家畜な日々
非現実:作

■ 〜愛しき繭〜5

同時系列 由紀(2)

ご主人様達が名刺交換をしている中、私はあてがわれた茶褐色のソファーに座っていた。
煌々と照らされる手術台の照明は前と同様、相変わらず温かみが感じられない。

前後ろで着ることが出来る白いコットンニットは、両肩をザックリ露出させたもの。
デニムのショートパンツは、股ギリギリの位置だ。
所謂お姉系ファッションだが、学生の頃から御用達だったものだから抵抗は無かった。
……そう……だからこれは寒さではない、恐怖なのだ。
以前の肉体改造の場に再び立つこの恐ろしさ……。
白いコットンニットの前裾を弄り続けて、恐怖に耐え続けている。
足がカタカタ震えている。
途端、院長が私へと振り向き、真っ直ぐ足を進めてきた。

「初めましてだな、ユウジがお世話に……あいや、お世話したのだったな」
「……」
「御挨拶はどうしたっ!?」

ご主人様の叱咤が耳に突く。
ビクリと、身体を窄めて……恐る恐る上目遣いをしつつ口を開いた。

「は、初め…まして、へ…変態家畜の……雌豚由紀…です」
「ったく、まだ淀みなく云えないとは……」
「まぁ〜まぁ〜〜、あの恥じらいも楽しみの1つですよ〜」
「ムネさんは甘いねぇ」
「ははは……まぁまぁ〜〜〜」

そんなお二人のやり取りを後ろに、目の前に立つ白衣を着たオジサンは、私の全身を嘗め回す様に視線を上下に動かし続けた。
(……そんなに見ないで…気味悪いってぇ)
まるで蛇に睨まれた蛙状態。
存分に視姦した後だった。

「私はユウジの父親であり、この病院の院長でもある、寺田様と呼ぶがいい」
「てら…だ様?」
「そう寺田様だ、この意味解るな?」
「…… ……はぃ」
「ふふん、中々頭は良いようだなぁ?」
「ありがとう……ござい……ますぅ」

頭が良くなくても簡単に解る事だった。
いきなり「様付け」で呼べという事、これは解り易い。
そして高圧的な態度と口調は、既に決まった事だと告げているものだ。
ニヤリと、気味の悪い笑顔だった。
(この方がユウジ様のお父さん?)
ユウジ様は私が見てもイケメンだが、父親の方の顔は馬面で、でっぷりと太った体格。
前は完全に禿げており、額は脂ぎっていたのだ。
信じ難い事実だった。

「色々と楽しませてくれよ、雌豚由紀よ?」
「……は…… ……ぃ」
「俺はユウジみたいな恋愛ゴッコはする気はない。
トコトンお前を家畜として扱ってやるからな?。」
「良かったなあ、雌豚由紀ぃ」
「大野さん、あんたに俺はついて行くよ。
困った事があったら何でも言ってくれればいい。」
「くっくっく、期待してますよ」
「簡単だ、ここの市長は俺の裏金で言いなりだからな……。
つまり、俺達仲間は裏の支配者という訳だよ。」
(こ…こ……この人は……怖い人だ……そして悪人……だ)

ご主人様、ムネ様、それに終始無言の佐治様を順番に見て、悪魔の微笑みを漏らした寺田様。
足どころか全身の震えが激しくなり、歯がカタカタと鳴った。

「大野さん、まずは肉体改造の手術だったね?」
「ああ、電話で云ったとおりに願いたいのだが?」
「いいとも、楽勝だ……まずは俺の腕を御覧頂くとするか」

すかさずご主人様が割って出る。

「どうした雌豚由紀?」
「はっぁ…はぃぃ……あの、その……」
「言えんのか?」
「あの、どうぞこの雌豚の身体をより……変態家畜に仕立ててくだ…さぃ…ませ」
「そろそろ自主的に云えるようになれよ、雌豚由紀?」
「も…申し訳ありませんご主人様」
「これ位でまぁいいだろうよ大野さん、俺もこれからが楽しみだ。
粗相を抜かしたら遠慮なくやらせてもらうから。」
「くくっ、その時は私も参加するとしようか」
「さぁ、手術の時間だ変態家畜の雌豚由紀ぃぃ……」

寺田様が私へと向き直りながら言ったのであった。
第二の肉体改造……何をされるのかは解らないが、ますます人間離れしていくのだろう……。
それは簡単に想像出来た……。

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