだった。

……と、筆ペンを置いて佐治さんが流れる汗を拭った。
そして周囲を見回した後、佐治さんは口を開く。

「下書きは、こんなものでいいか?」

ウンウンと大きく頷きながら、ご主人様が隣に立った。

「素晴らしい」
「まだ下書きの段階じゃ、麻酔が切れる前に墨を入れるぞ?」
「はい」
「お嬢ちゃんよ、カリカリっていう音がするが気にするなよ?」
(ぇっぇ〜〜〜ぇぇ……ぅそ、でしょぉお…)
「肌を彫る音じゃ、怖くはない」
(こ、怖いぃ…決まってるでしょっ!!)
「使うのはコレだ」

佐治さんの手には……太いニードル。
細めのストロー程だった。
(ゃ…ぁ……ぁぁ〜〜…ひぃぃぁ…あ)
繭様が覗き込む。

「すっごいねぇ〜、これで肌を彫るんだってぇ。
まるでぇ〜〜、彫刻刀みたいだねぇ?。」
「ふむ、上手い事を言うじゃねぇか、お嬢ちゃん。
まさにそんな感じじゃな。」
(ゃぁ……だ……)
「さっさと済ませて、今日は終わらせるぜ」
「はぁ〜い、お願いしまぁす佐治さん♪」
「じゃぁ……行くぜ」

佐治さんのニードルが近付いてくる……。
私に拒否権は無い。
常に視線に居るご主人様へ、必死に目で訴える。
だが…… ……微笑み返される。
その微笑みは残酷で、全てを佐治さんに預けろと言っていた。
ニードルが右尻に。
そして…… ……。



カリイィ…カリィ……

その音は耳を塞ぎたくなるほどリアルで、気持ちの悪い音であった。
痛みも感覚もないまま、気味の悪い音が室内に響いている。

カリィカリカリカリ…カキカキィ……カリィリ……

誰も声を発しない。
大きく深呼吸をしてはゆっくりと作業を進めていく佐治さんの息は荒い。
何も見たくない…そう、見ない様にただ呆けた様に一点を見つめる。
(どうなっているの……私の身体?。)
何も考えたくない。
ただ……涙を流すのみ。

「ふぅ〜〜ふぅ…ひっくり返すぞ、手伝ってくれや」
「…… ……」
「おい若いのっ、聞いてるのかっ!?」
「ぁ……はいっ…はい?」
「ひっくり返すんだよ、仰向けにしろって言ってんだよ?」
「あ、すいません……です」
「どうしたんだよ?」

罰悪そうにユウジ様が言った。

「いや凄いなって……何か凄いって」
「ふふっまだまだだじゃ、色が付いたらもっと綺麗になる」
「は、はい」
「解ったらさっさと手伝えぃ!」
「はいっ」

色が付いたら…… ……。
綺麗になれる?。
ホントに?。
当てになんか出来ない……だって。
もう期待なんか出来ない。

カキィィ…カリィ……カリカリィ……
キィイ、カリィカカッィ……

天井を見つめ続ける私。
佐治さんは私の下腹部で何かを……いや彫っていた。
曝け出したままのオ○ンコも全く気にならない。
耳を突く気味の悪い音が、下腹部から響き続けていた。

「あらら雌豚由紀、濡れてるぅ」
「ふふふ、刺青でも感じるのでしょうかねぇ?」
「いや麻酔が効いてるんだ、それはないよムネさん」
「ほほぉ、では何故に?」
「被虐心ってやつだろうよ」
(…… ……濡れ、てる……んだ…私、被虐心…かも、ね)

ご主人様の言葉をなぞった。
確かにそうかもしれない。
もう私は、そんなのでも感じてしまうのだった。
佐治さんが汗びっしょりの顔を上げた。

「仕上がりだ」



全身が気だるい。
麻酔は切れてきているが、身体はあまり動かない。
今日は疲れてばかりだ。

ムネ様が用意したタクシーで、私達は家路に着いていた。
私は服を剥かれて、地下室に転がされている。
服を剥かれた私のその中身は……全身包帯の姿だった。
何でも刺青を入れるとその箇所が痒くなるらしく、入れたばかりで掻くと駄目になるらしい。
そこで全身包帯という訳だ。
医者であるユウジ様の包帯の巻き方は完璧だった。
全身に巻かれた包帯だが、パックリ開かれたオ○ンコと尻穴だけは常に外気に晒されている。
ユウジ様は言った「これでトイレは心配無い」と。
(全身に刺青されちゃった……んだ?)
まるで他人事のように私は心の中で呟いた。
そのユウジ様と繭様は、今日もお泊りらしくここには居ない。

「色付けが3日後とは思いませんでしたよ〜」
「完成間近ってやつだな、よかったな雌豚由紀?」
「……はい」

嬉しいわけなんかない……だけど言わなければならない言葉だった。
何より未だぼぅっとしていて、あまり思考回路が纏まらないでいる。

「じゃあ、薬飲んで3日間は大人しくしてろよ」
「……はいぅ」
「眠り薬と鎮静剤と化膿止めらしい、よく寝て3日後にな?」
「……ぅ…ぅぅ」
「いゃ〜〜〜楽しみですねぇ、3日後が」

■つづき

■目次

■メニュー

■作者別


おすすめの100冊